5月に長野市の住宅が全焼した火災で、高齢の住民を救助した宅配業者の男性が表彰されました。
役立ったのは消防団員としての経験でした。
消防車のサイレンが響き渡る住宅地。
火事の通報があったのは、この映像が撮影されたわずか13分前。
その時点で、2階の部屋には89歳の男性が取り残されていました。
警察官:
「下がってください、下がってください」
宮入キャスター:
「平柴の火災現場です。ご覧のように大きな炎が上がっています。黒い煙も立ち上っています」
5月17日の正午前。
長野市平柴(ひらしば)にある住宅から火が出て、建物が激しい炎に包まれました。
発見した女性:
「もうおじちゃんも足悪いっていうの知ってたから、おじちゃん助けなきゃと思って、まず行ったら、そしたら佐川急便の人が来て、ちょうど配達に来たのかな」
「感謝状、酒井進さま」
男性を救助したのは、宅配業者の酒井進(さかい・すすむ)さん62歳。
14日、長野市消防局から感謝状が贈られました。
酒井さん:
「すべて歯車がうまく組み合わさった状態でできたので、5分くらいの間ですべて終わってはいるんですが、上の方から(車で)下りてきて煙が見えたんですけども、火事の煙と普通の煙と違いまして、火事の煙って黒い煙が真っすぐに上がります。その煙が見えたので、火事だなっていう判断がついて、すぐ近くのお宅に先に配達に行く予定でしたが、変更して火事の現場のお宅へ直行しました」
この日は、東から西に風が吹いていて、酒井さんはまず、近所に避難を呼びかけました。
酒井さん:
「風下の方へ向かって避難を勧告しながら、戻ってきたら奥さんが(外出先から)戻られて、ご主人が中にいると」
火は外のガレージの辺りから出ていて、まだ救助は間に合うと判断。
日頃の配達の仕事の経験で、男性がいるとみられる2階へと直行しました。
酒井さん:
「いつも2階からお父さんが下りてくるのは分かっていたので、躊躇なく2階に駆け上がりまして、下の30センチくらいのところにしか空気がなかったんですけども、そばにあるタオルを渡して煙を吸わないように」
その後、腰が悪い男性を背負って、階段を下りたといいます。
酒井さん:
「よく言われる火事場のくそ力というのはそこにあるのかなと思いました。命の恩人だなんてことをおっしゃっていただけたので本当に無事でよかった」
わずかな時間での的確な判断と行動。
救助には危険が伴いますが、酒井さんは過去に20年近く消防団員を務め、知識と経験を持ち合わせていました。
長野市消防局・西沢尚(にしざわ・ひろし)消防長:
「人命救助というのはタイミングが非常に大事だが、躊躇なく、タイミングを逃すことなく、救出活動に当たられた。長年の消防団としての経験が非常に生きていたのではないか」
酒井さん:
「私ども配達している側からしたら大事なお客様なので、大事なお客様を守るという部分では、行き過ぎたと言われてしまうかもしれないですけれども、自分でできる範囲で自分のできることをやっただけの結果だと思っております」
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