LGBTQ(性的少数者)支援団体が展開する、同性婚の法制化を求めるキャンペーンに賛同する企業・団体数が500を超えた。先進7カ国(G7)で、同性婚や国レベルのパートナーシップ制度がないのは日本だけ。国際的な人材獲得に後れを取り、競争力が低下する危機感がある。(奥野斐)

キャンペーンのイベントで話す三菱地所の平井幹人執行役(右から2人目)、パナソニック コネクトの山口有希子取締役(同4人目)ら=1日、東京都内で

◆「安心して働ける働ける」メッセージに

 7月初旬、キャンペーンの賛同企業・団体の500突破を記念するイベントが東京都内で開かれた。経営陣の一人は「妥協できない人権の問題。会社にいる当事者に安心して働けるとのメッセージを出したい」と賛同の理由を語った。  キャンペーンの名称は「Business for Marriage Equality(結婚の平等のためのビジネス、略称・ビジマリ)」。認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」など3団体が合同で2020年11月に開始。同性婚の法制化に賛同を表明した企業・団体を公表している。今月11日時点で、賛同総数は523となった。  賛同企業の間では、社内制度の改正や社員がLGBTQについて考える取り組みも始まっている。

◆人権を大切にしない企業は選ばれない

 「パナソニック コネクト」は今年4月、LGBTQの権利擁護を訴えるイベント「東京レインボープライド」に役員や従業員、家族ら約200人が参加し、街頭を歩いた。取締役の山口有希子さんは「LGBTQが安心して働けない日本には来たくないと思われる。日本の若者が海外に行ってしまう問題もある。人権を大切にしないと、選ばれなくなってしまう」。  三菱地所は、同性パートナーを配偶者と同等に扱うよう社内の就業規則を改正し、LGBTQの権利についての啓発活動が世界で行われる6月の「プライド月間」に、社員食堂でイベントをした。執行役の平井幹人さんは「トップもコミットし、賛同している」と話した。

◆「企業は人権保障の担い手」

 「虹色ダイバーシティ」の村木真紀代表は「大手企業に賛同の働きかけを続けつつ、ビジネス分野が同性婚を求めていることを発信したい」と語る。  旧ジャニーズ事務所の性加害問題への言及で注目された国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会は、調査報告書で人権侵害を受けやすいグループとして性的少数者を挙げた。日本については「人権が構造的に守られていない状況がある」と指摘している。  青山学院大の谷口洋幸教授(国際人権法)は「企業は、人権保障の担い手だ。当事者が生きやすい企業、社会をつくるため、国の法制度に対しても働きかけていく必要がある」と強調した。 【主な賛同企業】(50音順)大林組、KDDI、サントリー食品インターナショナル、資生堂、住友ファーマ、積水ハウス、ソニーグループ、ソフトバンクグループ、第一三共、大東建託、武田薬品工業、中外製薬、電通グループ、東急不動産ホールディングス、東京電力ホールディングス、日本たばこ産業、パナソニックホールディングス、富士通、ブリヂストン、ホンダ、三菱ケミカルグループ、三菱地所、明治ホールディングス、ヤマハ、LINEヤフー、楽天グループ、リクルート

「Business for Marriage Equality」のHP画面。同性婚の法制化に賛同する企業の社名やロゴマークが並ぶ

 同性カップルを巡る動き 東京都渋谷区と「虹色ダイバーシティ」の共同調査によると、同性の2人の関係を公的に認める「パートナーシップ制度」は6月28日時点で全国458自治体が導入、国内人口の約85%が制度を利用できる状況にある。5月末時点で延べ7350組がパートナーシップを認められたという。
 同性婚を認めない現行制度の違憲性を問い、2019年以降に各地で起こされた訴訟は、地裁と高裁判決計7件のうち、今年3月の札幌高裁を含め計6件が「違憲」「違憲状態」と判断された。



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