鹿児島市で先日、市電を舞台にしたホラーイベントが開かれました。
鹿児島をエンターテインメントで元気にしたいと意気込むグループと、交通局がコラボした、日本初の試みを取材しました。
鹿児島市内を走る市電。一見、いつもと変わらない風景ですが…
突如、車内はパニック状態に。血まみれの男が暴れ、叫び声が響き渡ります。
実はこちら、市電を貸し切って行われた日本初のホラーイベント。
次々に襲い掛かる恐怖の中、参加者たちは乗客にふんした演者とコミュニケーションをとりながら謎を解き、車内からの脱出を目指す、没入体験型のサスペンスホラーです。
イベントは、鹿児島市交通局の「市電コミュニティースペース提供事業」の一環で、貸し切り運行などの企画を募集し、採用者には無料で車両などを提供する取り組みです。
鹿児島市電は、運転手付きで50分1万3400円から誰でも貸し切ることができますが、利用されるのは月10回程度。交通局は、イベントを通して貸し切りサービスの認知度をあげ市電の活用に繋げたい考えです。
(鹿児島市交通局・総合企画課 東大二朗主査)「交通事業として経営が厳しい部分もある。単なる交通手段としてではなく、様々な手法や用途で活用していただければと思い企画を募集した」
イベントを実施したのは、鹿屋市を拠点に活動する「お化け屋敷プロジェクトSHHH」。
高校生や社会人など9人が所属し、週に3、4回、学校や仕事終わりに集まり、放課後児童クラブを借りて練習をしています。本番4日前。稽古にも熱が入ります。
代表の岩崎翔子さん(34)です。大阪の劇団で脚本・演出などを担当していましたが、2018年、結婚を機に鹿屋市に移住。地域にエンタメ文化の拠点となる場所を作りたいと4年前にサークルを立ち上げました。
(お化け屋敷プロジェクトSHHH 岩崎翔子さん)
「エンタメは大切。芸術やアートは近いほうが感性が育つ。大隅半島はエンタメが足りない。お化け屋敷は複合芸術。見て感性を育てて、楽しいことを自分たちでもできることを知ってほしい」
メンバーは、全員が演技初心者です。
(乗客役・鹿屋農業高校2年 山野井心春さん)「ボランティア募集をみて、おもしろいことしていると思って応募した。ここに来て練習するのは、自分にとって楽しさの一部」
(血まみれ男役・水道設備業 福島蒼一朗さん)「演技を全くしたことがないので、出来るかなと不安だったが、ゾンビ映画をみて動きを取り入れてみたりした」
大切にしているのは、地域の特性をいかした舞台作り。鹿屋市内の教員住宅跡地などを活用してお化け屋敷を開いてきました。
(お化け屋敷プロジェクトSHHH 岩崎翔子さん)
「地元で近くを通っているのに、そのときだけめちゃめちゃ怖いみたいな。みんながそこに来て恐怖を楽しんで、最後に助かって良かったと一体感が出来たら良かったと思える」
鹿屋市外でのイベント開催は、今回が初めて。しかも市電車内という未知の舞台に、メンバーもドキドキです。
本番当日は市内外から10人が参加。私も、乗車しました。
鹿児島駅出発し、郡元方面へ向かう市電。参加者は和気あいあいとした雰囲気です。ところが…。
(血まみれ男乗車)「服が血だらけ」「血!?やばいよー」
不穏な空気が漂います。すると…。
車内は、あっという間にパニックに。参加者は一丸となり車内広告など市電ならではのアイテムからヒントを得ながら、脱出するための謎解きに挑戦します。
乗車から1時間半後…。ようやく車内から脱出することができました。
(参加者)
「何が起こるか分からないドキドキで、最初から最後まで時間があっという間」
「普通に走っている市電だから、乗ったことあったけれど違う雰囲気だった。また市電に乗った時に思い出しそう」
悲鳴は、いつしか笑い声に。見慣れた場所が特別な景色に変わる1日になりました。
(福島蒼一郎さん)「練習以上に暴れたので、びっくりしてくれてうれしかった。鹿屋のエンタメにはこういうものもあると知ってもらいたい」
(お化け屋敷プロジェクトSHHH 岩崎翔子さん)
「日常で使われているものが非日常に感じられる体験を、お客様が感じ取ってくれることがうれしい。そういう風にエンターテインメントは出来ていく。やってきたかいがあった」
エンタメにちょっぴり怖さを添えて。大隅から鹿児島を盛り上げます。
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