“ザル法”という批判を受けながら、成立した改正政治資金規正法。その一方で、また新たに、岸田総理の”脱法パーティ”をめぐる疑惑が浮上しました。

さらに萩生田前政調会長の政治資金収支報告書に添付された領収書を入手。その検証から見えてきたこととは。

自民党・萩生田氏に“新疑惑” 還付金を現金保管と主張も“クレジット払いの矛盾”

一連の裏金事件の中心だった自民党の最大派閥・安倍派。

「5人衆」の一人、萩生田前政調会長は現職議員のなかで3番目に多い2700万円あまりの還付金を収支報告書に記載していなかったと公表した。

しかし、受けた処分は下から三番目に軽い「党の役職停止」。

萩生田氏は、派閥から受けた還付金をどう管理してきたのか。2024年1月の記者会見では…

自民党 萩生田光一 前政調会長
「ノルマ超過分の還付金については、パーティー開催日から2、3週間後に事務局から連絡があり、清和研(安倍派)事務所に担当者が取りに行き、現金で渡されていました。それを担当者が持ち帰り、自分の机の鍵付きの引き出しで保管しておりました」

「還付金は現金で保管していた」と主張する萩生田氏。

しかし、番組が情報公開請求で入手した一部の領収書には、現金ではなく銀行口座からの引き落としを意味する「クレジットカードにてお支払い」などと記されている。

その総額は、74万円あまり。

萩生田氏を政治資金規正法違反で刑事告発した神戸学院大学の上脇教授は…

神戸学院大学 上脇博之 教授
「はっきりとクレジットとなっていますよね。現金で管理していたということと明らかに矛盾します。これが1枚だけじゃない。ここもカードとなっています。どう考えても嘘の説明をして、その場しのぎの事をやろうとしたと分かる」

さらに上脇氏が指摘したのは、収支報告書が訂正された回数の多さだ。2021年分の収支報告書では、2022年5月から2024年5月にかけて8回もの訂正が行われている。

神戸学院大学 上脇博之 教授
「もうちょっと信じられないですね。僕が告発したら後から訂正とかね。正直申し上げて、不可解もいいところ。最初の訂正が真実じゃなかったというのは、これでもう明らか。告発が出てきて、慌ててまた訂正。私は説明責任を果たしてほしいと思いますね」

海外で相次ぐ不自然な支出 ワシントンで会合に出席も…同日にシドニーで支出の記録

さらに、政治資金収支報告書に領収書が添付されていない支出もある。すべて海外で支出されたもので、アメリカ、オーストラリア、タイなど、2020年から2022年の3年間で約291万円分にのぼる。

何に使っていたのか。例えば、2022年5月3日、約32万8000円を支払ったとするのはアメリカ・ワシントンのレストラン。

その約2週間後の5月21日には、タイ・バンコクのレストランで約3万8000円を支払ったという。

この期間、萩生田氏は経産大臣として国際会合などに出席するため、アメリカとタイを訪問していた。

しかし中には、実態と合わない記載も。5月5日に「会場費」として5万5272円を支払ったというワシントンの「Bookmarks(ブックマークス)」。

記載されている住所に向かうと…

ワシントン支局長 樫元照幸
「日本の記者です。ここの名前は何ですか?」

女性
「『最高裁 歴史協会』です」

そこは、近くにある連邦最高裁判所に関連するNPO団体で、「Bookmarks」という施設ではなかった。

では、「Bookmarks」とは何なのか。

NPO団体の女性
「裁判所にある売店で『Bookmark』を買ったのだと思います」

「Bookmark」とは、「しおり」のこと。最高裁にある売店でしおりを買ったのではないかとNPO団体のスタッフは推測する。

さらに不自然なのは、2022年7月29日の支出だ。アメリカ・ワシントンのバーで約6万6000円を使ったという。

この日、萩生田氏はワシントンで朝から日米の外務・経済閣僚による経済版「2プラス2」の会合に出席していた。

しかし、同じ日にオーストラリア・シドニーの「The Green House」で約19万円を支払ったとしている。遠く離れた2つの店をどのように使ったのだろうか。

「この店で一度に19万円も使った客はいない」

住所に行ってみると「The Green House」は公園の中のカフェだった。

シドニー通信員 飯島浩樹
「こちらがカフェで一番高いメニューです。チキンとポテトのランチボックスということなんですが、ランチの営業のみということで、値段が19ドル。これが一番高い19ドルということです」

このランチボックスとチキンラップサンドが最も高く、1つ1700円ほど。仮に19万円を使おうとすると、100個以上買わなければならない計算になる。

店主に取材すると、「この店で一度に19万円も使った客はいない」と話した。

もし、萩生田氏自身が2つの店を利用していたとしたら、29日の朝7時にシドニーのカフェに行き、すぐに移動したとしても「2プラス2」の会合には間に合わない。

領収書が添付されていない海外の支出について、萩生田氏は2024年1月、こう説明している。

自民党 萩生田光一 前政調会長
「各国政府首脳や議員に知己を得た関係で、文科大臣や経産大臣としての公務の間に、それらの方々と会う。こういう経費はもちろん役所から支出されないので、そういった会合費としても使用していた」

総務省によると、領収書は収支報告書にあわせて提出しなければならないことになっている。

神戸学院大学 上脇博之 教授
「領収書を徴収しないといけないのは義務になっているので、提出していなかったのは罪として、政治資金規正法違反ということで成立するとみている」

萩生田氏側は「『還付金の使途については収支報告書に計上しなくてよい』という間違った認識に基づき運用されていたため、領収書を貰わなかった」などと説明している。

岸田総理に“新疑惑” 祝う会の発起人は“政治資金パーティー”と認識

報道特集はこれまで、岸田総理の政治資金パーティーの問題についても報じてきた。

2022年の「内閣総理大臣就任を祝う会」。さらに11年前の「外務大臣就任を祝う会」。そして、今回、新たに別のパーティーについても疑惑が明らかになった。

2007年、岸田総理が初めて大臣に就任した際、広島市のホテルで1000人以上が出席した「内閣府特命担当大臣就任を祝う会」。主催したのは、他の2回と同様に、地元有志が集まった任意団体だという。

これは番組が独自に入手した当時の案内状。2022年の「総理大臣就任を祝う会」の案内状と内容や形式がほぼ同じ。岸田総理を同じ言葉で称え、結びの挨拶も全く同じだ。

この「祝う会」の発起人の1人が、取材に応じた。

祝う会の発起人
「同期が大臣になるのに、自分だけなれない。勝手に悲観をしていた、そういう話をしていた。喜びが何倍も湧いてということでしょう。地元から出て初めて(大臣に)なられたんだから、拍手して盛り上がった」

政治家は政治資金パーティーを開催した場合、収支を政治資金収支報告書に記載しなければならない。

だが、「祝う会」は“任意団体”としており、収入が1000万円未満なら報告する義務はない。

発起人には「祝う会の主催者」が任意団体の主催だという認識はなく、政治家による政治資金パーティーだと考えていた。

祝う会の発起人
「みんな、政治資金(パーティー)だと思っています。あれが政治資金(パーティー)じゃなかったら、何が政治資金(パーティー)か」

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