国が難病に指定している「拡張型心筋症」。心臓が大きくなって収縮できなくなり、全身に血液を送れなくなる病気で、2万人に1人がかかるとも言われています。

この病気と闘いながら湧水町で暮らす中学生がいます。笑顔を絶やさず懸命に生きる日常を取材しました。

(丸田響耶くん)「入院してるときは外出られなかったので、外の空気が吸えるといい」

丸田響耶さん14歳です。5か月間の入院生活を終えて、家族と久しぶりに外を歩きました。

5人きょうだいの次男で、いつも笑顔を絶やさない響耶さん。3年前、小学6年生の時に採血検査で拡張型心筋症とわかりました。一般的に遺伝子の異常や炎症が原因ともいわれていますが、まだ、わかっていないことが多い病気です。

好きだった野球をやめて、薬の服用を続けていましたが、去年9月に容体が急変。福岡の九州大学病院に入院しました。

(母・美夏さん)「きょうの響耶君です、頑張れ」

去年12月、補助人工心臓を植え込む手術を受けました。LVADと呼ばれる機械を心臓に取りつけて、送り出せなくなった血液を人工血管を通して大動脈に送る装置です。入院生活は5か月にわたり、14歳の誕生日は病院で迎えました。

(丸田響耶さん)「補助人工心臓をつけていても、元気になれることは知ってほしい」

LVADは、おなかから外へ出したコードにバッテリーをつないで動かします。体に埋め込まれた機械の重さは1キロ、肩掛けのバッグに収納した機械やバッテリーは3キロほどです。

2万人に1人が発症するとされる拡張型心筋症。手術代はおよそ5000万円で、全額、保険適用されました。

(記者)「負担になっていることは?」
(丸田響耶さん)「お風呂ですかね。入浴前にカバーしないといけない(チューブ)侵入部をガーゼで。湯船に浸かってはいけない、シャワーのみ」

母親の美夏さんです。入院した5か月間、仕事を休んで付き添いました。

(母・美夏さん)「優秀な機械を入れてもらうことができたが、やはり機械なので、不具合だったり、何も(問題)ないよねっていう、今も不安の方が大きい」

中学校は自宅から車で10分の場所です。響耶さんを気遣って、友だちがかばんや荷物を教室まで運んでくれます。

手術後の響耶さんをスムーズに迎えようと、担任の山内先生は医師から緊急時の対応について説明を受け、生徒たちに伝えました。

(栗野中学校 山内充教諭)「卒業一緒に迎えたいなって、ただそれだけ。響耶君の生きる姿に子どもたちが力をもらったところの方が大きい」

席は教室の端の一番後ろ。体の左側にある心臓と機械を結ぶコードがまわりと接触しないよう、席の左とうしろにはスペースがあります。

(同級生)「ここだからみんながよく見えて、(響耶さんは)みんなのことをよく分かっている」

(同級生)「一緒にしゃべっていて楽しいし、優しい」

(同級生)「運動はできないけど、できる限りのことを一緒にしてあげたい」

手術後の治療を行っている鹿児島大学病院の小島聡子助教です。拡張型心筋症は、薬で進行が抑えられなくなり条件が満たされた場合のみ心臓移植手術が受けられます。(条件:65歳未満のみ、悪性腫瘍=がんがないなど)

しかし、ドナーが見つかるまでに5年ほどかかることから、待機期間を乗り越えるために補助人工心臓の手術を受ける人がほとんどです。

(鹿児島大学病院・心臓血管内科 小島聡子助教)「(LVADを入れても)全てがいいというわけではなく、感染症や、機械は体にとって異物なので血栓ができやすい。(響耶さんの)気持ちに寄り添うのはもちろん、合併症なく移植まで問題ない状態でたどりつかせたい」

全国で1年間に行われた心臓移植手術の数です。2019年の84件からコロナの影響で減少しましたが、去年はこれまでで最多の115件でした。

しかし、日本臓器移植ネットワークによりますと、心臓移植を希望している人は国内で848人。鹿児島大学病院では響耶さんを含む4人が移植手術を待っていて、ドナーが少ないのが現状です。

家族は一刻も早い移植手術を希望していますが、同時に複雑な思いも抱いています。

(父親・丸田愛児さん)「早く移植してもらいたいが、移植するには誰かの命をいただくので、ちょっと複雑なところはある」

(記者)「夢はありますか?」
(丸田響耶さん)「古民家カフェ作りたいなって思っている」

自宅から8キロ離れた伊佐市菱刈の高台に、3年前に亡くなった曽祖母の家があります。古民家カフェ巡りが好きだという響耶さんの夢は、霧島山を望むこの場所に店を開くことです。

(記者)「お店のイメージあります?」
(丸田響耶さん)「まだわからないけど、20歳ぐらいになったらやりたいなとは思っている」

目標の20歳まであと6年。響耶さんは難病と向き合いながら、夢に向かって今を生きています。

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