「新聞社ではたらく人」ってどんな人? TOKYO発の連載「泉麻人のぐるり東京 町喫茶さんぽ」で挿絵を担当するイラストレーターのなかむらるみさんが、そんな好奇心から東京新聞を訪問。社内をくまなく巡り、「おじさん」観察をライフワークとする独自の感性で、社員のありのままを描いてくれた。

写真記者の必需品である脚立がずらりと並ぶ地下駐車場は「圧巻ですね」=千代田区の中日新聞東京本社(東京新聞)で

なかむら・るみ 1980年、新宿区生まれのイラストレーター。武蔵野美術大造形学部卒業。著書に「おじさん図鑑」(小学館)、「おじさん追跡日記」(文芸春秋)など。

◆コピー用紙で高さ調節に「面白い」

 まずは新聞製作の要である編集局へ。「若い人、少ないんですね」。一瞬で特徴をつかまれた。若手は取材に出ていることが多いためだが、確かに、局内をぐるりと見渡すと、40代以上、そして男性が多い。  翌日朝刊の構成を決める会議を見守る。政治部、経済部、社会部など原稿を出す部署と、紙面をレイアウトする整理部のデスクら十数人の大半が立ったまま机を囲む。各部が出稿する記事について次々と説明する様子に「スピード勝負。ダラダラ会議より効率的で、こんな会議が一番いい」と納得していた。  ある記者は白シャツの胸ポケットに赤と黒のボールペンを挿していた。なかむらさんは「すぐ書けるようにと仕事への姿勢が準備万全。正確さを大事にし、真実を逃さないという感じ」と感心。ただ、シャツをペンのインクで汚してしまうのは「記者あるある」だ。  ところどころに積み上がる新聞の山に囲まれ、キーボードを打つ社会部デスクの姿も。「黙々と端正な感じで緊迫感がある」。パソコンの下にコピー用紙の束を重ねて高さを調節していることに気づくのはさすがの観察眼で、「このギャップも面白い」とクスリ。  写真記者にも遭遇し、普段の撮影体勢を再現してもらった。「レンズ交換の時間がもったいないのでカメラは2台持ち」との説明に「瞬間を切り取り、シャッターチャンスを逃すまいという気迫を感じた」。機材の詰まった荷物や脚立は重く、体力勝負の仕事だ。

◆「個性が表れる」足元に注目

 広告営業などのメディアビジネス局、イベントや展覧会を企画する事業局、新聞配達を担う販売店と新聞社をつなぐ販売局も回ったなかむらさん。「おじさん」観察の立場から気になったのは「個性が表れる」という足元という。「サンダルを履いてる人が多い。ずっと革靴だとしんどいですもんね」。靴を脱げば、社外での「戦闘モード」からリラックスして仕事も進むのか。  社内を巡り、「いろんなことがめまぐるしく動き、目が回りそう」。「おじさん」ウオッチを始めた15年近く前と比べ、新聞をお尻のポケットに入れる街の「おじさん」が少なくなったと感じるという。ネットニュースがあふれ、新聞離れは切実。東京新聞はウェブ配信にも注力しており、なかむらさんもウェブでもニュースを読むというが、「新聞に時間や手間がかかっていることが分かった。たくさんの手で作り出したものを毎日、家で『ふーん』と読めるのは意外とお得かも」と、何ともありがたい言葉をいただいた。    ◇  なかむらるみさんが描いた「新聞社ではたらく人」のイラストがグッズになります。東京新聞創刊140周年を記念して手ぬぐいやステッカーを製作中です。  製作にちなみ、8月22日、なかむらさんが人間観察のコツやイラストの描き方を手ほどきするイラスト講座を開きます。テーマは残暑見舞い。会場では完成したグッズも販売します。

なかむらるみさんのお母さんを描いた残暑見舞いの例

 午前10時半〜と午後2時〜で定員は各回40人(先着順)。受講料は2500円。7月13日午前10時から、東京新聞オフィシャルショップで受け付け開始。問い合わせは電03(6910)2542(平日午前10時〜午後5時)へ。 文と写真・嶋村光希子  ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 

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