切り傷などから感染し、発症すると筋肉周辺が壊死してしまう「劇症型溶連菌」について、いま全国で感染が拡大しています。専門家は「経験したことのない位の激しい痛みがある場合には、医療機関の受診が必要」と注意を呼びかけています。

感染拡大「劇症型溶連菌」

国立感染症研究所によりますと、今年1月から6月2日までに全国で報告された劇症型溶連菌の患者数は977人。

現在の方法で調査を始めた1999年以降で最多だった去年1年間の941人を今年は半年余りで上回っています。

感染症に詳しい東北医科薬科大学の遠藤史郎教授によりますと、子どもに多く見られる溶連菌が劇症型溶連菌を引き起こす場合があるといいます。

東北医科薬科大学 遠藤史郎教授:
「小学生などのお子さんたちがのど痛いっと言った時の原因となる菌なのですが、その同じ菌が年齢問わず、何か傷口があった時にその傷口から溶連菌が入ってしまい、悪さをして、その部位が壊死していくという病態が、劇症型溶連菌感染症というものになる」

この劇症型、通常の溶連菌との症状の違いやその特徴は?

「人食いバクテリア」は致死率30%

東北医科薬科大学 遠藤史郎教授:
「耐えられないくらいの痛みがあって、それと同時に熱が出たりとか、体がとってもだるくて具合が悪いというような状況になる。痛かった部分が壊死していく、とても進行が速い病気。別名『人食いバクテリア』と呼ばれている」

最悪の場合、死に至ることもあるといいます。

東北医科薬科大学 遠藤史郎教授:
「壊死するとそこからいろいろな物質がでるので、最終的には心臓、呼吸が止まるという状況になる。大体致死率は30%くらいと言われている」

劇症型溶連菌の主な感染経路は手足の切り傷やすり傷などです。ただ、傷が見つかっていない症例もあり、人同士が濃厚に接触する場面で感染することもあるといいます。

感染拡大の一因に新型コロナ5類移行も?

遠藤教授は、新型コロナの5類移行も感染拡大の一因なのではと指摘します。

東北医科薬科大学 遠藤史郎教授:
「人と人の接触が増えると溶連菌感染は増える傾向があるので、コロナ前の状況に戻ってきたことを考えると、その部分も少し(劇症型)が増えているところに関与している気もする」

では、予防や感染が疑われる時はどうすれば良いのでしょうか。

東北医科薬科大学 遠藤史郎教授:
「けがをしたときにそのまま放置しておかない。自分たちで水道水で洗ったりきれいにして、可能な範囲で、自分たちでできる消毒を行うことが大切。いつもこれくらいの傷なら治るのに、ものすごく痛い、今まで経験したことがないくらい痛いということがあれば、かかりつけの先生に相談するなり、医療機関に一度聞いてみることが大切」

取材した東北医科薬科大学の遠藤史郎教授によりますと、通常の溶連菌が劇症型になるメカニズムについては詳しいことはまだ分かっていないということです。国立感染症研究所によりますと、宮城県内の感染者数について、去年1年間で15人だったのに対し、今年は6月2日現在ですでに11人となっています。

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