屋久島では山に神が住むと古くから信じられてきました。先月、山頂にまつる神に集落の繁栄を祈る伝統行事「岳参り」が行われました。

午前3時半。宮之浦集落にある益救神社に、白装束に竹笠を被った住民らの姿がありました。参拝のあと松明に火を灯し、近くの海岸へ。体を清め、竹筒に浜砂を詰め込みます。山の神に捧げるためです。

岳参りは500年の歴史があるといわれています。島の各集落は、それぞれゆかりのある山の頂に、神を祀っています。

宮之浦集落の人たちが信仰の対象としているのは、島の中心部にある宮之浦岳。標高は1936メートル。九州で最も高い山です。

宮之浦集落では戦後一時、岳参りが途絶えていましたが、20年前に復活しました。

今回は節目の年。昔の岳参りにならって車は使わず、標高0メートルの海岸から宮之浦岳山頂まで全てを歩く「総歩き」をすることになりました。全行程50キロ。ほとんどが山。山中で一泊する、祈りの登山です。

午前7時。観光地として知られる白谷雲水峡から本格的な山道となりました。集落を代表して7人が登ります。屋久島の象徴でもある縄文杉に立ち寄りました。

(渡邉剣真さん)「出発してから縄文杉まで約10時間くらい」

海岸を出発してから12時間。午後4時、1日目の目的地、新高塚小屋に到着です。ここまで標高差1300メートル余りを登ってきました。

2日目、午前2時半。真っ暗な中、ヘッドライトの灯りを頼りに、再び登ります。歩き続けること、およそ3時間。雨風が吹き付けるなか、宮之浦岳山頂に到着しました。

山頂の祠に祀られた山の神にコメや酒、そして海岸で詰めてきた浜砂を捧げます。

岳参り復活から20年という節目。それを祝うかのように、満開のヤクシマシャクナゲが山を彩っていました。

集落に向けて長い下山が始まりました。小屋を出発して14時間。里の近くまで下りてきました。

ここは、神やもののけが住む山と、人が住む里との境界です。そして、出迎えた住民にシャクナゲの花を渡します。シャクナゲの花には山の精霊が宿るとされ、岳参りの時だけ採ることが許されています。

(渡邉剣真さん)「無事に終えられて嬉しく思ってます。集落の人達の発展と繁栄を祈ってくるいい機会」

山の神に感謝を伝え、集落の繁栄を願う「岳参り」。次は秋に行われます。

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