若者の移住などを通じて、地域を「おしゃれ」に生まれ変わらせようという取り組みが、小諸市で進んでいます。
名付けて「おしゃれ田舎プロジェクト」。
その仕掛け人を取材しました。


ここ数年、市街地を中心にこだわりが詰まった店が次々とオープンする小諸市。

新規出店数はおよそ30に上ります。

仕掛け人の一人が、松本市出身の高野慎吾(たかのしんご)さん37歳。


この3月に、勤務していた小諸市役所をやめ、不動産業を始める準備を進めています。

高野慎吾さん:
「人口が減っていくという地域課題があって、それをカバーするためには移住者を増やすっていうのが必要だった」

移住希望者にとって魅力的な街づくりを進めるために、目指したのは空き店舗の解消です。

5年前に始めたのが「おしゃれ田舎プロジェクト」。

行政マンとして働きながら、商店街の役員やケーブルテレビの社員などの有志と民間団体を立ち上げました。

およそ20人のメンバーで空き店舗の情報を収集し、東京でセミナーを開くなど移住希望者を募集。

実際に物件を案内し、カフェや生花店、雑貨店など15以上の新規出店につなげました。

この日、案内していたのは、飲食店の開業を検討している土屋朱音(つちやあかね)さん。

紹介するのは、物件だけではありません。


先輩の移住者や、地元の人と積極的に引き合わせます。

高野慎吾さん:
「あなたがこのお店をこの場所に構えた時に、その周りにいる人はこういう人たちでというのを紹介してあげて、地域の人とつながって横のお店と連携しながら楽しくやるだとか、お金じゃなくて心の豊かさだとか、そっちの方に人生の時間を費やしたい人というのは、この小諸市と合うと思うので、物件と人を一緒に紹介していくっていうことをやっています」

プロジェクトを通じて神奈川から移住を決め、1年前にパン店の保時鳥(ほととぎす)を開店した平井保子(ひらいやすこ)さん。


平井保子さん:
「市役所行って、色々調べたりとかっていうよりも、町の雰囲気と人って、みんな一番に言うかも」
「移住仲間も見学に来た日に高野さんと歩いているだけで町の人が手を振ってくれて、会う人会う人につないでもらって、見学来た日だけでも相当知り合いができました」
「何もない状態から一人で来たので、どういうふうに人間関係作っていくのかなって思っていたし、でもなんかそんな不安も一瞬でなくなるくらい小諸にも馴染めたし、アッと言う間にお店として周知してもらえた。それはほんと、おしゃれ田舎プロジェクトのおかげだなと思っています」

平井さんが足しげく通う場所があります。


店の隣にある地域の交流拠点、与良館(よらかん)です。


地元の人:
「この子はすごく馴染むの早かったんだよね。もぐり込むのがすごい上手なんだよ」
平井さん:
「皆さんが可愛がってくださって」
地元の人:
「ああいうパンてないのここら辺に」
「そうみんなカンパーニュがよくわからなかった」
「高いんだよ1枚」
平井さん:
「高いんです。それは知ってます」
地元の人:
「それでも食べたいから」
「保子ちゃんみたいのが来てくれたのが、めちゃくちゃうれしいわ。活気を与えてくれるよね新しい人が来て。とってもそれはうれしいですよ。それが一番うれしいかな」
高野さん:
「受け入れ態勢が小諸市の人たちは許容範囲が広い。移住してくる人がお店を構えると、既存の店の人たちとのバランスつながりがうまくいかないと、どうしてもうまくいかない」

プロジェクトのメンバーの一人で、小諸駅前の商店街の会長を務める市川信行(いちかわのぶゆき)さん。

新幹線の駅を誘致できなかったことや、郊外の大型店への客の流出などで、衰退の危機を感じていた街に、プロジェクトが活気をもたらしてくれたと言います。


市川信行さん:
「小諸が何とか生き残っていかなくちゃいけないなっていう部分、私たちも持ってました。だけど、どうしたらいいかなって、なかなか見つからない部分として救世主ですよ。高野君も、もともと小諸の人間じゃないんですよ。外からくる人間の方が新鮮な提案もできるし、それがいい意味で活性化につながっている」

「おしゃれ田舎プロジェクト」は、地域活性化に貢献する優良な事例として国から表彰を受けました。

高野さんは、中心市街地ににぎわいを生み出してきた勢いを市内全体に波及させるために不動産業を始めます。


高野さん:
「そこに人がいて、その人が下を向いて悲しい表情をしているんじゃなくて、笑顔でみんなと遊んでいるっていうのが、個人的にはすごくいい街だと思うし、そういうのが見たいので、それをずっと支えられるような立場で事業を展開できればいいと思います」

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