人口80万人の佐賀県に1試合平均5060人を集めるバスケットボールチームがあります。集客力の源は「アリーナ」。選手を変え、ファンを変え、街を変える―。「夢のアリーナ」の可能性に迫ります。

2023年に完成した、SAGAアリーナ。8400の観客席を備えた新時代のエンタメアリーナは、Bリーグ・佐賀バルーナーズの本拠地として1試合平均5060人を集めています。国内でもトップクラスのアリーナは、佐賀県の新たな「アイコン」となっています。

佐賀バルーナーズ 田畠寿太郎 社長
「お客さまがドアを開けた瞬間、『うわぁ!』という。これは適切な言い方かどうかわかんないですけど、佐賀にはなかった空間だっていうことで、佐賀のみなさんが誇りに思えるような、佐賀にはSAGAアリーナがあるっていう。どっちかっていったらアイデンティティーの部分で佐賀の人が非常に喜んでいただいているのは感じます」

傾斜35度のスタンドは臨場感も高く、選手たちのプレーを楽しめます。そして、バックヤードには17もの部屋があり、大規模な演出も可能です。

そして、SAGAアリーナの大きな特徴は、プレミアムフロアです。

田畠寿太郎 社長
― すごい、和風。書もあって。
「これは佐賀の書家の江島史織さんという方が書かれた書があるところで、どっちかといったら和をイメージしたお部屋になっています」

― どんな方が来られる? 反応はいかがですか?
「さまざまなんですけども、企業の接待に使われたりとか、あとは友人同士で使われることももちろんありますし。一番多いのは企業さまがいろんなところでお客さまを連れてきて、この空間を楽しんでバスケットを見ていただくというのが一番多いですよね」

「佐賀の部屋っていう、一番メインのお部屋なんですけども、鍋島鍛通(佐賀発祥の敷物)という佐賀の昔から高級なものをたくさん置いてあるような、そこは本当に自慢のお部屋ですよね。ここは今後、国スポ(国体)のときには天皇陛下が来られるっていうふうになっています」

夢のアリーナは、観客の満足だけでなく、選手や従業員の意識にも変化をもたらしています。

田畠寿太郎 社長
― プレーする選手は意識が変わったりするものでしょうか?
「めちゃめちゃ変わっています。彼らにも聞くんですけども、ほかの会場に行っても『SAGAアリーナの方がすごい』とか、よくわからないですけども(笑)、そういった部分もありますし、やっぱり、これは島田チェアマンもおっしゃっていたんですけど、『あの空間の中でプレーすることによってお客さまもそうですけど、本人たち(選手)もモチベーションが上がる』っていうか」

― リクルートに課題を抱えている会社も多いと思うんですけど、ここで働きたいという人も?
「めちゃめちゃ来ますね。ぼくらもB2のときは10人ちょっとのスタッフだったんですけど、B1に昇格させていただいて、リクルートをいろんなところでさせていただくんですけど、100人以上が全国から来るんです。これだけ人材不足といわれているんですけど、地方のクラブでB1でアリーナがあるっていうのは1つの魅力になっているんでしょうね」

国内トップクラスの施設に、全国からの視察も後を絶たないSAGAアリーナ。日本のスポーツ界のみならず、街を変える力も秘めています。

佐賀バルーナーズ 田畠寿太郎 社長
― 社長の考えるアリーナの持つ力って?
「アリーナはやっぱりクラブのさまざまなことを、“課題を解決できる魔法の箱” というか、すばらしいですね、このインパクトというのは」

  ◇  ◇  ◇

青山高治 キャスター
まさに魔法の箱…。いや、想像以上でしたね、これが国内トップクラスなのかって感じで。プレミアムフロアとかすごかったです。

コメンテーター 木下ゆーき さん(子育てインフルエンサー)
インタビューしていた部屋も観戦できるんですか?

