西日本豪雨で浸水被害を受けた竹原市の酒蔵が、その後、全国で起きた災害の被災地を支援しています。広島県竹原市の人たちは、被災をきっかけに、「自分たちにできることは何か」を考えて、行動しています。
藤井酒造 藤井義大 社長
「これが今回輪島の日吉酒造のお酒を再現したおれの酒…」
竹原市にある藤井酒造は、ことし1月に発生した能登半島地震の復興を支援するため、石川県の日本酒を忠実に再現しました。
藤井酒造 藤井義大 社長
「可能な限り日吉酒造店でつくられていた発酵のさせ方と温度経過を含めて再現して」
能登で被災した蔵元を応援するプロジェクトの一環で、藤井酒造に声がかかったそうです。輪島市にある日吉酒造店とコラボしました。6月に販売を開始し、売り上げは、能登の酒蔵の再建に向けて活用されます。今回、支援に取り組む藤井酒造も、かつては日本酒づくりが困難な状況に置かれていました。
2018年7月に西日本の広い範囲を襲い、県内では153人が犠牲となった西日本豪雨。竹原市で発生した土石流は400を超え、600棟の住宅が浸水など被害を受けました。竹原市内では関連死を含め6人が亡くなりました。藤井酒造でも酒蔵が浸水し、5500本7000リットルが被害を受けました。
藤井酒造 藤井義大 社長
「このあたりもこのくらいですね、線残ってますね」
酒蔵は床上80cmの浸水。災害直後に待っていたのは、猛暑の中での復旧作業でした。
藤井酒造 藤井義大 社長
「まあそうですね、遠い昔のように感じる反面、二度とやりたくないというのは思いますけど」
3年後にも梅雨末期の大雨で再び浸水被害 漫画「GTO」作者にも助けられ
また、3年後の2021年に起こった梅雨末期の大雨でも浸水し、1万本が被害に遭いました。被害総額は、計4600万円にのぼります。
藤井酒造 藤井義大 社長
「笑うしかなかったですよね。片付ける時間は半分になりました」
災害の直後に力を貸してくれたのは、人気漫画「GTO」の作者、藤沢とおるさんでした。
藤井酒造 藤井義大 社長
「竹原にたまたまいらっしゃるタイミングがあって、うちの方にも寄っていただいたときに被害状況を知って何か力になれることがあったら協力させてほしいとおっしゃっていただいて」
藤井さんも、GTOのファンだったそうです。
藤井酒造 藤井義大 社長
「(Q.GTOって見てました?)もちろん見てました」
約2000本を販売。売り上げの一部の100万円を竹原市に寄付しました。復興の支援は、全国へ広がります。2020年7月に九州で豪雨災害が起こったときには、「GTO」ラベルの日本酒を販売し、熊本県へ寄付しました。藤沢さんと、自然に支援の話になったといいます。
藤井酒造 藤井義大 社長
「やるぞっていって始まったというより勝手にやるってなってたという方が近いかもしれないですね」
「断る理由はなかった」能登半島地震で被災の酒造会社とコラボ
能登半島地震で被災した日吉酒造店とのコラボの話がきたときも、断る理由はなかったそうです。
藤井酒造 藤井義大 社長
「できることがあるならぜひやらせてくださいと
竹原園芸店 従業員 寺本光希 さん
「膝上まで水が上がって水浸し泥だらけで、店舗の花とかバケツもひっくり返って泥だらけ…言葉も出なかったですね」
藤井酒造の向かいにある「竹原園芸店」も、2回の豪雨で浸水しました。従業員の寺本光希さんは、身を粉にして復旧作業にあたりました。社長の小田誠さんは、近くの家の作業まで手伝う寺本さんの姿に、驚いたそうです。当時、被災したこの店に全国の生花店が加盟する通信配達システムのネットワークで、同業者からの支援がありました。
竹原園芸店 小田誠 社長
「ああいうとき花屋さんっていうのは小さいながらやっぱりみんなお互いの痛みとかわかってくれるなと思った。我々も微力ながら言葉はおかしいけど恩返ししていかなきゃいけん」
小田さんは能登半島地震が起こった際、石川県の仲間に連絡をとったそうです。
まちの人たちは災害当時の様子をこう振り返ります。
まちの人
「ありえない世界が起こったという感じだったですね。昔ながら災害の少ない町だったから、元に戻ってきたって感じじゃないですかね」
まちの人
「今まで避難に関してはあんまり…また避難警報が出とるわ、程度だったんですが、やっぱり今までよりはよく見るようにはなりましたね」
中学2年生
「豪雨が来たときに家が浸かって2階まで浸かって、大変だったけど、地域の人と掃除をめっちゃした。竹原は自然が多くて、静かで町の人、地域の人が優しくて好きです。将来の夢は教師になることです」
藤井酒造 藤井義大 社長
「本当は災害きっかけじゃない方がいいと思うんですけど、ひとつのきっかけとしてこれまでご縁のなかった人とのつながりがあった。これからも困った方がいらっしゃったらできることをやっていきたいと思います」
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