宮城県の港町、気仙沼市の四季折々の日常を描いた絵画展が、6日から始まりました。1年前、大阪から気仙沼に夫婦で移住したイラストレーターの男性が、毎日1枚ずつ描き続けた作品366点が展示されています。男性が毎日異なる表情を見せる海や人の温かさに触れた366日間とは。

「日常」を描き続けて366日目

イラストレーター 山本重也さん:
「気仙沼に引っ越してきて1年の最後の日なので、やっぱり港町を描きたいという思いでやってきたので、最後は港町の漁船だったり海を描こうかなと思って」

イラストレーター 山本重也さん

港町を描きたいと去年、気仙沼に移住したイラストレーター山本重也さん(60)です。5月28日、この日は、気仙沼に移り住んでちょうど1年の節目の日。海が間近にある「日常」を描き続けて366日目です。スマートフォンで写真を撮り、住居兼アトリエのパソコンに映し出してそれを見ながら描きます。

あいにくの雨ですが、雨の港をモチーフにした淡い水彩画は温もりがあり見る人の心を和ませます。

山本重也さん:
「歓声です。空気感を絵にするのを大事にしてるので、その時に感じた爽やかさ、暑いとか寒いとかを色彩に置き換えて」

山本さんが気仙沼に移住した理由

大阪出身の山本さんは、7年前に妻・朋子さんの実家がある仙台に移住。その後、港町を描きたいと去年5月に気仙沼に移り住みました。海のそばで四季の移ろいを感じながら表現しつづけた1年間でした。

山本重也さん:
「1周回ったなっていう安堵感って感じですね。僕の中では1月1日から12月31日まで、1点1点に日にちが付いているんですね。それが一つの作品だっていう捉え方をしているので」

心に残った風景を一日一枚描く「日常茶飯絵」を日課にして20年あまりが経ちました。初冬のある日。

海面から霧が立ち上る幻想的な光景が優しいタッチで描かれています。

山本重也さん:
「高台の海が見える部屋の意味っていうのは、気嵐をこの部屋から確認したいからだったんですよね。初冬に発生してたんですが、よく朝見にいってましたね」

見晴らしの良いパノラマビューの部屋をアトリエに構えた目的の1つが、気嵐だったという山本さん。気仙沼の初冬の風物詩「気嵐」を初めて目にしたときの心境を振り返ります。

山本重也さん:
「有名な芸能人に会ったみたいな、これが気嵐の本物か~。やっとみられたという感動がありましたね」

こちらは、初カツオの水揚げで活気づく港の様子を描いた1枚です。

山本重也さん:
「船がついて水揚げが始まるってときに、ちょうど太陽が出てきて日が差して、光に照らされながら水揚げの作業が始まるっていう、色彩的にもドラマチックな水揚げでした。人の数からしてもとっても活気があってみてて楽しくなるような」

山本さんの作風の原点は「成功体験」

1枚1枚積み重ねる山本さんの作風は、40年ほど前にさかのぼり、駆け出しの頃の成功体験が原点だといいます。

山本重也さん:
「21歳のときにプロのもとに入って絵を描き始めるんですね。そのとき、とにかく毎日練習なんですよ。プロのそばで毎日書くことで、うまくなる速度がぎゅんと上がった」

コンパクトなはがきサイズは、毎日続けるためのひと工夫です。

山本重也さん:
「まだまだ描き切れてない。描きたいって気持ちが尽きるまで描けるかなって」

夫婦で移り住んだ気仙沼での創作活動。一番そばで見守ってきた妻・朋子さんは山本さんの絵にポジティブな変化を感じています。

山本さんの妻・朋子さん

山本さんの妻・朋子さん:
「空が広かったりとか、海だったりとか、大きな漁船がよりダイナミックに描かれて色彩的な美しさがより分かるようになった」

描かれたのは「誇り」

気仙沼で初めて開く個展。地元の人にも来てもらおうと開催を知らせる中での人々の表情が印象に残りました。

妻・朋子さん:
「ポスターを配ると、やっぱり気仙沼っていいでしょっていう、ちょっと誇らしい顔をするんだよね。ここの街の人たちにとって、この絵がこの港と漁船が誇りなんだなっていうのがすごく分かったね。(震災後)だからこの町をもう一度作り直したし、守ろうとしてる人たちがいま頑張ってるんだっていう」

イラストレーター 山本重也さん:
「特別なことではなくて、きょうなんかでも、旅行に来て雨が降ってたらちょっとがっかりしますよね。でも、それにはそれの良さがある。その良さを導き出す視点を僕の絵で提案できているんじゃないかと」

イラストレーター 山本重也さん

晴天の日、嵐の日。人々で賑わう港、だれもいない港。様々な表情をみせる港町でこれからも描き続けます。

山本さんはプロのイラストレーターとして仕事をしながら1日1枚、気仙沼の風景を描き続けているということです。個展初日の6日は、来場者が途切れず人気を集めていたということです。気仙沼市内の方が多かったようですが、県外や、遠い所だと九州からの来場者もいたということです。山本さんの絵画展「気仙沼の小さな風景画366点」は、入場無料で6月16日まで、気仙沼市の男山本店で開かれています

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