仙台市太白区で半世紀以上営業を続け5月、惜しまれながら閉店した駄菓子店「ハトヤ」。店を切り盛りしていた女性が新たな一歩を踏み出しました。
「だがしハトヤ」閉店
仙台市太白区長町フラワー通りにあった「だがしハトヤ」。
多くの人に惜しまれながら5月6日、50年余りの歴史に幕を下ろしました。店主の斉藤ノブ子さん(79)にとって生きがいだった場所です。閉店翌日には、店の後片付けを行う斉藤さんの姿がありました。
そして、5月24日、再び訪ねてみると、店には、何もなくなっていました。
斉藤ノブ子さん:
「がらんとした中で、自分の声が響いてとってもむなしいというか。物がない店というのは、こんなに寂しいものなんだなとつくづく思いました。ここが、私の人生の始まりから最後までの拠点だった。やっぱりここは、私にとっては最大の良いところですよ。ほっとしたという気持ちもあるし、これから毎日、何かしながら生きていくんだなって思っていますね」
「これは本当に最後…、ありがとうございました」そう言って、斉藤さんは店のシャッターを下ろしました。ハトヤの建物は、隣にある焼き肉店に売却されました。
斉藤さん、第二の人生は…
5月22日、斉藤さんの姿は仙台市内にありました。向かった先は青葉区一番町にある障害者福祉事業所「アート・インクルージョン」。アートをもとにしたグッズ販売、イベント開催など障害がある人たちに働ける場を提供しています。
実は、斉藤さん、この事務所からイベントで駄菓子店出店の手伝いを依頼されていました。
斉藤ノブ子さん:
「元ハトヤ、斉藤ノブ子です。よろしくお願いします」
この日は、打ち合わせ。イベントで駄菓子店のリーダーになるのが、たかピーさん(49)です。記憶や言語などの脳機能の一部に障害があります。
アート・インクルージョン たかピーさん:
「母方の叔父、叔母も駄菓子屋をやっていた。懐かしいなと思って、最初はハトヤに行っていた。ハトヤのおばちゃんを見ていたら、私も(駄菓子屋を)やってみたいと思うようになった」
たかピーさんはハトヤが好きで、斉藤さんの子どもに対する気持ちに共感し、その気持ちを引き継ぎたいという思いで駄菓子店の出店に至りました。
斉藤ノブ子さん:
「やっぱり、5月6日の閉店の日を迎えるにあたって、声がちょっと出なくなったり、だいぶ疲れたんですけど、もう全然今、アート・インクルージョンさんのお誘いを受けてからまた元気になっちゃって。第二の人生でやれるんだっていう気持ちですよ」
斉藤さんと相棒・たかピーさんがイベント出店
6月25日、仙台の中心部、青葉区一番町でのイベント当日。開店に向けての準備を斉藤さんは、たかピーさんと行っていました。
斉藤ノブ子さん:
「おかげさまでね、こうやって、また元の商売ができると思うとね。たかピーさん頑張ろうね」
たかピーさん:
「きょうは本当によろしくお願いいたします」
たかピーさん、今の気持ちは…。
たかピーさん:
「おばちゃんからの思いを受け継ぎながら頑張ります」
ハトヤのおばちゃん復活!
いよいよイベントの開幕です。ぶらんど~む一番町で開かれた「エーアイどんどこ市」。
障害の有無に関わらず、アートを楽しみながら交流を深める催しで、雑貨店、ベーグル店、工作体験コーナー、そして、たかピーさんの駄菓子店もあります。
斉藤さんが、親子に話しかけます。
斉藤ノブ子さん:
「この駄菓子、お母さん食べてたでしょ、昔」
お客さん:
「あっ、長町の?!」
斉藤ノブ子さん:
「ハトヤです。きょうはね、たかピーさんのお手伝いで、もうお店(ハトヤ)は終わっちゃったから、今度はここで第二の人生です」
店には、駄菓子だけでなくおもちゃも並びます。ぶにょぶにょしたおもちゃを、子どもに紹介する斉藤さんは、変わらないハトヤのおばちゃんです。
斉藤ノブ子さん:
「握るとぶにゅーと出てくるの、ほら」
子ども:
「うえー!」
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