坂上俊次 アナウンサー
あそこで観戦できるんです。

木下ゆーき さん
えーっ。各国首脳が握手して写真を撮るような部屋ですよ。すごい。

坂上俊次 アナウンサー
サミットが始まりそうな感じですよね。佐賀では本当に自慢になっていて、バスケットの試合のみならず、B'zが来たよとか、もっとすごいのが 羽生結弦 さんのアイスショー。全国3か所開催だったんですが、東京があったりする中で佐賀だったと。

青山高治 キャスター
今、“広島飛ばし” ってありますけど、逆に今、“佐賀選ばれ” が起きているわけですね。

中根夕希 キャスター
うらやましい。

坂上俊次 アナウンサー
選ばれる佐賀…。佐賀県民の番組みたいになっていますけど、アリーナにはそれぐらい、状況を変える力はあったりするわけなんです。あと、従業員の方も今までだったら「スピーカーを何個運び込んで、ケーブルはこうで、コンセントは…」だったのが、作業が不要になるのでクリエイティブに専念できる。働く方のクリエイティブのレベルも上がっているということだったんです。

このSAGAアリーナ、いきなりアリーナだったのではなくて、実は壮大な構想があって、そのあと、アリーナだったんです。そのあたりも取材しています。

佐賀県の 山口祥義 知事は、ラグビーワールドカップ2019組織委員会に携わった経験もあり、世界のスポーツを目にしてきました。その知見から佐賀県には “ある構想” が生まれていました。

佐賀県 SAGA2024 SSP推進局
宮原耕史 局長

「 “SAGAスポーツピラミッド構想” というものがあります。これは2018年からやっているんですけど、国スポ(国体)のためにやっているわけでもなく、佐賀をスポーツでいかに佐賀の社会を変えていって元気にしていくかという壮大な構想です」

「SAGAスポーツピラミッド構想」―。トップアスリートを育成し、“スポーツをする・育てる・観る・支える・稼ぐ” といった分野のすそ野を拡大。スポーツを生かした人づくりや地域づくりを進めるものです。アリーナは、この構想のカギを握る重要な要素だったのです。

宮原耕史 局長
「これまでの巨大体育館じゃない、ヨーロッパや欧米型のエンターテインメントがそこで行われるようなものを作る」

まずは地域としてアリーナが必要でした。実は、B1の佐賀バルーナーズは、アリーナ構想の後に誕生した “アリーナ先行型” のクラブだったのです。

宮原耕史 局長
「なんといってもアリーナ構想ができてからバスケットボールのプロチームができました。たぶん、全国初の “アリーナ先行型” のプロバスケットボールチームで、しかもアリーナのオープンと同時にB1に昇格するという。これはもう本当にアリーナがなかったら、佐賀にプロチームは生まれていないですし」

アスリートを育てる。指導者にも活躍してもらう。観る人の活気も呼び込み、街の活力につなげていく。スポーツの「点」を「線」につなげるためにアリーナは欠かすことのできないものだったのです。

佐賀県 SAGA2024 SSP推進局
宮原耕史 局長

― こういった構想を実現するにあたってアリーナはマストだと思われますか?
「思いますね。このアリーナがなければ、稼ぐとか、そこを中心にして社会が変わっていくようなインパクトのあるものにはならないと今、実感しています。もし、アリーナが今、なかったらって想像できないぐらい、できて、わずか1年なんですけど、なくてはならない街の中心になりましたね」

  ◇  ◇  ◇

坂上俊次 ナウンサー
もう伝わってきたのが、佐賀は本気ですね。トップアスリートを呼び込んで、みんなでそれに携わって育てたりとか、見る側のサポートをするような役割とか、運営したり、みんなが来ることによって人口も減ることはないですよね。そういった意味で佐賀の本気というのを感じました。

取材しての結論なんですが、アリーナは正直、必要だと思います。ただ、われわれは早くほしいとか、来年ほしいってすぐに言いますけど、大事なのはアリーナって構想以上にはなりません。今、ディスカッションとかいろいろやっていますけれども構想を温めて、こんなものがほしいとか、こんなふうに使いたいとか、この構想がアリーナとともに非常に大事なベースになってくるんじゃないかなというふうに思いました。

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