土俵の上で激しくぶつかり合う女性たち。4月7日、大阪府堺市で開かれたのは『女子相撲』の全国大会です。この大会に挑戦した一人の大学生に密着しました。

相撲部のない大学へ進学も…1人で相撲部を立ち上げ

 神戸市北区にある神戸親和大学。授業を受けているのは大学4年生の古瀬愛恵さん(21)です。古瀬さんが授業の合間に取り組んでいること。女子相撲部の主将を務めているのです。

 (古瀬さん)「相撲は他のスポーツと違って、本当に一瞬で決まるスポーツじゃないですか。それが本当に相撲の一番面白いところだと私は思っていて」

 長野県出身の古瀬さんは、小学1年生の時に参加した地域の子ども相撲大会をきっかけに相撲に魅了され、高校は鳥取県にある相撲の強豪校に入学。全国大会でも上位に入賞しました。しかし、卒業後に選んだのは当時は相撲部がなかった神戸親和大学でした。

 (古瀬さん)「中学校の保健体育の先生になりたくて、相撲と資格の勉強が両立できると思って」

 相撲を通して学んだことを子どもたちに教えたいと考え、教員免許取得の支援が手厚い神戸親和大学に進学。

 一方で、相撲への想いも捨てきれず、1人で相撲部を立ち上げました。高校の後輩だった長門美咲さん(20)と田村仁愛さん(19)も神戸親和大学に入学したため、今では部員は3人に増えました。

 (長門美咲さん)「(古瀬さんは)相談に乗ってもらうなど頼りになる先輩です」

 (田村仁愛さん)「練習でシーンとしていたら、やろうよって盛り上げてくれます」

土俵なし、指導者いない…アイデアで『土俵なくても勝てる練習』

 しかし、課題もあります。土俵がないため剣道場などを使って練習していて、専門の指導者もいません。

 (古瀬さん)「土俵の円をロープで囲います。雨が降って外でできない日は(室内で)ロープで代用したり、外でする場合は棒で円を描いてやっています」

 練習メニューは3人で考えます。この日に取り出したのは跳び箱です。

 (古瀬さん)「(相手に)すばやく当たる練習で、段をつけることによってスピードが増すので」

 跳び箱を使った練習方法は瞬発力を鍛えるためのもの。

 ほかにも体幹などを鍛えるトレーニングをしたり、取り組みの様子をスマートフォンで撮影したりして、『土俵がなくても勝てる練習方法』を実践しています。

 (古瀬さん)「土俵がない分、いろんなトレーニングを取り入れて、そのトレーニングが相撲にどうつながるかというのを考えながら練習しています」

 そんな古瀬さんたちが見据えるのは『国際女子相撲選抜堺大会』。全国の中学生から社会人の実力者、約100人が集まる大会です。体重制限なし。3人1組の団体戦での優勝を目指します。

 (古瀬さん)「神戸親和大学女子相撲部の団体戦の最高順位が準優勝で終わっているので、今年こそ優勝して、気持ちよく一年をスタートできるようにしたいです」

母校の恩師の下で5日間の合宿 課題は「攻める姿勢」

 大会まで約1週間と迫った4月1日、古瀬さんたちの姿は鳥取県にありました。着いたのは母校の鳥取城北高校。第73代横綱の照ノ富士など多くの有名力士を輩出した高校相撲界の名門です。

 土俵の感触を確かめ、高校時代の恩師からの指導を受けるために来た古瀬さんたち。久しぶりの土俵に練習にもより気合いが入ります。

 しかし、相撲を取ると、恩師から厳しい指導が。

 (鳥取城北高校女子相撲部・顧問 須藤愛先生)「しょうもない相撲とって、お前たち2人ともずっと守ってばかり」

 古瀬さんたちは自分から攻撃をしかけられていないことを指摘されました。

 (須藤先生)「遅い、遅い、2人とも遅い。前に出ながら、前に出ながら」

 5日間に及んだ合宿。攻める姿勢を意識して練習を繰り返しました。

 (古瀬さん)「どこで技を決めたりとか、感覚がやっぱり土俵があることによってつかめるので、良い確認ができました。相手の様子をうかがってやってしまうことが多々あるので、自分の相撲に早くもっていけるようにすることが神戸に帰ってからの課題」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。