今年1~6月に発生した歯科医院の倒産(負債1000万円以上、法的整理)と休廃業・解散の件数が85件だったことが、帝国データバンクの調べで分かった。過去最多を大幅に更新する可能性が高い。主な原因は虫歯治療の減少などにあるが、マイナ保険証を使うオンライン資格確認の義務化に伴う設備更新経費の増大が一因とみられる。(長久保宏美)

オンライン資格確認用(手前左)などのパソコンが並ぶクリニックの受付=東京都内で

◆虫歯治療の減少、人手不足なども

 同バンクによると、2000年以降で最も多かった23年の件数が104件で、今年は半年ですでにこの件数に迫っている。  主要な収入源の一つとなる虫歯の治療が、近年の罹患(りかん)率低下で、利益を生み出すことが困難になっている。歯科衛生士などの人手不足、経営者の高齢化も進み、後継者難から閉院するケースも散見されるという。

◆「マイナ」対応 地方を中心にあきらめる例多く

 同バンクの担当者は「主な原因は収入の減少だが、(昨年4月の)マイナ保険証を使うオンライン資格確認の設備設置義務化に伴う経費の増大が、倒産の一因になっていることは間違いない」と話している。  全国の開業医らで構成する全国保険医団体連合会(保団連)によると、顔認証付きカードリーダーなどオンライン資格確認の初期導入経費は最低約45万円程度で、ほぼ補助金でまかなえる。しかし、入居するビルが古く、専用の光回線の工事や関連通信設備の整備に数百万円かかる事例もあり、既存システムの老朽化と維持費も考慮すると、患者の少ない地方を中心に経営をあきらめる歯科医師が多いという。  今年1~5月に全国の地方厚生局に届けた歯科の廃止届は1413件にのぼる。 

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