水泳競技をはじめハンドボールなど9競技・・・6月8日、日本中学校体育連盟は2027年度以降、全国中学校体育大会いわゆる「全中」から除外する、と発表しました。

少子化や教員の負担を軽減するための、「苦渋の決断」。中体連はそう説明し、県内の関係者からは、理解を示す声もあります。しかし、目標としている大会が無くなることに「戸惑い」や「落胆」も当然あります。現場を取材しました。

全国大会常連校の反応は

山口県岩国市の岩国中学校ハンドボール部。男女ともに全国大会の常連です。

岩国中学校女子ハンドボール部・茶谷楓音キャプテン
「全中出場に向けて頑張ってます」

岩国中学校男子ハンドボール部・長藤蒼海キャプテン
「目標の全中出場に向けてみんな努力して、いい感じの雰囲気になってきました」

全国中学校体育大会。「全中」と呼ばれます。多くの競技で中学生にとっては最大の目標、大舞台です。しかし3年後、「全中」では、ハンドボール競技が実施されないことになったのです。

岩国中学校 西村隆典顧問
「私自身が中学校の部活動からハンドボールをはじめた人間なので、中学校の部活動で全中のハンドボールがなくなってしまう、そういう大会が減ってしまうのは私が中学生のころを思うと残念だなとは思います」

除外の背景に「少子化」

全中で実施される競技は20競技。日本中学校体育連盟は20競技のうち、部活動の設置率(学校に、その競技の部活がどの程度あるか)の割合が2割以下の競技を中心に9競技の取りやめを決めました。

設置率が低い大きな要因は「少子化」です。中体連によると2003年度には、中体連に加盟する部活に在籍する生徒数、加盟生徒数は244万人いました。それが2023年度には180万人にまで減っています。

改革に「理解」も課題は山積

山口県中体連は、今回の「改革」に「理解」を示しています。

山口県中学校体育連盟 村瀨充俊会長
「顧問が引率をして監督もして審判もしなければいけないというところで、大会の運営についても大会当日だけではなく早い段階から準備を進めなければいけませんので、担当される先生方は大変ではないかなと」

教員の長時間労働が社会問題化する中、引率や大会の運営・準備など負担を軽減することも背景のひとつです。

村瀨会長
「2026年に全中が山口県で引き受けなんですけど、陸上競技と剣道の2種目あるんですけど、その専門委員長については今から先宿泊の準備から監督者会議、当日の流れを決めていかなければいけませんので、そろそろ準備を始める段階ではないかなと思います」

小学生も競技除外は「悲しい」

水泳も「全中」が実施されなくなる競技のひとつです。今の小学6年生が中学3年生になるタイミングで全中が無くなります。

渡邉蒼太さん(小学6年生)
「9競技の中に水泳が入っていたのはとても悲しくて、全中は中学生スイマーだけが出られる唯一の大会だから大会が無くなるのはさみしいです」
豊島寛規さん(小学6年生)
「無くなるのは悲しいです。全中が無くなってもクラブチームの全国大会をチャンスを逃さずに頑張って行きたいと思います」

指導者の國本大海さんは中学2年生の時に全中に出場しました。4×100メートルフリーリレーで4位に入賞しました。自身の経験もあるだけに全中の重要性を感じています。

周南スイミングクラブ指導者・國本大海さん
「夢の1つではあるかなと思います。全中に出場してそこから先にもっと速くなりたいという気持ちが芽生える子もいれば、全中を目指して頑張る子もいるので」

変革期の中学校スポーツ

1979年から続く「全中」。中学校スポーツの在り方は変わろうとしています。

村瀨会長
「今後はそれに代わるような大会だったりスポーツを楽しむような機会を作っていく必要があると思います。子どもたちのためにも間に合わせなければならないと思いますので、今年度中に中国中体連で検討を始めないとなと思っております」

少子化の波と働き方の変化。解決は簡単ではありません。その一方で、子どもたちの「夢」や「目標」も守りたい。難題に、向き合わなければなりません。今回取りやめが決まったのは9競技ですが、残る11競技について、日本中体連は開催期間を3日以内、経費を30パーセント減らす目標を立てています。

金銭的な負担も大きく

この全中、教員の負担が大きいとの声がありましたが、驚く現状がほかにもあるんです。金銭的な手当が非常に少ない、ということです。取材によると、支給される手当は旅費だけ。

例えば全中が山口市の維新公園で開催された場合、手当は学校から会場までの距離×30円。10キロ圏内にあれば1日300円以内となります。そして、全国的に批判の対象にもなっていますが時間外手当はありません。

今後どうなるか、決まっていない部分が多く、県と中国地方の中体連で協議が進められていきます。少子化や働き方という難題を突きつけられたかたちで、解決は簡単ではありませんが、スポーツを楽しみたいという子どもたちの気持ちがくみ取られた解決策が示されればいいなと思います。

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