東日本大震災の津波で自宅に加えて田んぼや畑が被災するも復興を遂げ、農業の6次産業化に取り組む男性が岩手県陸前高田市にいます。多くの人に食を楽しんでもらおうと男性が開発したのは、グルテンフリーのスナックです。

(村上一憲さん)
「どうぞ、ポリフリーもいかがでしょうか?」

7月14日に陸前高田市の中心部で行われた、地域の特産品を軽トラックで販売する軽トラ市。
(食べた人は)
「おいしい」(おいしい?)「うん」
「なんかやっぱり体に安心なんだろうなっていう感じはしますね」

陸前高田市内で農園の運営や加工品の生産を手がけるひころいちファームが販売したのが、看板商品でもある米粉を使ったスナック「ポリフリー」です。


買い求めた人からの評価も上々のようです。
ひころいちファーム代表の村上一憲さんに「ポリフリー」という特徴的な商品名の由来を聞きました。

(村上一憲さん)
「ポリフリーの「ポリ」はカリポリ食感の「ポリ」から来てて「フリー」はアレルゲンフリー、グルテンフリーというようなところから「フリー」を付けてポリフリーっていうふうに名付けました」

「ポリフリー」は、小麦をはじめとした穀物のタンパク質の主成分であるグルテンを使用しない、いわゆるグルテンフリーです。


この商品は2023年、岩手県を代表する特産品の開発を目的に毎年実施されている「IWATE FOOD&CRAFT AWARD2023」のフード部門で、最高賞にあたるグランプリを受賞しました。

(村上一憲さん)
「本当に嬉しい気持ちでその時はグランプリをパソコンのメールから確認したんですけど、まばたき2回くらいして喜びをかみしめましたね」

「ポリフリー」の開発のきっかけとなったのが、東日本大震災の時の避難所での経験でした。

(村上一憲さん)
「避難している先でアレルギーを持った方とかが食にありつけないというような苦しい声もあったようなところからですね」

米粉で作った「ポリフリー」は、小麦にアレルギーを持つ人でも安心して食べることができます。
2010年2月に起業した村上さん。米崎町の海が見える高台の農園でこの時期に採れるのは、ズッキーニです。


「ひころいちファーム」の名前の由来は村上さんが生まれ育った大船渡市日頃市町。


現在は大船渡市内ではコメを、陸前高田市内では野菜の栽培を手がけ、生産から加工、販売までを行う6次産業化に力を入れています。
そんな村上さんも開業からおよそ1年で発生した東日本大震災では、陸前高田市内の自宅に加え、田んぼや畑を津波で失いました。

(村上一憲さん)
「全部なくなった時の、それはショックではあるんですけど。でもこう諦めきれないっていうか。もう始まったばっかりだったので。いや、これはまたリスタートするチャンスだなっていうふうにどんどん切り替えていったっていう」

被災のショックから気持ちを切り替えた村上さんが、農地の復旧に取り組みながら平行して行ったのが米粉を使ったスナックの開発です。

(村上一憲さん)
「もう、もがいていたっていうようなところがあります。自分で作り出していくっていう大変さをすごく感じながら」

やっとの思いで「ポリフリー」が誕生したのは、おととしのことでした。

(村上一憲さん)
「ここは米粉生地を成形しているところになりますね」(きょうは何を作っている?)「きょうはえびせん風の生地を作っています」

今では自社工場で1か月間に平均1万パックを製造。
工場に併設された販売所や陸前高田市内の道の駅で販売されている他、首都圏を中心とした高級スーパーやデパートなど取扱先は着実に増えています。

誰もが安心して食べられることを目指して開発された「ポリフリー」は現在、三陸産の食材にこだわりながら、「赤しそ梅味」と「オニオン味」がラインナップに加わり種類を増やしています。

沿岸被災地を訪れた観光客向けのお土産としても期待される「ポリフリー」。
村上さんは、今後も被災地から食の安心安全と食の楽しさを発信し続けます。

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