東京都杉並区で昨年12月、歩いていた母子2人を車ではねて死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪に問われた元整備士の漆原宏太被告(51)は27日、東京地裁での初公判で「間違いありません」と起訴内容を認めた。検察側は禁錮5年を求刑し、弁護側は執行猶予を求めて即日結審した。判決は7月19日。

◆禁錮5年求刑「遺族に強い精神的苦痛」

 検察側は冒頭陳述で、被告は勤務していた自動車整備工場で車検中の車を試運転で後退させ、ブレーキを踏もうとした際、誤ってアクセルを踏み、歩道に飛び出したと明らかにした。論告で「被害者に落ち度はなく、遺族に強い精神的苦痛を与えた」と指摘した。  弁護側は「被告は深く反省している」などとして実刑回避を求めた。漆原被告は最終意見陳述で「2人を死亡させたことを大変申し訳なく思っている」と述べ、頭を下げた。  起訴状によると、昨年12月26日午後5時5分ごろ、自動車整備工場から車を後退させて車道に出ようとした際、誤ってアクセルを踏み、歩道を歩いていたイラストレーター杉本千尋さん=当時(43)=と娘で小学1年の凪さん=同(6)=をはね、死亡させたとされる。   ◇  ◇

◆「安全な道を」広い歩道を選んだのに

 「妻と娘がいた当時の温かい空気のようなものが、永遠に失われてしまった」。漆原宏太被告の初公判では、亡くなった杉本千尋さんの夫が胸の内をつづった書面を、夫の代理人弁護士が読み上げた。

東京地裁が入る裁判所合同庁舎

 事故は、夫が千尋さん、三女の凪さん、次女と一緒に神社にお参りし、お守りを買った帰り道で起きた。「できるだけ安全な道を通ろう」と広い歩道を選んだが、自分の前を歩いていた妻と三女が飛び出してきた車に一瞬で命を奪われた。  「今もさみしさやむなしさに襲われる」としつつ、「私たちのこれからの日々を丁寧に過ごしたい」と前を向こうとしている。

◆会社が保険未加入だったことに怒り

 被告には「悔しさや残念な気持ちはあるが、恨みはない。人は間違う生きもの。起こしたことに向き合い、罪を償って」と求めた。  一方、被告と勤務先の会社が、整備業者らを対象にする保険に未加入だったと分かり、憤りも吐露した。「整備士や会社は必ず保険に入り、業界団体も備えてほしい。今回の事故がその気づきになれば幸いです」(中山岳) 

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