先天性の障害がある娘の成長をYouTubeに公開し続けている家族を取材しました。同じ障害のある子どものホームページがきっかけで始めた動画の配信は、予想しなかった反響を生み、家族にとっての救いももたらしています。

1~3万人に1人の遺伝性疾患 入退院を繰り返す日々

週に一度、家族で行う動画づくり。動画の主役の長女・このはさんは、身長130センチ程と小柄ですが、年齢は20歳。

カメラマンはお父さん、編集はお母さんが担当し、娘の様子を発信し続けています。今までYouTube「このらぶチャンネル」で作った動画は250本以上です。

このはさんの病気は「コルネリア・デランゲ症候群」。1~3万人に1人の遺伝性疾患です。

身体的な成長の遅れや難聴、手足の形成不全がある他、このはさんは重度の知的障害があり、話すことができません。外出の際は、車いすで移動します。

(お母さん)
「7か月の妊婦健診でエコー検査をした時、先生から『心臓の場所が少し右側にずれています』と。先天性横隔膜ヘルニアといって、横隔膜に穴が空いている病気。穴が空いていることによって腸が上に押し上げられ、肺も心臓も押されて、心臓が右にずれている。『おそらく手術が必要になります』と告げられた」

生まれた後、さらに難しい先天性の障害があると知った時には、大きなショックだったといいます。

説明を受けた時「一人で泣いてしまった…」

(お母さん)
「『発達がゆっくりなお子さんです』という説明を受けた時には、うわーって一人で泣いてしまった」

(お父さん)
「妊娠中に羊水検査をして、障害のある子ではないと信じていた。いきなり『障害児です』みたいなことを言われて、すごく動揺した」

肺炎や食道炎で入退院を繰り替えしながらも懸命に生きるこのはさんを、2人は支えてきました。

(お母さん)
「娘の体力が持つか分からないので、術後のICU(集中治療室)は確保するが、(生きられるか)分からないというのは毎回言われた。今を乗り越えるのが必死というか、今が大事なので、全然先のことは考えていなかった」

ある「ホームページ」が前を向くきっかけに

先行きが見えない不安の中で出会ったのが、同じ病気の子をもつ家族のホームページでした。これが、前を向くきっかけとなりました。

(お母さん)
「ホームページを見つけた時に、『うわーっ』とすごくうれしいのと、安心したのと、『うちだけじゃない』っていうのと。すごく子育てする上で救われた」

そして、「同じ病気の子を持つ家族に届けば」との思いで、2年半前からYouTubeへの動画投稿を始めました。今では総再生回数は4300万回以上、登録者は5万7000人に達しています。

(お母さん)
「動画を撮って録画を見たときに、私の気付かない細かい表情が。他の方としゃべっている時に、うなずいているとか。いろいろな表現をしてくれている。動画を通して、娘の動きや表情を、気を付けて見るようになりました」

YouTubeは見た事もなく、映像編集など考えたこともなかったというお母さん。

今では、このはさんが福祉事業所へ行っている4時間程の間に、1本仕上げることができるようになりました。

「頑張ってみようと思う人が一人でも増えれば」 誰かの救いに

このはさんは話すことができないので、感情は表情やしぐさで伝えます。

気分がいい時はダンスを見せてくれますが、時には癇癪(かんしゃく)を起こすことも。そんな家族の毎日を、包み隠さず伝えています。

しかし、時には否定的な言葉も寄せられるそうです。

(お母さん)
「いろいろな意見をみんなが持っているので。私たちが考えていない視点でコメントなどをもらうと、勉強になった反面、悲しいなって感じることもたまにはある。そういうところは、やはりつらかった」

それでも、誰かの救いになってほしいと発信を続けています。

(お母さん)
「登校拒否だった人が、動画を見て学校に行ったらしい。僕も頑張ろうと思ったみたいで。そういうコメントも想像以上にもらって、動画を上げて良かった」

この日は、パンの耳でキッシュを作る動画の撮影。

卵を割ったり、具材を混ぜたりと、このはさんも手伝います。キッシュは見事に完成し、このはさんもうれしそうな表情を見せます。

(お母さん)
「娘や私たちの姿を見て、ちょっとでも頑張ってみようとか思ってくれる人が、一人でも増えてくれるとうれしい」

娘の笑顔は誰かの救いになっている。そう信じて今日も家族の記録を撮り続けます。

CBCテレビ「チャント!」7月11日放送より

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