被災地を支援しようと、2011年の東日本大震災を機に結成された声優グループ「声援団」が6月末、新潟県胎内市のホテルでチャリティーイベントを開きました。
様々なアニメや映画の吹き替えで活躍する“声のプロ”がステージで伝えたいのは「遠く離れていたとしても、いつもどこかで心配してくれる人が絶対いる」こと。
そして、公演ではたくさんの笑顔と涙の語り部として、57年前の8月28日に、この町で起きた“水害の記憶”も呼び覚ましてくれたのです。

新潟県北部にある人口2万7000人ほどの胎内市。
チューリップや米粉、夜には満天の星空が望める町にあるホテルに6月29日と30日、声優グループ「声援団」のメンバーがやってきました。

胎内市で公演する「声援団」のメンバー

井上和彦さん、かないみかさん、勝杏里さん、檜山修之さん、伊藤健太郎さん、甲斐田裕子さんの「声援団」中心メンバーに加えて、永井真里子さんと地元・胎内市出身の長谷川玲奈さんの若手2人も参加。さまざまな人気作に出演する“声のプロ”が朗読劇や歌などを披露するイベントに臨みます。

声援団の立ち上げメンバーで声援団“援長”の井上和彦さんは以前、「いろいろなところで苦しんでいる人がいる中で、なかなか目にすることがない声優の演技を間近で見られるイベントを通じて、被災地に目を向けるきっかけにしてほしい」と話していました。

「声援団」立ち上げメンバーのひとり 井上和彦さん

どうして胎内市でイベントが行われたのか。
そこには、脚本・演出を手掛ける胎内市出身の男性との出会いがありました。

今回のイベントの会場となった「中条グランドホテル」。
このホテルで働く池田真一さんが、今回のイベントの仕掛け人です。
開場直前まで、座席の確認など準備に追われていました。

池田さんはかつて東京の劇団で活動し、10年前に地元に戻ってきました。
ラジオドラマや舞台の脚本なども数多く手がけていて、「声援団」の立ち上げの時から池田さんが書いた脚本を使っている縁で、今回が7年ぶり2回目の胎内市公演となったのです。

池田真一さん
「ようやく、この日を迎えることができました。あとは無事に開演できれば…」

池田さんは声援団の公演に、3つの思いを込めていました。
ひとつは、地元の人たちに“声のプロ”の演技を見てもらいたいということ。
2つ目は多くの人に地元の良さを知ってもらいたいということ、そしてもうひとつは、胎内市を襲った災害の記憶を伝えたいということです。

「地元の出来事を題材にした演目もあるので、地元でも大きな災害があったんだよと、他人事じゃないんだよと知ってもらいたい。そして、せっかく目の前で本物の演技が見られるチャンスなので、多くの人に体感していただきたいですね」

迎えた公演には、地元の人をはじめ関東や九州からも客が訪れました。
「声援団」では、公演の売り上げのうち、必要経費を除いた全額を能登半島地震をはじめとする災害の被災地に寄付しているのです。出演者も出演料を受け取りません。

グッズ販売をする井上和彦さん(左)とかないみかさん(右)

会場で販売されるグッズの売り上げもすべて寄付するということで、多くの人に“気取らずに”寄付してほしいと、かないみかさんを中心に出演者も販売に参加。多くの客がグッズを手に取っていました。

初日の公演では、出会いと別れをテーマにした朗読劇などが披露され、訪れた人は笑ったり涙したりして楽しんでいました。

そして、初日の公演の後には、もうひとつのお楽しみがありました。
出演した声優と一緒に参加する「アフターパーティー」です。実はこの参加費や飲み物代も寄付するということで、参加した人は憧れの声優との会話を楽しんでいました。

そして2日目の公演。
この日の演目は、特に“地元”を意識した内容となりました。

ひとつは「中条弁講座」。
地元・胎内市中条地域の方言を、プロの声優が“再現”しました。

「やいや、ヤッケのホックちょしたら、ぼっこれでしもだ!」
(あー、上着のホックを触ったら、壊れてしまった!)

「まんずもう、さんみっけ、いごでー」
(とにかくもう、寒いから、行こうよー)

「分がんにゃん?どうせばやん!」
(分かんないの?どうすればいいの!)

新潟県内でも独特の語尾とイントネーションがある中条弁を完璧に表現していました。

そしてもうひとつ、脚本・演出を手掛けた池田さんが伝えたかったという、地元で起きた”災害の記憶”です。

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