百貨店にとって特別な顧客を相手にする「外商」。その売り上げは百貨店を支えています。日本一ともいわれる松坂屋名古屋店の外商に、入社1年目で抜擢された新人女性に密着。知られざる外商の世界を取材しました。

入社1年目で抜擢 デパートを支える「外商」の知られざる世界

2024年3月1日。23歳の中野歩海さんは、松坂屋名古屋店の外商で配属初日を迎えました。自己紹介をする中野さんに、早速、上司から「モノを売るより人を売らなあかんから。全軒挨拶とか1番最初は。モノを売ろうという気持ちはなくして」とアドバイスが飛びます。

外商とは、企業や富裕層などの「特別なお得意様」の買い物をサポートする部署。ルーツは江戸時代、呉服店が大名屋敷や武家を訪問して行った商いです。呉服店として1611年に創業し、400年の歴史を誇る松坂屋は、今も年間売上約1269億円の半分を外商が担っています。

(松坂屋名古屋店・長谷部剛マネージャー)
「松坂屋名古屋店は日本一の外商を掲げている。最も富裕層に寄り添う百貨店という形でやっている」

「生々しい話ですけど…目標は年間4億~5億円」

知識と信頼が大きな武器となる外商員はベテランぞろい。唯一の20代の女性として外商部に抜擢された中野さんですが、後日、先輩の売り上げ目標を聞き、自分にもできるのか、不安な気持ちも明かします。

(松坂屋名古屋店・畠中晶規さん)
「ちょっと生々しい話ですけど、僕の目標は半期で2億~2億5000万円。年間だと4億~5億円」

(新人外商員・中野歩海さん)
「自分にとってもいいプレッシャーにもなるし、やるからには日本一ということで、私も頑張りたいと思っている」

外商利用歴30年の顧客の自宅へ 時にはティータイムも

3月14日。中野さんは注文の商品を届けるため、車で顧客の自宅へ向かいました。訪問した女性は、外商の利用歴30年です。

(新人外商員・中野歩海さん)
「こちらがお直しの件です。ワンピースを3センチほど、お直しさせていただいています。ご確認ください」

(外商利用歴30年の女性)
「すごく綺麗になっている。大丈夫、完璧です」

商品の確認が終わると、ティータイム。これも大切な仕事です。まだ、何かを売り込むことはできませんが、最初の教えは「物を売るより人を売れ」。何より、信頼を得ることが大切です。

(外商利用歴30年の女性)
「すごくハキハキして、明るくて、会うのが本当に楽しい。おとなしいかなと思ったけど、伝言などを、しっかりブランドに伝えてくれるので、とても安心している」

目玉の商品は5000万円!初めての「持ち回り」へ

配属から約2か月が経った4月下旬。中野さんは初めて、外商マンにとって大事な仕事のひとつ「持ち回り」を行います。持ち回りは、販売員と共に顧客の自宅を訪問し、その場で商品を見せて売り込む仕事のこと。この日は、ネックレスや指輪など宝飾品を持っていきます。

(販売員)
「今月から取り寄せ始めた新しい商品。レオ・ファーストライトというダイヤモンド」

この日の目玉は、特別なカットが施され、美しい七色の輝きが特徴のダイヤ。重さは3カラットで、価格はなんと5000万円!店では簡単には売れない、外商ならではの商品です。

(新人外商員・中野歩海さん)
「心臓が飛び出そうなくらい緊張しています」

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