7月15日、下田市の中学校の野球部が最後の引退試合を行いました。国民的スポーツともいえる野球ですが、いまや、各地の学校で部活動が存続できない状態になっているというのです。

「絶対勝つぞ~」

三連休の最終日に行われたのは、下田中学校軟式野球部の3年生の引退試合、相手は下田市役所のチームです。

「お願いします」

下田中野球部の3年生は、ショートでキャプテンの藤井悠太郎くん。三島のリトルシニアでもプレーするピッチャーの高清水響吾くんのわずか2人。

セカンドを守る2年生の河野翔くんを加えても部員はわずか3人しかいません。このままでは、人数が足りないので、野球部のOBや保護者などにお願いしてメンバーをそろえました。

下田中学校野球部にとっては、これが最後の試合、今年度をもって廃部となります。

下田中学校は、市内で唯一の中学校で、野球部があるのは、賀茂地区にある9校のうち、ここだけです。しかし、毎年部員不足が続き、ルールで合同チームも組めないため、藤井くんと河野くんは一度も公式戦に出たことがありません。

<下田中野球部 藤井悠太郎キャプテン>
「個人の実力は磨けるんですけど、チームが一番野球にとって大切なんで、そこができなくて、できなかったのが一番痛いというか」

これは、下田に限ったことではありません。10代の野球人口はここ20年で、実に100万人以上減りました。

さらに年に1回野球をやったという中学生は半減、確実に野球に親しむ場面がなくなっているというのです。

<下田中軟式野球部 鈴木勇真顧問>
「賀茂地区には野球に親しみがない子が多いので、そこはどうしようもできなかったといいますか、他の中学校にも野球部はないですし、バスケやバレーとかになってしまうのかな」

さらに、野球というスポーツならではの事情もあります。

中学野球と高校野球では扱うボールが異なるため、早くから硬式球になじみたい中学生は、クラブチームを選ぶ傾向があります。

<静岡県野球連盟下田支部長 橋本元治さん>
「学童(野球)をやられていた子どもさんが、そのまま将来的には、高校に行っても野球を続けたい方は、その近道という形で、硬いボールに行かれるという子どもさんはいると思います。私は、中学の部活との兼ね合いが難しいのかなと思っています」

勝利で有終の美を飾った下田中野球部。

<下田中野球部 藤井悠太郎キャプテン(3年)>
「今日は勝てたので、久しぶりの勝利だったんで、寂しいとか悲しさより、うれしいが大きかったですね」

唯一の2年生・河野くんは試合後、涙が止まりませんでした。

<下田中野球部 河野翔内野手(2年)>
「本当に楽しかったし…。本当に…。もう終わっちゃうのかな…」。

河野くんは今後、軟式テニス部に所属。高校でまた、野球をしたいと望んでいます。再び、この地域に、中学球児の歓声と球音が響く日は来るのでしょうか。

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