東日本大震災で震度6弱の揺れに襲われ被害が出た東北電力女川原発2号機(宮城県女川町)は、9月ごろの再稼働に向け、事故対策工事を終えた。核燃料の装塡(そうてん)や原子炉内の検査を前に、内部が公開された。再稼働すれば、東京電力福島第1原発事故後、東日本に立地する原発としては初めて。大津波からの復興が進んだ町で、被災した原発が再び動こうとしている。(渡辺聖子) ①防潮堤
 想定する最も高い津波を23.1メートルと評価し、高さは海抜29メートル。800メートルにわたり敷地を囲む。震災では、地震から43分後に約13メートルの津波が押し寄せ、敷地内への到達は免れたものの、敷地高はぎりぎりだった。

海側から望む女川原発。防潮堤奥の中央が2号機の原子炉建屋=宮城県女川町

 ◇ ②防潮壁
 取水路などから海水が敷地に流入しないよう、高さ約5~6メートル、厚さ30~40センチの壁を設置(代表撮影)。  ◇  ③非常用の注水設備
 事故時に原子炉を冷却する既存の注水設備が動かなくなった場合に使う注水ポンプ(代表撮影)。電源を喪失しても、原子炉内の蒸気で動く。福島事故後の新規制基準で設置が求められた。  ◇  ④フィルター付き格納容器ベント装置
 重大事故時に圧力が高まる格納容器の破損を防ぐため、内部の放射性物質を含む気体を放出する際に使う装置(代表撮影)。フィルターを通して放出量を千分の一以下に抑える仕組み。  ◇  ⑤淡水貯水槽(手前)⑥緊急時対策建屋(奥)
 2号機から約600メートル離れた海抜60メートル以上の高台に、重大事故時の現地対策本部となる緊急時対策建屋を整備。地下には冷却用として1万トンの水をためる貯水槽が埋まる。  ◇ 

◆震災時、非常用発電機2台が使用不能に

 津波により取水路の水位が上昇し、海水が潮位計のふたを押し上げて、原子炉建屋に隣接する別の建屋内に逆流。非常用発電機2台が使えなくなった。ふたが浮き上がらないよう板を取り付けた。
 外部電源(送電線)は全5回線のうち4回線が停止。全て復旧するまでに約2週間かかった。  女川町は震災で 827人が亡くなり、家屋の約9割が被災した。海を望む高台には慰霊碑が建つ。女川港近くには津波で倒壊した女川交番の建物が遺構としてそのまま残されていた。
 町の中心部には「道の駅おながわ」が整備され、新しいまちづくりが進む。  津波は原子力災害時の対策拠点として町内に整備されていた県のオフサイトセンターも破壊した。原発の近隣は道路が寸断し、原発に避難した住民もいた。ピーク時で364人に上り、3カ月にわたり原発構内が避難所となった。 

◆半島からの避難に課題も、宮城県は再稼働に同意

今年1月の能登半島地震が浮き彫りにしたように、半島に立地する女川原発の周辺も、原発事故と地震や津波との複合災害時に計画通りの避難ができるか分からない。原発に近い集落からの避難路は山道で、カーブやアップダウンが連続する。  県内では、福島事故の放射能汚染で、農林水産物の出荷規制などの影響が出た。原発事故の被害を受けた一方で、女川原発が新規制基準に適合してから約9カ月後の2020年11月、県は再稼働に同意した。

高台に設置されている東日本大震災の慰霊碑

津波で倒れた女川交番

震災後に整備された道の駅おながわ

原発近くの集落に続く道路



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