ソースかつ丼で知られる駒ヶ根市。
今、この駒ヶ根市にある企業の高い技術力が生み出した「美容」に関するグッズが、女優や有名タレントのSNSへの投稿などをきっかけに、全国から注目されています。


キラキラと輝くのは、髪をとかすための「くし」。


その名も「LOVECHROME(ラブクロム)」。

SNSなどで評判を呼び、女性を中心に全国から人気を集めています。

作っているのは、駒ヶ根市の塚田理研工業。

人気のくしを取材するため訪ねてみると…。

塚田理研工業 下島聡社長:
「これがクシにめっきをかけたラブクロムという商品になります」
櫛メーカーということですか?
「いいえ。実はプラスチックの上に本物の純金やクロムという金属をめっきしたプラスチックめっきという技術を使っておりまして、当社はプラスチックめっき専門の製造業です」

人気のクシを作っているのは、めっき加工を本業とする会社です。

61年前の1963年に創業し、1970年代の婦人服のボタンに始まり、80年代のオーディオ・ラジカセや、90年代のカメラなど、時代によって主力商品を変えながら、様々ななものへのめっき技術を確立。

高級車・レクサスの内装も手掛け、高い技術力と品質が、世界から高く評価されています。


塚田理研工業 下島聡社長:
「我々のめっき技術は、何1000分の1ミリというミクロの世界をコントロールして、薄く表面に金属を析出させる技術ですので、非常にハイテクな技術を持って加工を行っています」

めっき加工会社が作る人気のくし。

製造工程を見せてもらいました。



塚田理研工業 北原大樹さん:
「この工程は、プラスチックにめっきをする前の製品を治具(ジグ)に引っ掛ける工程です」
「当社のプラスチックへのめっきは非常に難易度が高いものになっています」

ここが、くしも製造しているプラスチックメッキの製造ラインです。

この会社が手がける様々な製品は、機械で運ばれめっき液に沈められていきます。

めっき液には、銅やクロム、ニッケルといった金属が溶け込んでいます。

この工程を経て、キラキラと光沢を帯びた製品として仕上がります。

液につけるだけに見えますが…。


塚田理研工業 北原大樹さん:
「プラスチックめっき特有の“化学反応”を起こしてめっきをつけていきます。その際に気温や湿度、めっき液の浸かり方で、反応性による違いがあって不良になりやすいので、めっき業界では『(プラスチック)めっきは生ものだ』と言われるように、非常に難易度が高いメッキとなっております」

金属素材などへの加工は、溶液の中にめっき液の素となる材料と、めっきしたい製品を入れて、電気を流した時に生じる「電気分解」を利用して表面を金属で覆います。

しかし、プラスチックには電気が流れません。

そこで使われるのが「化学反応」です。

めっきの素となる金属が溶けた液に、めっき加工したい製品(プラスチック)と薬品(触媒)を入れて「化学反応」を起こし加工を施します。

ただ、気温や湿度などの影響を受けやすく、高い技術力が求められます。

これこそが「プラスチックめっきは生もの」といわれる所以(ゆえん)です。

塚田理研工業は、この難易度の高い加工方法に50年以上前から取り組みはじめ、業界でいち早く量産技術を確立させました。

こうして高い技術力で作られる人気のくし・ラブクロム。


価格は4000円台から3万円を超えるものまで、30種以上ものラインナップを展開しています。



なぜ、くしに目をつけたのでしょうか?

下島聡社長:
「弟の奥様が出産をした時に髪の毛がパサついてしまうという悩みを抱えていた時に、たまたま社内で『めっきをくしにしてどうなの?』って試した試作品があって、『こんな派手なくしは売れないよね』って感覚だったんですけど、それを実際に手に取って使ってみたら『やたら髪の毛がスムーズになるぞ』となって作ってきたのがスタートです」


めっき加工を施すことで、表面の摩擦が抑えられくし通りもなめらかに。

さらに、静電気もおきにくいということです。

人気のくしは、ある効果をもたらしています。

訪ねたのは、駒ケ根市役所で、ふるさと納税のとりまとめを担当している企画振興課。

市では2023年度、ふるさと納税の寄付金額が、およそ7億4200万円で過去最高を記録!


そのうち「ラブクロム」が4割ほどの2億9000万円を占めていて、民間のふるさと納税サイトでは、返礼品ランキングの上位に名を連ねています。

市企画振興課 氣賀澤和也さん:
「このラブクロムシリーズは、おととしの11月から(返礼品に)追加されて、それによって年々ふるさと納税の実績も伸びていて、駒ヶ根市の企業の技術力や発想力、アイデアによって市民の生活が助けられている状況なので、非常にありがたいと感じています」

ふるさと納税の増加にも貢献!

この状況について改めて下島社長に話を聞きました。


塚田理研工業 下島聡社長:
「こんなに反響があると僕らも思っていなかったので、ふるさと納税という形で貢献できたことはすごくうれしいですし、水のきれいさと空気のきれいさ、僕らのふるさとの自然の恩恵のおかげで、我々はこの技術を培えていると思っているので、メイドイン駒ヶ根が世界で通用できる商品を作っていけるのではないかと思う」

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