連日の猛暑の中、川や海が賑わいを見せていますが、忘れてはいけないのがその危険性。厳しい暑さの日ならではの水難事故のリスクもあるようです。
中学生以下の水難事故は「河川」が最多…身近で危機感が薄れる
良原安美キャスター:
水の事故が多発しています。警察庁の「令和5年における水難の概況等」によると、海や川などでの水難事故における死者・行方不明者は、2023年は743人いました。
発生場所として最も多かったのは海(49.5%)でしたが、中学生以下に限ると、河川(59.3%)が最も多い割合となりました。
特に7~8月ごろから水難事故が増えるといいますが、これには理由があるということです。
日本水難救済会の遠山純司理事長によると、▼この時期はプールの授業がまだ少なく、泳ぎ慣れていない。▼子どもだけで行ける川が近くにあった場合、身近に感じていて、危機感が薄い。▼連日の暑さで水遊びがしたくなる。こうした理由で子どもたちが川に入る機会が増え、水難事故も増えてしまうということのようです。
遠山理事長は「川は日々変化する“生き物”。絶えず危険が潜んでおり、安全な川は無いと思ってほしい」と警鐘を鳴らします。
元競泳日本代表 松田丈志さん:
僕も田舎の出身なのでわかりますが、地方だと学校帰りに川が近くにあって、子どもだけで行ってしまうシーンもあります。少しだけ遊ぶつもりがどんどん楽しくなってきて、どんどん深いところに行ってしまうパターンもあるので、まずは子どもだけでは絶対に水辺に行かないことを徹底してほしいと思います。
ホラン千秋キャスター:
「川は日々変化する」とのことですが、夏になって「あそこの川はいつも遊んでいたから今年も安全だろう、大丈夫だろう」と思っても、1年経ってだいぶ深さが変わっているようなこともありますか?
元競泳日本代表 松田丈志さん:
激しい雨が降ると川が削られて流れが変わったり、前の日に雨が降れば上流からの水量が増えたりと、ほぼ同じ状況ではありません。やはり気をつけてほしいと思います。
良原キャスター:
これから水遊びが増える季節ですので、改めて川に潜む危険と、楽しく遊ぶための心構えをみていきます。
“目に見えない”2つの危険 同じ川でも流れの速さは大きく変化
良原キャスター:
遠山理事長によると、気付きにくい川の危険1つ目は、▼目に見えない“深さ”です。浅いところから入っても、突然3~4メートル深くなるケースもあるということです。
さらに、川底が砂利になっている場合だと、深いところから浅いところに戻りたくても、砂利の斜面が崩れ戻れなくなってしまうことがあるといいます。
そして、気付きにくい川の危険2つ目は、▼目に見えない“流れ”です。川がカーブになっていたとして、内側は比較的流れが遅い・浅い場合が多いのに対し、外側は流れが速い・深い場合が多いといいます。近くで他の子たちが遊んでいても、自分たちが遊ぶ場所が安全かどうかはわからないというわけです。
同じ川でも、秒速0.2~3メートルなど大きく変化しているそうで、遠山理事長いわく「足首までの深さでも安心は出来ない。特に岩の周辺は水圧が強く危険」とのことです。
流された時のための“イカ泳ぎ”とは? ライフジャケットも活用を
良原キャスター:
どのようなことに気をつけて遊べばいいのでしょうか。注意すべきポイントとしては、先ほど松田さんもお話をしていましたが、▼子どもだけで川に行かせないでください。さらに、▼上流・現地の天気や、過去にその川で事故があったか、なかったかなどを事前に確認してください。
そして、▼ライフジャケットは必ず着用するようにしてください。川に近付く場合でも着用したほうがよく、子どもと川に入る場合は、大人が下流に立つほうがよいということです。
また、▼サンダルが流されてしまった場合、これを追いかけて事故に遭ってしまうこともあるそうですので、追わないことが大事だということです。
ただ、万が一流されてしまった場合、私たちはどうすればいいのでしょうか。風・波・流れがある時は浮力が確保できず、「浮いて待つ」は通用しないそうです。
そこで、遠山理事長は「イカ泳ぎ」をしてほしいといいます。流れに逆らわず、足を下流に向け、仰向けで両手足をゆっくり動かして浮くという方法です。
元競泳日本代表 松田丈志さん:
イカ泳ぎは決して難しくはないですが、体を浮かせられることが大前提になってきます。体が浮いた状態で、手と足をリラックスして下の方に押すことで、ゆっくり浮いている状態を保つことができます。
ホランキャスター:
川の流れが速いと、そもそも浮くことが難しいですよね?
元競泳日本代表 松田丈志さん:
「同じ川でも、秒速0.2~3メートルなど大きく変化している」というお話がありましたが、わかりやすくいうと、オリンピックの金メダリストが100メートルを全力で泳いだときの秒速がだいたい2メートルです。
その流れの速さになると、どんなに泳ぎが上手い人でも抗えないので、やはりライフジャケットをつけていることがベストです。ライフジャケットは体を保温してくれますし、何かにぶつかったときの衝撃からも守ってくれます。
ぜひ川に行くときはライフジャケットをつけ、流されたと思ったときはリラックスしてイカ泳ぎをし、浮いている状態を保つことができれば、助けが来るまでの時間を稼げると思います。
井上貴博キャスター:
周りに大人がいるときなどに遊びでもいいからライフジャケットを着て、どういう感じになるのか試しておくと、だいぶ精神的に楽ですよね。
ホランキャスター:
お風呂などで試してみるのもいいでしょうか?
元競泳日本代表 松田丈志さん:
できればプールぐらいの水量があるところで試したほうが、浮力の感じや温かさがわかります。
また、ライフジャケットには笛がついているので助けを呼ぶこともできますし、反射板もついているので海でも目立ちます。ぜひ、身を守るために活用してほしいと思います。
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<プロフィール>
松田丈志さん
元競泳日本代表 五輪4大会出場 4個のメダル獲得
JOC理事 宮崎県出身 3児の父
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