この夏、高校野球の地方大会に特別支援学校の単独チームとして全国で初めて出場。グラウンドで白球を追い続ける球児たち。全員軽度の知的障害があります。青鳥特別支援学校の全国初の挑戦を追いました。
全国初「単独で出たい」 特別支援学校の挑戦
喜入友浩キャスター
「元気な声が聞こえてきました。練習が始まっていますね」
青鳥特別支援学校の部員たちは皆、軽度の知的障害があります。2023年、他の高校と連合チームを組み、夏の大会に初出場しました。
そして、部員が12人に増えた2024年。特別支援学校として全国で初めて単独チームで出場することになりました。3年生にとっては最後の大会です。
3年生 白子悠樹くん
「やっぱり単独で出たいという気持ちがあったので、嬉しいです」
キャプテンの白子悠樹くん。知的障害のほかに筋力が徐々に低下する難病を抱えながら、練習に励んでいます。
ーー野球への思いは?
白子くん
「実際にやってみてやっぱりぐんと上がりました。野球やっててよかったと思ったのが、性格も変わりましたし、人の前には出れるようになりました。昔は親の後ろとかに隠れて過ごしてたんで」
野球ノートには「素振り500回」 キャプテンの背中を追いかけて
白子キャプテンには、期待を寄せる選手がいます。1年生の岩本大志くん。このチームで唯一、高校入学前から硬式野球を経験していました。
岩本くんは帰宅後すぐに、練習の成果や目標を“野球ノート”に書き込みます。「素振り500回」の文字も。手袋がボロボロになるまで素振りをしていました。
ーー今は野球が楽しい時期ですか?
岩本大志くん
「はい。でも授業が大変で」
ーー授業と野球だったらどっちが好きですか
「野球です」
ーー7日の試合の目標は
「ヒットを打ちたいなと。親に感謝をしたい、こんなに支えてくれる家族はいないなって思っているので」
中学時代も背中を追い続けた白子君について…
岩本大志くん
「とても優しくて、帰り道も一緒に帰ったりしてくれたり。良い先輩だなって、僕もああいう風になりたいなと思って」
ーー白子先輩とプレーするのは最後になりますね
「早いです。もうちょっとプレーしたいなと思って」
3時間を超える試合 「歴史的な大きな一歩」を次へつなげる
迎えた、試合当日。
白子くんの父
「高校に入って変わったのかな、と」
白子くんの祖母
「自信に溢れていて、目も輝いて生き生きしているから良かったな、と嬉しく思ってます」
白子くんの母
「野球が大きいです。一つの目標ができたんで」
ーーご自宅ではどんな話をしましたか?
岩本くんの母
「いつも通り練習頑張ってきたことを出せるといいね、と(伝えました)」
ピッチャーは3年生の首藤理仁くん。序盤からヒットを打たれますが、5月に野球を始めたばかりのクマガイ・クリストファーくんが見事なキャッチ。
そして、青鳥の攻撃です。
1番ショート・岩本くんがライト前ヒット。これが青鳥の選手が、公式戦で打った初めてのヒットとなりました。その後も、相手の猛攻は続きますが、ひとつひとつアウトを積み重ねていきます。
白子くんはスタメンを外れましたが、キャプテンとして、チームを鼓舞します。
岩本くん
「『お前は大丈夫だ』って言ってくれたんで、白子先輩は心強い」
大差がついた5回裏。白子くんが代打として打席に。岩本くんもエールを送ります。
久保田監督
「『3年間集大成だから一生懸命空振り三振でいいから振ってこい』と」
結果は三振。66-0で敗れたものの、3時間を超える試合を最後まで戦い抜きました。
久保田監督
「特別支援学校として全国で初めて出場できたということが、まず大きな一歩、歴史的に非常に大きな一歩だなと思っています」
岩本くん
「ヒット打てたのが一番うれしい」
ーー白子さんとも最後の試合となりましたが
「寂しいです、正直。ありがとうしか言えない気持ちです」
白子くん母
「もう感動ばっかり。感動しましたね」
白子くん
「やっぱり悔しいなと思いました。最後の試合も勝ちたかったし、悔しいです」
久保田監督
「他の特別支援学校で硬式野球をやりたい、でもなかなかできない現実はありますから、(青鳥の選手が)一生懸命頑張ったプレーを見て、次の特別支援学校の子たちが硬式野球の舞台を踏めたらすごくいいな、と今思っています」
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