※この記事には性被害に関する記述がありますので、読まれる際はご注意ください

実の娘に対して性行為を繰り返したとして、不同意性交の罪に問われた父親の裁判。
そして犯行理由について聞かれた父親は「被害者からの『アプローチ』を受け、してはいけないと思いつつ『アプローチ』されて、自分の性欲と、徐々に罪悪感が薄れ、回数を重ねていってしまった」と証言した。

専門家の意見などを交えて検証を重ねた結果、性犯罪に手を染めてしまう加害者の誤りや、被害者が「泣き寝入り」をしてしまう心理などが見えてきた。

(前編・中編・後編のうち後編)

幼少期の体験が影響…誤った認識 適切なケア必要

犯罪心理学などに詳しい、人間環境大学の藤代富広教授は、今回の事件の被害者に対しては、適正なケアが不可欠であると指摘した。

「幼少期の体験の影響で、自分はどうなってもよいと考えるなど、自尊心が低くなってしまう可能性がある。被害者が『身体を見せれば相手は優しくしてくれる』という誤った認識を持ってしまった場合、今後の生活の中でも、例えばDV(ドメスティックバイオレンス・家庭内暴力)の被害に遭いやすくなる恐れも考えられる」

性被害「どうしたらよいのか分からない」

法務省の統計によると、性的な被害を受けた人のうち、警察に届け出を行った割合は、15%程度に留まった。
その理由について「どうしたらよいのか分からない」「知られたくない」「警察は何もしてくれない」といったものが挙げられた。

ことさら家庭内で発生した事件、あるいは未成年者の被害者ともなると、より「表に出にくい」ことは想像に難くない。

愛媛県の統計資料「児童虐待相談対応の状況」によると、児童相談所を含む公的機関に寄せられた件数は年々増加傾向にあって、2021年には、統計が残る2005年の444件に対して、およそ6倍近い2,614件となっている。

このうち、児童相談所が受けた相談内容の内訳を見てみると、2021年時点で、言葉による脅しや無視などの「心理的虐待」が最多で、全体のおよそ6割を占めている。暴行を加える「身体的虐待」が、およそ23%と続く。

一方で「性的虐待」の割合は1.7%に過ぎないが、これについて藤代教授は「性犯罪被害が少ないということでは決してない」と指摘。
被害の性質上、第三者が発見して助け出すことの困難さを反映している可能性についても言及し、社会的な支援体制や理解の充実が不可欠だとした。

「ためらわずに『189』を」課題も

18歳未満の未成年者を保護する法律に、児童福祉法がある。
生活に関わる広い範囲を対象としていて、性的被害を含む虐待防止など、家庭環境にも踏み込んだ内容が規定されている。

児童相談所の担当者は、児童虐待の疑われるケースが見受けられた場合には、例えば警察の110番や消防の119番のように、ためらわず「189」に通報をするよう呼び掛けている。

一方、その現場では「児童福祉司」などの専門知識を持ち合わせる職員が不足していて、対応が追い付かないといった課題もあるという。

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