知人の女と共謀して姉を殺害し通帳などを奪ったとされるホームレスの女(52)の裁判員裁判が始まった。
初公判で女は、姉の殺害と、知人との共謀を否認し「単独で行った強盗事件」だと主張した。
一方で、検察によると、奪った通帳から引き出した金の大半は、知人の女に渡ったという。さらに、女がホームレス生活だったにもかかわらず、これまでに5800万円あまりを知人の女とその子供たちに送金していたことも明らかにされた。
ふたりの間に何があったのか。被告の姉は、なぜ無残な死を遂げたのか。
姉を殺害し通帳などを奪った強盗殺人罪で起訴された辻和美被告(52)
5日午前10時、福岡地裁小倉支部の法廷に入ってきた住居不定・無職の辻和美被告(52)。
起訴状などによると、辻和美被告(52)は去年6月2日、知人の岡村恵美被告(47)と共謀して、福岡県水巻町に住む姉の辻つぐみさん(当時52)の首を圧迫して殺害し、通帳3冊と印鑑を奪った強盗殺人などの罪に問われている。
上下黒のジャージ姿で、白髪まじりの髪を後ろでひとつに束ね、被告席に着席したあとは、うつむき気味で、机の一点をじっと見つめていた。
強く否定した「知人の女との共謀」
検察側が起訴状を読み上げたあと、裁判長に起訴状の内容について「違うところはありますか?」と問われると、辻和美被告は「強盗殺人について、岡村さんと共謀したというのはありません。殺意をもってというのも違います」と、小さく、そして低い声でぼそぼそと述べた。
裁判長「首を圧迫したことについては?」
辻和美被告「それも違います」。
裁判長「殺害はしていませんということですか?」
辻被告「はい」
終始、聞き取れないほどの小さな声で答えた辻和美被告だが、知人の岡村恵美被告との共謀を否定した時は、前のめりで力が入っているように感じた。
冒頭陳述で検察側は、「和美被告と岡村被告の間で、つぐみさんに借金を断られた場合には、金目の物を奪い取る共謀が成立していた」「ねじったポリ袋を用いるなどの方法でつぐみさんの首を圧迫し窒息死させた」などと主張。一方、弁護側は、単独犯としての強盗については争わない姿勢を示したうえで「首を圧迫する行為をしていない。つぐみさんが死んだのは和美被告の暴行が原因でない」などと主張した。
ふたりの関係性も明らかに
今回の裁判の主な争点は2つだ。1つ目は、辻被告が姉のつぐみさんを殺したのかどうか、暴行の内容。2つ目は、強盗殺人と詐欺の犯行について岡村被告の共謀があったかどうか。
辻和美被告がきっぱり否定した、知人の岡村恵美被告との共謀。2人はいったいどんな関係なのだろうか。
冒頭陳述や証拠調べの中で、検察が明らかにしたところによると、2人は、2002年から2003年にかけて、当時働いていたごみ収集会社で出会った。
岡村被告は辻和美被告のことを「志村」と呼んだ。辻和美被告がタレント・志村けんさんのものまねをしていたからだそうだ。
毎年100万円単位の送金
そして2004年ごろから辻和美被告は、岡村被告に頼まれて、岡村被告とその息子と娘に送金するようになった。去年までの19年間でその額は5803万6996円に上るという。毎年100万円単位で送金が行われていた。
ホームレス生活を送っていた辻和美被告は、このような大金をどのようにして手に入れたのだろうか。そしてなぜ岡村被告らに送り続けたのか。
検察によると、辻和美被告は、今回の事件で奪った姉の通帳から引き出した102万8000円のうち、少なくとも91万円を知人の岡村被告に手渡したとされる。
いまだなぞの多い事件の裁判。次回は、8日午前10時から証人尋問が予定されている。
RKB毎日放送 記者 浅上旺太郎
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