「会食恐怖症」という言葉をご存じでしょうか。精神疾患の一つと位置付けられ、ここ数年でその存在が知られるようになってきました。いったいどのような症状なのか。理解を深めようという取り組みが始まっています。

はじまりは給食での出来事

6月、仙台で開かれた交流会。その名も「食べなくてもいいカフェ」。20代の若者を中心に15人が集まり語り合いました。

参加者:
「得体の知れないものだったから自分の中で。何でこうなっちゃうんだろうって」「早く食べなきゃいけないみたいなプレッシャーで余計に食べられなくなっちゃうみたいな」
「『食べたい』よりも『逃げたい』になりますよね」

参加者に共通しているのは、「会食恐怖症」の経験者という点です。

たいせいさん(22):
「喋りたいけど、食事が付き物になっているから」

宮城県岩沼市から参加した会社員のたいせいさん(22)も会食恐怖症を経験した一人です。発症したのは中学3年生のとき。体調が悪く、給食のご飯をうまく飲み込めなかった際、友人からかけられた一言がきっかけでした。

たいせいさん:
「『え、大丈夫?』って友達に言われたんですよ。めちゃくちゃ大げさに言われたから、今日も食べられなかったらどうしようって。どんどんそこから食べられなくなってしまいました」

それ以来、誰かと食事をすると、不安な気持ちが高まり食べ物を飲み込むことが苦痛になっていったといいます。

たいせいさん:
「口に入れたら飲み込めない感じになった。(食べ物が)本当に美味しくなかった。一気に急にそういう症状になっちゃったから。これ死ぬまでこうなんじゃないかなって毎日考えていました」

「会食恐怖症」とは

「会食恐怖症」は、精神疾患の一つと位置付けられ、人と食事をすると強い不安や恐怖感を覚え、吐き気やめまいを感じる人もいるといいます。

日本会食恐怖症克服支援協会・代表理事 山口健太さん:
「不安障害といってもいくつかカテゴライズされているが、その中の社交不安症というものの症例として会食恐怖症があるという位置づけ」

ただ、症状への理解は十分進んでいるとは言い難いのが現状です。

会食中の人に「人前で食べること」について聞きました。

大学生:
「会食恐怖症?聞いたことないですね。一緒にご飯行くことに乗り気じゃない友達もいるので、一定数そういった人もいるのかなと思う」
「(人との食事は)食べるときに注目されたりすると、ちょっと緊張はする」

きっかけで多いのが給食の「完食指導」

支援協会の調査によりますと、会食恐怖症のきっかけで最も多かったのは、給食を残さず食べるよう求める「完食指導」や「食事の強要」で35%近くを占めました。

こうしたなか、宮城県内の学校現場では現在、1人ひとりに合わせた給食指導が行われていています。

学校給食の現場の今…

仙台市立連坊小路小学校では、児童が自分たちで量を調整しながら給食を食べていました。

仙台市立連坊小学校 4年生の児童:
「きょうは、4分の3くらい食べた」
「(給食は)楽しく面白い時間。みんなで給食の前の時間に『これ美味しそうだね』とか楽しめる」

仙台市立連坊小学校 工藤慶次郎教頭:
「1人ひとりの体調、あるいはその子の状態に応じて声掛けをしています。少し頑張って食べてみようとか、こういう栄養があって大事なものなんだということを考えながら食べられるといいのかなと」

会食への不安が消えた理由

中学3年生のとき、会食恐怖症を経験したたいせいさん。たいせいさんの場合、会話を楽しむことを意識して友人と食事を重ねる中で、不安が消えていったといいます。

たいせいさん:
「例えば、ご飯。ご飯とかだと一人分が盛られてくるので、苦手でした。めげずに何回も食事の場に行くということ。行くことを続けていくとだんだん楽しみだなってなってきました、自分の場合は」

6月の「食べなくてもいいカフェ」は、会食恐怖症の経験者たちが仙台で初めて企画しました。関東では定期的に開かれていますが、東北でも開催してほしいとの声が寄せられ実現しました。

症状からの回復に必要なのは

支援協会によりますと、会食恐怖症の回復には、自分を責めない気持ちと理解してくれる人との食事が大切だといいます。

食べなくてもいいカフェ りょうた店長:
「誰かに悩みを打ち明けたいけど、打ち明けられない人はぜひ食べカフェに」

参加者:
「1人だったら食べられるのに4人とかで行くと食べられないという話をした。ちょっとだけど飲み物とかも飲めて楽しかった」
「みんなのあるあるで、これは食べやすいけどこれは食べにくいなど共感が多くてすごく楽しかった」

この日、たいせいさんもリラックスした様子を見せていました。

たいせいさん:
「そこまで気にせず、あの人全然食べないなとか思っても、普通通り接してほしいというのは自分の感じる気持ち。カフェとかに参加して、ちょっとでも同じ境遇の仲間たちの力になれればいいなと思う。一緒に頑張っていきたいという気持ち」

身近で悩んでいる人がいるかもしれない「会食恐怖症」その症状を知ることが克服の支援につながります。

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