5月、大阪から1人の詩人が平和公園を訪れ、自らが書いた詩を配りながら平和の大切さを訴えました。詩のタイトルは「8月6日」ー。実はこの詩は13年前、ある場所で披露された特別な詩でした。

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詩人 髙木いさおさん(大阪在住・70)
「すみません僕、詩人で平和のための詩を昨日から4日間、ここで配っているんです」

道行く観光客に声をかける大阪の詩人、髙木いさおさん。5月、4日間の日程で広島市を訪れ、自作の詩を手渡しました。

神奈川県から訪れた人
「外国の方もたくさんいらっしゃっているし、本当にいろんな方に知っていただきたいし、こういう(詩を配る)活動は、本当に素晴らしいと思います」
高木さん
「ぜひ自分のできることでいいので、何かを初めて下さい」
神奈川県から訪れた人
「ありがとうございます。じっくり読ませていただきます」

手渡したのは、自作の原爆詩「8月6日」など4つの作品と、自らが撮影した原爆ドームのポストカード。「原爆を忘れないで」「平和のためにできることから始めよう」と語りかけました。

詩人 髙木いさおさん(70)
「僕らは自分で気を付けないと流されて忘れていく、そういう戦争・原爆の非体験者。だからこそ忘れてはいけない。そういうことを肝に命じないと平和な状態を守れないし、戦争へ突き進む」

~2011年8月6日 放送~
RCCアナウンサー
「8月6日のきょう、広島では53年ぶりに開催されたプロ野球公式戦…」

2011年8月6日。広島カープの試合前に、俳優の斉藤とも子さんが髙木さんの詩を朗読し、全国放送されました。

~2011年8月6日 放送~
朗読/俳優 斉藤とも子さん朗読(被爆ピアノ演奏/萩原麻未さん)

8月6日
(作・髙木いさお)

忘れてはいけないことは
決して忘れてはいけない

8月6日がやって来たら
「忘れてはいけない!」と声に出そう

8月6日がやって来たら
1945年に生まれていなくても
「忘れてはいけない!」と声に出そう

8月6日じゃなくても
戦争の話が出てきたら
「忘れてはいけない!」と声に出そう

8月6日じゃないし
戦争の話も出ていないけど
生命いのちのことを考えるときは
「忘れてはいけない!」と声に出そう

そして
生きたいのに死んでいった
沢山たくさん沢山の人たちのことを思いながら
生きていることの意味を考えよう

知り合いにも広げてもらおうと、マツダスタジアム3万人の来場者に、詩が印刷されたポストカードも配られました。

詩人 髙木いさおさん
「いつ明日がヒロシマのような被害に遭うか分からない。そういう危なっかしい世界なのに、みんな平然と生きている。そのことをやっぱり他の人よりも日本は考えないといけないし、日本の他の地域よりも広島は考えないといけないと僕は思っているんです」

高木さんの母親は尾道出身。父親は、陸軍の部隊に所属し、原爆投下後の広島で被爆者の救護にあたりました。子どもの頃から戦争や原爆を身近に感じてきました。

詩を書き始めたのは9歳のとき。以来、61年間反戦・平和だけでなく、恋愛や虐待・いじめ防止などをテーマに詩を書き続けています。

これまでに出版した詩集は11冊。写真も高木さんの作品です。

「原爆を忘れないように」と詩集の発行日は「8月6日」にしています。自らも父親になってからは子どもたちのために詩を書くようになったといいます。

詩人 髙木いさおさん
「子どもが毎日笑顔で暮らせる社会を作りたいと思って詩を書いている。愛に溢れた世界で育ってほしいから。そういう世界で育った子は人を殺したり傷つけたりすることなど思いつきもしないような、優しい子に育つから」

ウクライナ侵攻やガザ地区での戦闘が長期化し、増え続ける犠牲者。広島を訪れる前、ホロコーストを経験したイスラエルに向けて新たな詩を書きました。

イスラエルの母たちへ、そして父たちへ(※一部抜粋)
(作・髙木いさお)

イスラエルの母たち、そして父たちは
即時停戦を叫ぶべきです

たった一人でも
子どもを殺してはいけないのです

詩人 髙木いさおさん
「戦争の現場では普通の優しいお父さんが、普通の優しい息子が殺し合うわけでしょう。そんなことありえないでしょう。そんなことを許すなんて」

詩人 髙木いさおさん
「すみません。僕、平和の詩を配っている詩人の髙木いさおといいます」

1人で平和公園に立った4日間。目標の130人に詩を手渡し、たくさんの出会いもありました。

詩人 髙木いさおさん
「埼玉からいらっしゃって、こうやって偶然会えて詩を受けとってもらえて、感謝です」

埼玉県から訪れた人
「いままで広島に行ってなかったから行かなきゃと思ったのは、多分周りの社会情勢や世界情勢だと思います」

詩人 髙木いさおさん(大阪在住・70)
「詩というのは夢とか希望がなかったら書けないものだと思う。だから僕はどこかやっぱり人間を信じているし、詩というものをどこか信じている」

「詩の力」を信じて、高木さんは「8月6日」を伝え続けます。

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自ら詩を書き、詩集の発行日を8月6日にして、自らの詩を配布する、ものすごい行動力です。広島の私たちも何ができるのか考えなければいけませんね。髙木さんが詩を手渡した人の中には一緒に涙ぐんだり、20分程度語り合ったりした人もいたとのこと。今だからこそ「8月6日を忘れてはいけない!」と強く思います。

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