北海道を代表する海の幸、「ウニ」がピンチです。
午前5時、次々と港を出ていくのは「ウニ漁」の船です。小樽市では、5月15日にウニ漁が解禁されました。しかし、今年は…。
漁師
「バフンはゼロ」
エゾバフンウニが危機的な不漁に見舞われているんです。値段も、市場に並ぶ7560円という値札の通り、高騰しています。
鮮魚店
「買う人はかなりきついと思う」
ウニは食べられなくなってしまうのか?海の異変を、もうひとホリします。
小樽の高島漁港に、ウニ漁の船が帰ってきました。しかし、かごを見てみると…。
ウニ漁師 成田学さん
「バフンはダメだ。まるっきりいない」
これまで、高値がつくエゾバフンウニをメインにとってきた成田さんですが、今はキタムラサキウニしか見当たらないといいます。
ウニ漁師 成田学さん
「いないものを追いかけてもどうしようもない、いればラッキーだけど、それすらない」
小樽では、ウニ漁解禁から1カ月ほど経ちますが、エゾバフンウニの水揚げは、例年の1割ほどで、競り値も1~2割高くなっています。
市場関係者
「小樽のバフンウニは有名なので需要あるけど、数が絶対的に取れてない」
観光客にも人気の三角市場。鮮魚店がずらりと並びますが、エゾバフンウニを扱う店はごくわずかです
鮮魚店
「もうけはないですね。小樽の時期のものをPRしたいから用意している。買う人はかなりきついと思う、仕入れる側もかなりきつい」
ウニ専門店世壱屋では、小樽をはじめ道内各地の新鮮なウニを提供しています。
森田絹子キャスター
「いただきます。甘みがしっかりあって、とても濃厚です。磯の香りも口いっぱいに広がります」
こちらは道内の5つの産地のウニを1度に楽しめる看板メニュー、「5大うに食べ比べ丼」(7150円)です。
通常は道内産のエゾバフンウニを使いますが、まれに仕入れができず、外国産を使わざるを得ない時があるといいます。
世壱屋 柏木大夢常務
「仕入れ値を考えると、今すぐにでも値段を上げないといけない状況ではあるんですが、なんとかギリギリまでは値段は変えずに提供させていただきたい」
「ウニの不漁」の原因について、専門家は…。
筑波大学生命環境系 下田臨海実験センター 谷口(やぐち)俊介准教授
「(不漁の原因は)海の環境が変わっているのが一番可能性は高い。去年の夏は北海道もすごく水温が高かったので、そうなるとエゾバフンウニは(海水温が)冷たいほうがやっぱり育ちはいいんです」
谷口准教授は、育てる漁業の必要性を訴えています。
筑波大学 生命環境系 谷口俊介准教授
「(何もしなければ食べられなくなる?)もう北海道のウニなんか速攻なくなってたと思います。やっぱり育てるっていうほうを強く頑張る」
そのための取り組みが道内で行われています。
泊村栽培漁業センター 前川誠場長
「こちらの水槽では生後9日目になるエゾバフンウニの浮遊幼生を飼育しております」
水中に漂う小さな粒が、エゾバフンウニの「赤ちゃん」です。泊村にある栽培漁業センターでは、人工授精で生まれたウニを種苗になるまで育てています。
泊村栽培漁業センター 前川誠場長
「こちらが生後1年になるエゾバフンウニの種苗になります。大きさは10ミリで、(毎年)200万個ほど出荷しています」
ウニの種苗は、小樽など道内各地で放流されます。水揚げできる大きさに成長するまで2年以上かかりますが、近年の海水温の上昇で、生育状況は厳しくなっているとみています。
泊村栽培漁業センター 前川誠場長
「種苗を放流しなければバフンウニは漁獲できないと言われているぐらいの資源の厳しさ。高水温に負けないような元気な種苗を作るよう心がけています」
今、私たちがウニを食べられている陰には、こういう取り組みがあったんですね。
エゾバフンウニの種苗の育成と放流は、およそ50年前から取り組み始めました。今では泊村をはじめ、道内各地に育成の施設があり、年間であわせて4000万近い種苗を育てています。
今年のバフンウニ、小樽以外ではどうなのか?
小樽と同様、日本海側では漁期に入っていますが、函館漁協では「ほとんどとれておらず、去年の3%くらい」ということです。また、礼文島の漁協は「異常事態と言っていい不漁」だと話しています。
一方、3年前に赤潮の被害があった道東方面では、厚岸漁協によりますと、赤潮被害で9割のウニが死に、徐々に回復しているものの、まだ影響が残っているそうです。
今年のウニ漁は10月から始まりますが心配です。海を取り巻く環境は著しく変化している中、獲れる魚介類を大切に食べていきたいと思います。
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