「復興への羅針盤」です。陸前高田市に移住し空き家の活用に奮闘する男性がいます。男性が仲間と共に目指すのは、「ポジティブな過疎地を創る」こと。今井日奈子アナウンサーの取材です。

陸前高田市で空き家を活用しながら移住者のサポートや定住促進に取り組む高橋諒さん28歳です。
盛岡市出身の高橋さん自身も地域おこし協力隊への着任がきっかけで陸前高田に移り住んだ移住者です。

(髙橋諒さん)
「海は、毎週来てますね。必ず」

釣り歴は20年を越えるという高橋さん。
陸前高田が豊かな海や川に恵まれていることが移住の決断を後押ししたとか。

(髙橋諒さん)
「(陸前高田は)とても良いところなので、海もありますし気仙川もあるので、良い環境で釣りができるなと思って、移住を決めましたね」


そんな高橋さんが、釣りに負けないほどの情熱を注ぐのが「建築」です。

(髙橋諒さん)
「釣りに関しても家に関してもいろんな視点で見ないとできないと思う」

幼稚園の頃の将来の夢は「大工さん」小学5年生の頃の七夕の短冊にも「大工さんになりたい」と書いていました。大学で建築を学ぶと関東のゼネコンに入社。

ゼロから建物をつくる現場監督を務めてきました。そんな高橋さんはおととしから陸前高田市の地域おこし協力隊を務めながら、NPO法人「高田暮舎(たかたくらししゃ)」で空き家バンクを運営しています。空き家バンクとは、自治体や民間企業が地域内の空き家の活用を目的に土地や家屋の所有者から集めた情報をウェブサイトなどで公開し、購入希望者や居住希望者に提供する制度です。

高田暮舎が目指すのは、「ポジティブな過疎地を創る」こと。そのために移住者が集い、10年後も住み続けたくなる陸前高田にすることをミッションとしています。

(髙橋諒さん)
「市街地から車で5分離れると山や川、海に出られるので落ち着いて過ごすには一番いいところかな」

高田暮舎で相談窓口担当として働く地域おこし協力隊の石田裕夏さんも高橋さんと同じく移住者です。陸前高田の気候に惹かれ、京都から家族で移住しました。

(石田裕夏さん)
「地域の人たちと程よい距離感で関わりながら、仕事もできるし、子育てもできるし、そういうところが私は今好きですね」

移住者が移住者をサポートする体制が整う陸前高田市。実際に市内にはどのような空き家があるのでしょうか?

(今井アナウンサー)
「市街地から車で6分。米崎町にやってきました」
(髙橋諒さん)
「こちらの2軒が、私が相談を受けて空き家バンクに登録している物件です」

築59年のこちらの2階建ての住宅は、広さと12LDKという部屋の多さが魅力です。和室が多く、ふすまを開けたままにすれば大空間としても利用できます。そして2階に進むと…

(髙橋諒さん)
「こちらは広いベランダもあります。」
(今井アナウンサー)
「良い眺めですね。遠くには…広田湾ですか?海も見えます。風が気持ち良いです」

さらに、この物件にはある秘密が…

(髙橋諒さん)
「建物に加えまして、こちらの作業場と蔵と、あとはこちらに、なんとリンゴ畑もついています」
(今井アナウンサー)
「え、この畑も!?」

就農希望者向けの物件には広さ700坪のリンゴ畑があり、実りの季節には海風が運ぶリンゴの甘い香りに癒されそうです。また空き家が、保育園として利用されている例もあり、活用の幅は無限大です。

(髙橋諒さん)
「空き家っていうのは色んな状況、条件に合う物件が必ず出てくるので、自分のやりたいことが実現できるのが、空き家の良いところかなと思います」

今まで、電気がともらなかった空き家に人が住み、灯りが付く。高橋さんの仕事は、震災後に人口減少が加速した地域の安全とコミュニティの活性化にもつながっています。その一方で市内あるおよそ1000軒の空き家のうち、空き家バンクへの登録は現在70軒にとどまっていて課題もあります。

(髙橋諒さん)
「地域を盛り上げる、ポジティブな過疎地。過疎地っていうと、マイナスなイメージですが、地域で生きている人たちでどんどん盛り上げて、小さいながらも楽しく過ごしていく、という町をモットーにして、空き家の魅力をより発信して、利活用に進めるよう尽力していきたいと思っています」

復興が道半ばの震災被災地で地域活性化の鍵となる移住者。
その移住者の受け皿として期待されるのが空き家です。


大きな可能性を秘めた空き家の魅力を「建築」の知識と経験を生かして発信することで「ポジティブな過疎地」を目指す。
高橋さんの挑戦は今始まったばかりです。

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