日本の新たな主力ロケット「H3」が3号機で初めて、大型衛星の打ち上げに成功した。昨年3月に1号機打ち上げに失敗した後、重ねてきた改良が実った。最終的には、固体ロケットブースターのない「低価格型」での打ち上げを目指すが、実現への課題は残る。

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 H3は2段式の液体燃料ロケットで、主力のH2Aの後継機に位置付けられる。積み荷の重さに応じて主エンジンやブースターの数を変えられるのが特長。中でも主エンジン3基で補助ロケットを使わない「30(さんまる)形態」と呼ばれる低価格型は、H3の「旗頭」となる。

全長57メートルのH3ロケット3号機。最先端の白いフェアリングにだいち4号が搭載される=5月29日、鹿児島県の種子島宇宙センターで(JAXA提供)

 当初は2号機を30形態とする計画だったが、1号機の失敗を受けて変更。2、3号機は1号機と同じ主エンジン2基とブースター2基の「22形態」で打ち上げた。  宇宙航空研究開発機構(JAXA)の有田誠プロジェクトマネジャーは「30形態は、液体燃料だけで飛ぶ国内初の大型ロケット。打ち上げ費用をH2Aの半額(約50億円)にするために目指す姿。準備を進めていきたい」と話す。ただ、次の4号機も22形態で実績を積むことを優先し、30形態実現のめどは立っていない。  3号機では、1段目エンジンの燃焼で最後の20秒間、推力を66%に下げて衛星への負荷を減らす「スロットリング」を初めて実証した。有田さんは「30形態に必須の技術。大きなステップになった」と語る。科学技術ジャーナリストの松浦晋也さんは「H3は30形態が実現することで完成する。国際競争力を確保するため、海外の打ち上げ契約を取るために必要な技術だ」と指摘した。(増井のぞみ) 

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