2年前、大阪市内に住んでいた当時22歳の女性が、生活保護を3度にわたり申請するも、受け付けてもらえず、その後、知人にゴルフクラブで複数回殴られ死亡しました。女性の母親らは「生活保護が受給できていれば死亡せずにすんだ可能性がある」として、23日に大阪市へ要望書を出しました。

 要望書の提出に対して、大阪市の横山英幸市長は24日、行政のしくみを「最後のセーフティーネット」としたうえで、「それをしっかり機能させるためにも、申請者の状況というのを確認させていただくことが重要」「しっかり調査の上、改善すべき点等をあれば、適切に改善して、これからも生活保護行政を進めていきたい」と考えを述べました。


▼『所持金600円』『電気やガス止まる』生活保護申請も受け付けられず

 女性の代理人などによりますと、2022年、大阪市内に住んでいた当時22歳の女性が、母親と一緒に生活保護を3度にわたり申請に訪れたということです。しかし、城東区役所は夫婦関係が破綻していることが確認できないこと、家賃が生活保護の扶助基準額を超えているなどの理由で、申請を受け付けませんでした。

当時、女性が間借りしていた部屋の電気やガスは止まっていて、所持金は600円だったということです。また、女性は男性の自宅に一時的に身を寄せていましたが、女性はゴルフクラブなどで複数回殴られ、死亡しました。

(女性の母親)
「もちろん、娘を殺したのは行政ではありません。でも、亡くなってしまったら、私の気持ちがおかしいのかもしれないが、あの時区役所で生活保護の申請が通っていて、娘の住まいが確保できていれば娘は今も生きていたんじゃないかと思うと、どうしても苦情をいわずにはいられなかったです。娘に対する対応は本当に適正な対応だったのか、そこを明確にしていただきたい」


▼申請の際、母親と職員が口論 様子見た女性「だからもういい」

 母親は申請の際、担当職員の態度や言動から口論になってしまい、それを見た女性は「大事なお金を自分みたいな人間の屑が使わせてもらえるわけない。だからもういい」と、申請を諦め、区役所を後にしました。

 区役所は母親の問い合わせに対し、「最終的に意思がなかったので、生活保護の申請には至っていない。生活保護の申請に際して、申請意思がある方にさせないことはない」と回答していたということです。


▼「生活保護受給できていれば死亡せずにすんだ可能性」母親ら大阪市に要望書

女性の母親らは「生活保護が受給できていれば死亡せずにすんだ可能性がある」として、23日に大阪市に要望書を出しました。

母親の弁護士らは「手持ち金が600円で3回来ているのに申請の意思がなかったとはとても思えない」「申請を受け付けたうえで、これが要件満たしていないというなら、それを理由にして却下すればいいが、そうではなく、そもそも申請の意思がなかったことになっている」と行政の対応について問題点を指摘しました。


▼横山市長「行政は『最後のセーフティーネット』」

 今回の要望書の提出に対して、大阪市の横山英幸市長は、行政を「最後のセーフティーネット」としたうえで、その在り方について、次のように述べました。

 (大阪市・横山英幸市長)
 「行政というのは最後のセーフティーネットでもありますので、寄り添っていくというのはもちろん大事なんですが、一方でセーフティーネットをしっかり機能させるためにも、申請者の状況というのを確認させていただくというのが重要でございます」「皆さんのご意見を聞きながら、申請の条件を満たしていない場合は適切にやり取りしながら、何とか解決できるように日々役所の方でも手続きをやっております。その過程の中においてやっぱりご本人やご遺族の方で不満の点というのも出てくることもあると思います。そのときは事実をしっかり調査の上、不適正な事務がなかったのかどうかをチェックして、改善しながら進めていくと、この繰り返しだと思いますので、今回の事案についても、しっかり調査の上、改善すべき点等があれば、適切に改善して、これからも生活保護行政を進めていきたいと思っております」

 また、大阪市の担当課は取材に対して、「大阪市の定める団体との協議等のもち方に関する指針に基づき、適切に対応していく」と回答しています。

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