1989年7月に東京都新宿区戸山の旧陸軍軍医学校跡地で見つかった大量の人骨を巡り、厚生労働省による元軍医学校関係者への調査記録が、市民団体の情報公開請求で開示された。旧日本軍の細菌戦部隊「731部隊」との関係を示唆する証言が複数あり、市民団体は「人骨は731部隊から運ばれた標本類を含んでいる」とみている。(中村真暁)

 731部隊 旧満州(現中国東北部)ハルビンの郊外に拠点を置いた旧陸軍の部隊で、正式名称は関東軍防疫給水部。細菌兵器の開発を担っていた。元隊員の証言などによると、中国人らに人体実験を繰り返し、被験者はマルタ(丸太)と呼ばれ、約3000人が犠牲になったとされる。旧陸軍軍医学校には731部隊の日本での研究拠点もあった。

◆100体分以上、建設工事中に発見され

 市民団体は「軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会」。人骨は国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)の建設工事中に発見され、100体分以上とされる。厚労省が2001年にまとめた調査報告書では、人骨は軍医学校にあった標本類などだったと推測。戦場から集められたものが含まれていた可能性もあるとしたが、731部隊との関連は「明らかにできなかった」とするにとどめた。  同会は、厚労省の報告書の基となった元軍医学校関係者約300人への聞き取りや郵送調査の回答票などの開示を同省に請求し、昨夏から今春にかけて開示された。

旧陸軍軍医学校の元関係者への調査記録について説明する川村一之代表=20日、東京都新宿区で

 同会は20日、区内で集会を開催。「戦場に遺棄されている多数の中国兵戦死体から主として、頭部戦傷例を選別し旧軍医学校に持ち帰り標本としたものだと聞いた」や、「(731部隊があった)ハルビンよりドラム缶のホルマリン漬けの生首が届けられ、使役で取り出しに参加した。おう吐(と)した」などの証言があったと報告した。

◆市民団体「身元解明のため、第三者委員会の設置を」

 開示結果を検証した川村一之代表(72)は、死体の一部はドラム缶と木箱に詰められ、731部隊から軍医学校に運ばれたことが読み取れると指摘。終戦と同時に埋められたとし、「厚労省の報告書には不備があった。人骨の身元解明のため、第三者委員会の設置を求める」と訴えた。  元731部隊少年隊の清水英男さん(94)も長野県の自宅からオンラインで参加し、「(部隊本部には)切断された頭部もあった」などと証言。「二度と戦争が起きないことを祈り続ける」と語った。 

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