いま教育の現場を担う「先生」たちが揺れています。

先月、教員の働き方改革などを議論している文部科学省の諮問機関は、残業代の代わりに支払われている「調整額」を、現在の月給4%から10%以上に引き上げることなどを盛り込んだ「提言案」を示しました。

これに対し、現場から上がったのは…抗議の声でした。

北海道教職員組合 山谷一夫 中央執行委員長
「今の問題は教職員のなり手不足とか、あるいは欠員補充であります」

新潟県教職員組合 今井淳 執行委員長
「お金を払うから“もっと頑張りなさい”という捉えでは、学校現場は成り立っていないという状況をお伝えしたい」

一部では“定額働かせ放題”と揶揄されることもある労働環境に、現役の先生たちは…。

20代(教員歴6年)
「どんどん、どんどん疲弊してしまっていって、何も考える気力がなくなってしまう…」

50代(教員歴36年)
「こういう働き方が、何にも変わらないんだったら、先生を目指す若者って増えていくのかな?と思うと、私は絶対増えないなって」

先生の働き方を改善するには、何が求められているのか。もうひとホリします。

北海道北広島市にある星槎道都大学。将来、「先生」を目指している学生たちは、教育現場の現状について、どう感じているのでしょうか。

教員志望の学生

 「中学校のとある先生は“教師にだけはなるな”と言っていたのが、自分的にもやっぱり大変な仕事なんだなと思った」

 「モンスターペアレントについては私もよく聞いていて(自分が)病んだらどうしようとか、結構考えることはあるけれど、自分の中でしっかり芯を持って、強い意志で教員になれたらいいなと思う」

しかし、教員採用試験の志願者数は、減少しています。

来年度、北海道内の志願者数は3582人と、前の年より483人減って、ここ10年で最低となっています。

教壇に立つ先生たちには、どんな悩みがあるのでしょうか?北海道内の小学校で働く20代から50代の先生3人に“本音”を語ってもらいました。

20代(教員歴6年)
「なんか、家に帰っても、うまく休み切れていないっていう実感がしていて、家に帰って寝て起きるけれど、リセットされていないまま、また学校に行って…」

50代(教員歴36年)
「寝ていても、夢に見るでしょ?学校のこと」

20代(教員歴6年)
「はい、あります」

激務を続ける先生たちは、どんな1日を過ごしているのでしょうか。

まずは50代のベテラン先生。朝4時半に起きて出勤。就業後、午後3時半まで休みなく働き続けています。

50代(教員歴36年)
「15時30分になったら休憩が45分間あって、その後、終わりに勤務時間が15分くっついているって、いわゆる昼休憩じゃないんだけれど、間に休憩がちゃんと挟まっているっていう、形式的にはそうなっている」

 「ほぼ休憩している人はいないから、業務がずっと続いているっていう感じになっているけれど、いわゆる自発的勤務だよね…勤務時間外にやっているから。“自分がやりたいからやっているんでしょ”って…仕事をね」

テストの採点や打ち合わせなど、ほとんど休憩を取らずに働き、午後6時に学校を出ます。家に帰ってからも“明日の準備”が…。

50代(教員歴36年)
「学校で終わらなかった仕事を、夕食を食べた後に、また少しやるっていう感じ。明日だけではなくって、これからやる授業の準備、教材作り、プリント作り、そういうものも含めてですけれど」

40代の中堅の先生は、スポーツ少年団の指導も行っていて、ベテランの先生同様、午後8時ごろまで、ほぼ休むことなく勤務。

家族との時間をとるために、次の日の準備などは、出勤前の早朝に行うようにしています。そして「給食」の時間も…。

40代(教員歴20年)
「自分が食べるのは、本当にものの何分かでパッと食べて、子どもたちの食べている様子を見たり、残ったものを“おかわりする人??”と聞いたり、もう あっという間に給食時間は終わる」

50代(教員歴36年)
「よく保護者や一般の方は“先生方の休憩時間ってお昼なんでしょ?給食を食べているとき、休憩なんでしょ?”と思っているんだけれど、違うんだよね」

そして…20代の若手先生は、ほかの2人も驚くような過ごし方をしていました。

50代(教員歴36年)
「えっ?深夜1時に寝るのー?ホント!?」

20代(教員歴6年)
「ホントです」

少しでも自分の時間を確保するため、睡眠時間を削っていると言います。

20代(教員歴6年)
「どうしても自由な時間が欲しいので、自分の趣味である読書をして、大体眠たくなってきたら寝て、4時頃ぐらいに起きて…」

50代(教員歴36年)
「もう、あり得ないよね」

40代(教員歴20年)
「3時間しか寝ていないですよ…。」

20代(教員歴6年)
「でも…なんか体が慣れているのか、もうその時間には、ちゃんと起きられるので」

50代(教員歴36年)
「いや、だって疲れなんか全然取れないよ、3時間でしょ?明日の授業準備で、夢見るんでしょ?」

20代(教員歴6年)
「そうですね」

若手先生は現在、1年生の担任をしているため、ほかの学年に比べて授業数は少ないはずですが…。

 20代(教員歴6年)
「放課後に準備する時間は、長いと思うんですけれど、その分(小学1年生は)、助けが必要な子どたちが多いので、助けるためには、どうしていかなきゃいけないのかなっていう打ち合わせをしたり、教材を準備したり…やっていくと、気づいたら午後6時になっていることが多いです…自分の生活ヤバイなと思って」

50代(教員歴36年)
「ヤバいよ…、ヤバい、尋常じゃない」

40代(教員歴20年)
「これはヤバいですね…」

それでも先生を続ける理由。根底にあるのは、「よりよい授業」のためです。

 20代(教員歴6年)
「若い先生は、授業に対する引き出しというものが少ない分、いろいろ準備しなきゃいけないんですけれど、ほかの業務が沢山あって、なかなかそこまで、たどり着けないっていうのが現状あります」

 50代(教員歴36年)
「(私にとって)一番いい褒め言葉は“先生、きょうの授業はあっという間に終わったね”って言われるのが、ものすごく嬉しい言葉ですよね。そうするための授業を準備する時間は…本当に足りない。だから、自信を持って明日の授業時間に臨みきれない」

 40代(教員歴20年)
「授業の質が良くなければ、いわゆる子どもたちにとっての豊かな学びには繋がっていかないのかなと。そういった一番かけたい時間に、しっかり時間をかけられる勤務体制になってくれたらなと思っています」


授業の質を向上させたいと取り組んでいるのに、先生たちには、準備ために時間を割く余裕がないというのが実状のようです。

こうした状況を見る限り、先生たちの“労働環境の改善”は待ったなし…というところにあるようです。

今回、取材に応じてくれた小学校に勤務する3人の先生は、いずれも教育現場に立つ仕事にやりがいを感じていると話しています。

とにかく授業内容を充実させるために、時間が欲しい…とのことでした。

では、激務をこなす教師の待遇面はどうなっているのでしょうか…給料の手取り額は次の通りです。

 ・教員歴6年の【20代】の先生は、手取りが約20万円。

・教員歴20年の【40代】の先生は、手取りで約30万円。
   
このほかにボーナスの支給があります。
  
教育現場の待遇改善という点にプラスして、子どもを預けている親としても、小さいことであっても先生に協力できることはないのか…という視点は持っていたいと思います。より良い教育現場、学びの場にしてためにも、一人でも多くの協力が必要なのではないでしょうか。

そうした状況から、どうすれば抜け出すことができるのか。いま一度、学びの場について、社会の誰もが、先生たちに寄り添う気持ちが必要かもしれません。

※(2024年6月7日(金)「今日ドキッ!」放送)

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