横浜市で2022年、出産後の母親をサポートする「産後ケア」の利用施設で乳児が亡くなったのは、安全管理に問題があったためだとして、両親が市や事業を委託されていた助産院などに計約8900万円を賠償するよう求めた訴訟の第1回口頭弁論が3日、横浜地裁であった。原告側は、市や助産院に母子を守る義務があったと訴え、被告側は「乳児の預かりは事業の契約に含まれていない」と主張して請求棄却を求めた。  訴状などによると、母親は2022年6月、産後ケア事業の宿泊型サービスとして、市内の助産院に1泊した。眠る間に預けていた生後2カ月の長女の茉央(まひろ)ちゃんは、深夜に助産師がミルクを飲ませて寝かしつけたが、その約30分後に心肺停止となり、死亡した。

横浜地裁

 死因について原告側は、ミルクの誤嚥(ごえん)による窒息の可能性が高いと指摘。事業の利用にあたっては、市や助産院側と母子を守る「保護委託契約」が成立しており、市には呼吸の状況確認など安全管理を指導する義務があったと訴えた。  一方、被告側は、乳児を預かることは契約内容には含まれないと主張。助産院はあくまで母親の申し出に応じた事業外の対応であり、預かり中の呼吸確認などの義務が生じていたとは言えない、と主張した。

◆助産師を業務上過失致死の疑いで刑事告訴

 口頭弁論後、両親は取材に「(乳児を)預かってもらえると市の健診で言われて利用した。憤りの気持ちが大きい」と語った。担当した助産師を業務上過失致死の疑いで神奈川県警に刑事告訴したことも明らかにした。(神谷円香) 

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