楽しいはずの給食を “苦痛” に感じている子どもたちがいます。給食が原因で「学校に行きたくない」と不登校につながるケースさえあるといいます。給食や食事の時間を豊かで幸せな時間にするために、どのような対応や心がけが必要なのでしょうか。

4限目が終わるころは、ペコペコのはずが…

「キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン」

授業終了のチャイムとともに待ちに待った給食の時間がやってくる!そう心待ちにしている子どもたちの一方で、苦痛を伴う時間になっている子どももいます。

富山市に住むゆかちゃん。この春、学校生活に期待を膨らませ、ピカピカのランドセルを背負って小学校に通い始めた1年生の女の子です。

しかし、入学してから数週間たったある日。ゆかちゃんは、母親にこう訴えました。

ゆかちゃん:「学校に行きたくない」

母親が心配して、理由を聞くと…。

ゆかちゃん:「給食の時間が怖い」

ゆかちゃんの学校に行きたくない理由は『給食』でした。

母親は、娘がもともと食が細い子であり給食の時間がどうなるか心配していたといいます。

ゆかちゃんの母親:「食べられなかったら食べなくてもいいんだよ。無理しないでいいからね」

給食が苦手な子どもに “完食” は強制していないが…

近年は「学校給食を無理に食べさせない」という指導に変わりつつあります。

文部科学省も「食に関する指導の手引」の中で「達成感や自信につながるよう、まずは苦手な食品の匂いをかぐだけ、ごく少量を食べてみるなど、偏食の原因を軽減するための取り組みを段階的に行います。学級担任や栄養教諭は、児童生徒の努力を認め偏食改善への意欲をもてるよう留意します」と記載されています。

ゆかちゃんの通う学校でも、配膳された量が多いと感じたり、食べられない食材があったりする子どもは、自分が食べられる量に調整することができます。

食べられる量を大切にし、学校側も “完食” を強制しているわけではありませんが…。

それでも食べきれない日が続くと「きょうの献立は何?」「きょう食べられるかな…」などと家を出る直前まで不安な表情を見せていました。

そんな中での『給食参観』。出席した母親は、ゆかちゃんの様子をみて胸が痛んだといいます。

ゆかちゃんの母親:「ゆかに『食べられる量だけ食べたらいいよ』と声をかけましたが、ご飯とスープを一口食べただけで、あとは手をつけずに残しました。周りの子どもたちが楽しそうに食べている姿をみて、胸が苦しくなりました。娘にとって、給食は辛い時間になっているのだと痛感しました」

給食は楽しい?実は4人に1人が苦手意識…

給食に苦しむ子どもたちへの理解を深めようと、教育者に向けに給食指導の資料を提供している『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』。

2020年に行った調査によりますと「他人と食事をするのにかなり苦手意識がある」と答えた人が1000人中121人、1クラスに換算すると4人に1人が該当する結果となりました。

また給食に関する調査でも「給食が嫌い」という回答が一定数以上あり、理由の中には「嫌いなものがある」「量が多い」「時間が短い」などが多くあがったということです。さらに「担任の先生がどんな指導をするのか」で、給食が嫌に感じるかどうかが大きく変わるという声もありました。

“食べられない” 理由があることを理解して

私たち大人は、給食で悩む子どもたちに “どんな言葉” をかけたらいいのでしょうか。

『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』の編集長の山口健太さん(30)は、一般社団法人 日本会食恐怖症克服支援 協会の代表理事も務めています。

山口さん自身も、小学校の給食時間が楽しいものではなかったといいます。そうした自身の経験からそれぞれの違いを理解し、受け入れあうことが重要だと訴えます。

『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』​編集長 山口健太さん:「いっぱい食べなきゃいけない、完食しなきゃいけないとか、そういったプレッシャーによって逆に食べられないってことがあるんです。なので『無理しなくても大丈夫なんだよ、楽しく食べられる分だけまず食べてみたら』といった声かけをすることで、結果的に気持ちがちょっと落ち着いて楽になって、食べる量が増えたり、食欲が増したり…。緊張や不安な状態だと筋肉が硬直するので、どんどん喉を通っていかないということが増えていくんですけど、声かけ一つで、気持ちが緩んで、食べられることが増えていきます。安心できる環境を作ってあげることが大事だと思います」

『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』​編集長 山口健太さん

給食の時間が誰にとっても楽しく、ホッと安らげる時間であってほしいと山口さんは話します。

『きゅうけん|月刊給食指導研修資料』​編集長 山口健太さん:「その子が挑戦できるハードルというのがあるんです。例えば一口も食べたことがない、すごく苦手なものがあって、大人はそこで一口食べてみることを提案することが多いと思うんですよ。でも子どもにとっては、もしかしたらそのハードルがすごく高いことかもしれない。それだったら、まずちょっと匂いを嗅いでみるとか、ちょっとペロッとだけしてみて食べられそうか確認してみるとかっていうのでもいいと思います」

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