日本の稲作は、地球温暖化が進んだ将来、どうなるのでしょうか。農研機構(茨城県つくば市)は、「高機能型人工気象室」を用い、高温で二酸化炭素(CO2)濃度の高い環境を再現して影響を調べ、主力品種が収量と品質の低下を引き起こすおそれがあることが分かりました。高温に適した品種の育成や、栽培技術の開発が必要だとしています。  コシヒカリ、ひとめぼれなど五つの品種について、21世紀末を想定して生育の様子を比較しました。基準年(1990年から99年の平均値)と、基準年より1.4度高くした場合、4.5度高くした場合、さらにこの両方についてCO2濃度を高めた場合です。  その結果、どの品種でも生育が早まり、稲を植えてから穂が出るまでの日数が短くなりました。1株あたりの穂の重さも低下しました。最も温暖化が進みCO2濃度が高い場合、基準年に比べ平均3割減少しました。あきたこまちの減少率が最も大きく、コシヒカリもかなり減少しました。  そして玄米の品質を示す「白未熟粒(しろみじゅくりゅう)」の発生が大きく増加しました。白未熟粒は、でんぷんの蓄積が不十分な状態で、食味には影響ないとされますが、外観が悪く精米時の歩留まりが下がります。コシヒカリでとくに目立ち、基準年の条件ではほとんど出ない白未熟粒が、高温・高CO2のもとでは3割から7割に達しました。  研究を担当した農研機構の米丸淳一さんは「稲は開花期の高温に弱く、また夜間の高温は白未熟粒の発生を増やす。生育が早くなるが現在の品種で収量を増やすことは困難」とします。  高温に強い品種は「ふさおとめ」「笑みの絆」などが知られ、新しい品種「にじのきらめき」もコシヒカリ並みの食味があると期待されています。「これまで選抜された品種の利用に加え、高温に強い品種を早く育成する必要がある」と話しています。  論文は米科学アカデミー紀要に掲載されました。 (吉田薫)


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