山口県上関町の離島・祝島では、1100年以上続く伝統の神事「神舞」が、8月16日から始まります。
4年に一度行われるのですが、新型コロナの影響でことしは8年ぶりとなります。
人口減少や高齢化が進む逆境の中、島の伝統を守ろうと、若い力を借りながら準備が進められています。

人口300人弱の島の神事



上関町の室津港から、定期船でおよそ40分。離島、祝島。
270人ほどが暮らす小さな島で、その8割近くが高齢者です。
島のシンボルでもあり、石と土を積み上げて作られた「練塀」。
国内でも珍しいとされる「練塀」の横で、地元の人と上関中学校の生徒が、一緒に作業を進めていました。



祝島の女性
「先こっちからして、それをこっちからして」
生徒
「交互?」
祝島の女性
「交互にやっていきます」
祝島の女性
「上手上手!私はいま褒めよるのよ」
記者
「頼もしいですね!」
祝島の女性
「ね!祝島に来てもらっては、手伝ってもらおう」

昔ながらの道具を使い、干したカヤを重ねて編んで作る「苫編み」です。
縦90センチ横1.8メートルもある大きな1枚を作るのに、2、3日はかかるということです。
島に活気があったころ、この「苫編み」は家庭行事のようなものでしたが、ことしの作成目標は10枚です。



祝島神舞奉賛会 木村力 会長
「1軒1枚くらいで、400枚くらい作っていたときがあるようですね」
記者
「10枚になった理由というと、どんなところがありますか?」
木村会長
「作れる人が年とって、たくさん作れなかった」

人口減・高齢化で規模縮小



4年に一度の「神舞」で、神楽が奉納される「仮神殿」の様子です。
この「仮神殿」は屋外に設置されるため、「苫」は屋根の役割をしていました。
ただ、ことしは、「仮神殿」が屋外ではなく屋内での設置となるため、「苫」は、本来の屋根としてではなく、神棚の周りに飾りつけられる予定です。
押しよせる人口減少や高齢化によって、規模の縮小はやむを得ないことです。

木村会長
「仮神殿の設置はこれまでなら1日か2日で一斉に仕上げると。そのときはもうそれに集中して、仕事はもう置いておいて作るというかたちになります。それが今ならもう、例えば20人なら1週間ぐらいは、かかるかもしれません。労力がちょっと足りないというのが、1番大きな要因ですね」

神舞の見せ場・海上の神事支える若手



祝島の男性
「このまままっすぐ!もうちょいもうちょい!まだ行け!」

島の大人が集まり小屋から出すのは、「櫂伝馬」。
「神舞」の見せ場で、海の上で執り行われる「入船」や「出船」の神事に使われる船です。
長さ11.5メートル、幅2.2メートルで、30人がかりで運び出すのがやっとです。
そこには、若い男性の姿がありました。



広島県で生まれ育ち、広島大学の大学院に通う出田涼也さん、24歳。
祖父の資さんが祝島に住む縁で手伝いをしています。

記者
「こうやって帰ってくるあたりどうですか」



涼也さんの祖父 出田資さん
「楽しみなんですよ、帰ってくれたら。若い人があんまりいないからしっかり頑張ってほしいですね」

島民の期待背負い大役担う

強い日差しが照りつける中、出田涼也さんは「櫂伝馬」の上に乗っていました。
ことしの「神舞」で、勇壮な舞を披露する「剣櫂」の役を任されています。
島の人は、大役を担う若者を孫のように温かく接し、アドバイスをします。



祝島の男性
「ずっとこうなったらあかん。こういう感じ、こう」
ことしの神舞で「剣櫂」を務める出田涼也さん
「斜めになる?」
祝島の男性
「こう!こうなる!」
木村会長
「おじいちゃんも喜んでいる。祝島を”軽く”しょってほしい」
出田涼也さん
「あ~。(うなずいて笑顔)」
出田涼也さん
「大好きな祝島の伝統的な行事・神舞で、『剣櫂』という役をやらせてもらえて、光栄に思っています。島のみんなから『かっこええ』って言われるように、頑張ります」

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