人気ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のボーカル/ギターの後藤正文さん(47)が若手ミュージシャンを支援するNPO法人を設立した。出身地の静岡県で、明治時代に建てられ、茶倉庫として使われた土蔵を宿泊可能な音楽スタジオに改装し、法人の拠点にする。資金難のミュージシャンをサポートしたいという。

後藤さんは静岡県島田市出身。高校を卒業後、上京し、大学のサークルメンバーとバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」を結成。大学卒業後もそれぞれ、会社員として働きながら、活動を継続し、2003年にメジャーデビューを果たした。

「国内には、音楽作品を評価する場所が少なすぎる」と2018年、自費を投じて新人ミュージシャンを発掘、評価する音楽賞「APPLE VINEGAR -Music Award-」を設立。メジャーレーベルに所属していないミュージシャンへの資金援助も続けてきたが、ライブイベントが制限されたコロナ禍を経て、活動を継続しづらくなったミュージシャンの増加は顕著で、支援が追いつかない状況という。

資金難に陥ったミュージシャンが最初に削るのは、スタジオの使用料。都内で設備の整ったスタジオの場合、1日20万円を下らない。

「蔵とかあったら紹介してほしいわ」

駆け出しのミュージシャンにとって、思う存分、楽曲作りに専念できる環境が不可欠だと考える後藤さんは、低料金で気軽に利用できるスタジオをつくれないかと思案した。

2022年、高校の同級生のSNSが目に留まった。

「“空き家ゼロに”のイベント、無事終了。開催して良かった」

SNSに投稿したのは、後藤さんの高校時代のクラスメイト、小林亮介さん(47)。当時、藤枝市職員として空き家対策を担当していた。

後藤さんが返信した。

「スタジオ向きの倉庫とか、蔵とかあったら紹介してほしいわ」

音質を確保して楽曲を収録するには、天井の高い空間が不可欠。後藤さんは、空き家となった倉庫や蔵を改装すれば、スタジオとして活用できると考えた。

小林さんの協力を得ながら、後藤さんが物件探しを始めて2年あまり。2024年にめぐり会ったのが、藤枝市内で新聞販売店を営む江崎晴城さんが所有する蔵だった。

蔵は2025年秋に改装を終え、スタジオに生まれ変わる予定だ。同時に隣接する母屋は、宿泊施設に改装する。利用料は1日数万円程度に設定できる見込みという。

小林さんは2024年に市を退職した。土地家屋調査士として働きながら、後藤さんが設立したNPO法人の代表理事を兼務し、ミュージシャンの支援活動を手伝う。「ゴッチの『音楽で稼いだお金は、音楽からの借金だから返さなくちゃいけない』という言葉と、忙しくても何度も藤枝に足を運ぶ姿に、何か少しでも協力できないかと思った。藤枝のスタジオで録った楽曲が日本中に、世界に広がっていく姿を想像するとワクワクする」 

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