今週お伝えしているシリーズ、「涼を求めて」。
2回目の今回は民話のふるさと遠野へ。
地域に伝わる伝承の中にはひやりと感じられるものもあります。
遠野の夏の魅力をお届けします。

数多くの伝承が残る遠野市。
1910年=明治43年に、民俗学者の柳田国男が遠野物語で伝承を紹介したことで全国的にも民話のふるさととして知られるようになりました。

昔々、ある暑い日に馬が小川の淵につながれていると、急にカッパが現れて、馬を小川へ引き込もうといたずらを働きました。
カッパは馬に厩まで引きずられ村人に見つかり、「もう決して村の馬にはいたずらをしません」という約束をして川に帰りました。

地域に伝わる伝承の中でも有名なのが「カッパ伝説」。
「遠野物語」にも収録されています。
遠野市内の土淵町にある小川はかつてカッパが多く住み、人々を驚かしたという伝説が残ることから「カッパ淵」と呼ばれ、全国からカッパを探しに来る人が多くいます。

「カッパ淵」の周辺は、晴れた日中でも薄暗く、今にもカッパが飛び出してきそうな雰囲気。
涼を求めるにはぴったりの場所です。
カッパのことをもっと深く知るなら遠野市立博物館へ。


7月19日に始まったばかりの特別展『「遠野物語」と異界』では、カッパをはじめとした妖怪や地域の信仰に関する資料を100点以上展示しています。
案内してくれるのは、長谷川浩館長です。

(遠野市立博物館 長谷川浩館長)
「こちらにもちょっとあるんですけど、カッパに関する記録が江戸時代から多く残っている。絵巻物であったりカッパの生態を記録したような古文書を展示しています」

カッパ探しへの情熱は今も昔も変わらないようです。
この他にもカッパのミイラ人魚の爪、天狗の牙と伝えられる資料は、どれもひやりと感じられるものばかり。
特別展は9月23日まで開かれています。

長谷川館長に、遠野に伝わる「オシラサマ」の伝承について教えてもらいました。

(長谷川浩館長)
「オシラサマは二体一組の神様。馬の頭と娘の頭が一組になっている物が有名」「娘が馬と恋をしてしまって、それを怒った父親が馬を殺してしまうと、悲しんだ娘と馬が一緒になって天に昇ってしまい、神様になるという話が伝えられている」

その家の生業や家族の健康を守るともいわれるオシラサマは遠野だけでなく、東北地方で広く信仰されています。


その中には、粗末にすると祟りが起こるという伝承も…。
古くから家の守り神として大切に信じられ、そして崇められてきました。

その伝承を体験できるのが伝承園です。


敷地に建つ南部曲り家の一番奥へと足を進めるとあるのが「オシラ堂」。
およそ1000体のオシラサマが祀られていて、1枚100円の布を購入して願い事を書くことができます。

(伝承園スタッフ 長洞美智子さん)
「たまに『願いごと叶いました』ってお酒を持ってお礼に来る人たちがいる。あー、遠野ってすごいなあと自慢に思う。若い時はもうちょっと派手な街ならいいなあと思ったけど」


(妖怪・神様はいると思いますか?)
「なんかね、奥深いところにいてみんなの暮らしを見ているような感じ」

目には見えないけど守られているような、声は聞こえないけど導かれているような、そんな不思議な体験が遠野ではできるかもしれません。


この夏、涼を求めて訪れてみてはいかがでしょうか?

シリーズ涼を求めて、次回は期間限定で現れる滝スポットを紹介します。

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