やっかいな害虫の筆頭、とも言えるシロアリです。

【前編】では、シロアリの特性について、害虫駆除の専門家、東洋産業の大野竜徳さんに聞き、シロアリの天敵はアリだということが分かりました。

シロアリの天敵はアリ!シロアリは「ゴキブリ目」アリは「ハチ目」

ーシロアリの天敵はアリだったんですね!

(大野さん)
「シロアリの天敵は、同じように地面を這う生き物たちで、アリはシロアリにとって最悪の天敵です。名前はアリとシロアリでよく似た生き物のように見えますが、実は全然違う生き物です」(【画像①】はシロアリの「働きアリ」)

【画像①】働きアリ

(大野さん)
「シロアリはかつて、シロアリ目という分類でしたが、研究の結果、現在は『ゴキブリ目シロアリ科』になっています。ちなみにアリはハチ目アリ科です」

「シロアリは木材に含まれるセルロースを主食にする草食系ですが、シロアリの天敵のアリの多くは肉食系(または雑食)で、ほかの生き物を主食にしています」(【画像②】ヤマトシロアリの「兵隊アリ」)

【画像②】ヤマトシロアリの兵隊アリ

(大野さん)
「ときには、アリの集団に襲われて何万匹ものシロアリの巣が全滅なんていうこともアリがやってきたとき、ヤマトシロアリの兵隊(【画像②】)はトンネルの中ででかい頭をつっかえにしてほかの生き物が入ってこないようにふたのような役割をしています。敵が触れたら顎をガシガシして足止めする。その間に仲間が奥に逃げるのです」

シロアリ駆除にアリは有効?

ーヤマトシロアリの天敵がアリということは、アリを利用して駆除もできるのでしょうか。

(大野さん)
「うまくアリを利用して駆除ができればいいのですが、アリも言うことを聞いてくれるわけではないのですからね。家の中にシロアリが来ては困るから先にアリに巣を作ってもらう、ということになるでしょうか」

「でも、シロアリの天敵のアリも人にとっては害虫になってしまいます」

「例えば、野外でシロアリの巣の近くで見かけることがある『オオハリアリ』という種類の肉食系のアリがいますが、シロアリばかりを食べるというわけではなく、もっと他の大きな獲物や私たちの食べ残しなどを狙っていることも多いですし、近くにいても興味をあまり持ってくれずに別々の生活を送っていることもあります」

「何より、このオオハリアリ、名前の通り針を持っていて、ハチのようにヒトを刺してくることもあります。ちなみに、当たり前ですが刺されると痛いです」

「天敵を利用して害虫や害獣駆除、という考え方はかつて世界各国興味をもってやってきましたが、ほかの場所から天敵を連れてきて自然に任せたケースで成功した事例はほとんどなく、かえって変な問題を引き起こしたもののほうが多いです」

「農業などのコントロールが十分にできる範囲の天敵防除は有効なものが多く知られるようになりましたが、あくまで限定的。結論として、アリを使ってシロアリ駆除は現実的にはなかなかうまくいかないでしょうね」

コンクリート建築なら大丈夫??

ーコンクリート建築ならシロアリの被害をうけませんか?

(大野さん)
「コンクリート建築だと大丈夫か?というとリスクは低くなりますが、いないことはありません。ひび割れから上がってきたり、水漏れや水たまりがあって木があればマンションでも出ます」

ーえ!マンションでも油断できないのですね。

(大野さん)
「弊社にシロアリ専門のスタッフがいていろいろ話をするのですが、マンションでも低層階では時々相談をいただいています。高所は水がないせいもあり、あまり広がっているのを見たことはありません」

ーということは、水漏れや水たまりがないような状態にしておくことが大切ですね。

(大野さん)
「もちろん、そういうことができればいいですね。でも、みなさんのおうちの中、といっても例えば床下や壁の中、排水溝の流れていく先、たぶんそういったところは見えないですし、想像されることも難しい場所ですが、シロアリの被害はそういったところから広がってきます」

「床下換気扇や調湿材などを利用して乾燥に気を付ける、というのも一つの予防手段ですが、なかなかそこまでのところまで気は回らないですよね。シロアリたちも生きることに必死で、最初に何とか巣作りが始まったら、水があまりない場所でもトンネルを伸ばして水を採りに行ってなんとか生き残ろうとします」

「このトンネルを蟻道(ぎどう)と言いますが、ヤマトシロアリなどはこの蟻道を水採りや餌採りのためにせっせと伸ばします。もしおうちにこんな土でできたどこかにつながっている細いトンネルがあったら要注意です」

ーそんなところにあるトンネルを、見つけられる気がしません。

シロアリ対策の基本は「早期発見」

ー個人で予防するのは難しいということでしょうか。

(大野さん)
「100%個人で予防するのは難しいです。でも、シロアリの被害を広げないためには早期発見、早期駆除が理想です」

「シロアリは暗くて静かで、風通しが悪い、じめっとした場所が好きです、ということはそういうところができるだけないようにして、どうしてもそういうところができてしまうならそこが注意しないといけないポイントです」

「昔の人は『虫干し』をしていました。これから梅雨本番ですが、梅雨が明けた7月末~8月の晴れ続きのカラッとした日。ここで家の中の衣類や書籍を外に出してお日様に当てたり、湿気をとばしたりする、これで虫の被害を少なくしようとしていたんですね」

「現代でも時々こういうことをやって、家の中がすっきりすると、押し入れの奥や本棚の中などにシロアリの被害が広がっていたら気づくことができます」

「心配な場合は、早めに専門家に見てもらい、予防を行うのが一番でしょう。シロアリの被害はケースバイケース。実際にみなさんのおうちの状況を考えて、弱点や今すべきことを教えてくれるような信用できる専門業者にご相談ください」

「専門業者といってもどうやって探せばいいかわからないし、お金だってかかるかも…相談するのが心配、そんな時にはまずは公益社団法人日本シロアリ対策協会に相談していただくのもいいかと思います」

ヤマトシロアリの次はイエシロアリが飛ぶ!

(大野さん)
「だんだん気温が上がってきて、ヤマトシロアリの結婚飛行の時期は終わりに近づきますが、これから夏にかけてもっと厄介なイエシロアリ(【画像④】)の結婚飛行の時期を迎えます」

【画像③】翅アリの群飛「結婚飛行」

「シロアリなんて見たことないし、一生出会うことはない、そんな皆さんもひょっとしたらこれってシロアリだったのか!ということがあるかもしれません。少しでもご興味を持っていただけたら幸いです。虫なんて嫌いだ!知りたくもない!そんな方も、害虫対策の最初の一手は相手を知ることです」

【画像④】イエシロアリ

自らの体や財産を守るために知っておいて損はない話です。虫や生き物が好きな方も嫌いな方も奥深い生き物の世界に一歩踏み込んでみましょう!

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