ちょうど2か月前、群馬県高崎市の踏切で小学4年生の女の子が電車にはねられ、死亡しました。警報機も遮断機もない踏切の事故は、なぜ繰り返されるのでしょうか?

群馬県高崎市の小学4年生・渋沢姫星愛さん(9)。2か月前の4月6日、自宅近くの踏切で電車にはねられ、亡くなりました。

渋沢訓さん
「私たち家族にしたら太陽的な存在ですね。気持ちが落ちていたとしても、常に(家族を)笑わせようとしている子でしたね」

父親の訓さん(44)。事故当日のことを今も克明に覚えています。

渋沢訓さん
「『姫星愛、散歩に行ってくる』って言って(家を)出て行ったんですよね。ちょっとしたらドスンって音がして、(親戚の)おばさんが大きな声を出しているので、『これはただごとじゃないな』と思って」

踏切まではおよそ20メートル。走って向かうと…

渋沢訓さん
「多分、踏切から飛ばされて、線路に横になっていたんですけど。本当に助かってくれっていう思いが一番でしたし、夢であってほしかった。現実じゃなく。『時計の針が戻せるのであれば』って感じでした」

姫星愛さんがはねられた踏切は、遮断機と警報機がない「第4種踏切」と呼ばれる踏切です。鉄道会社は、姫星愛さんが電車にぶつかる前に「警笛を鳴らした」と説明していますが、自宅にいた訓さんは「事故が起こる前には警笛を聞かなかった」といいます。

現場近くに住む人も…

近くに住む人
「ドーンといった衝撃で(電車が)警笛をパーンと鳴らして、多分そのあたりで止まった。運転士の方が言っていたのは、200メートル手前ぐらいから警笛を鳴らして非常停止をかけたけど間に合わなかったという話を警察としていたのを聞いたが、それはだいぶ違うなと思った」

警察と国の運輸安全委員会が事故当時の状況を調べていますが、訓さんは「真実が知りたい」と話します。

「第4種踏切」では事故が繰り返されてきました。埼玉県行田市では2013年、小学5年生の男の子がはねられ、死亡する事故が。佐賀県小城市でも2018年、乗用車が列車と衝突し、運転していた20代の女性が亡くなりました。

「第4種踏切」は2007年には全国に3528か所ありましたが、現在は2408か所と、年々減りつつあります。しかし、2022年度の1年間には16件の事故があり、6人が亡くなっています。

相次ぐ事故を受けて、国土交通省は「第4種踏切」の廃止や遮断機のある踏切に切り替えるよう鉄道会社に求めていますが、改修には1か所で1500万円以上かかるとされ、費用面の課題があります。

取材を進めると、切り替えが進まない理由は、さらに…

茨城県を走る「関東鉄道」。管内にある195か所の踏切のうち37か所が「第4種踏切」です。

関東鉄道 施設課 稲葉幸雄課長
「第4種踏切がある限りは(高崎でのような)事故は絶対にないとは言えない。そういう危機感を持って全廃の計画を立てている」

「第4種踏切」をなくすため、自治体などと協議を進めていますが…

関東鉄道 施設課 稲葉幸雄課長
「地域住民の方々から『踏切がなくなると遠回りをしないといけない』とか。今まで何もなかった静かなところに『警報のカンカンという音がすごく耳障り』とか。地域の皆様になかなかご納得いただけない」

そこで、この鉄道会社が試験的に導入したのが…

関東鉄道 施設課 稲葉幸雄課長
「こちらが簡易遮断機を設置した踏切です。元々は第4種踏切で、何もないところに簡易的な遮断機を設置して」

踏切に手で押し引きをするバーを設置し、安全性を高める対策を施したのです。

関東鉄道 施設課 稲葉幸雄課長
「運転手からのヒヤリハットやブレーキをかけたなどの報告が年間5、6回はあったが、(簡易遮断機を設置して)5か月間で1回だけ」

費用は大幅に抑えられますが、全廃に向けた一時的な対処です。

専門家は「鉄道会社への資金援助などが必要」としたうえで…

工学院大学 高木亮教授
「沿線に住んでいる方と鉄道事業者、自治体、国、その合意形成に問題がある。地元の方々が自分事として交渉に参加する。鉄道の危険性を過小評価しがちだと思うので、認識を共有しておくことが重要」

群馬県高崎市の事故を受けて、隣の富岡市では先月…

記者
「今、こちらの第4種踏切では、出入り口を封鎖する工事が行われています」

群馬県は県内74か所にある「第4種踏切」を2029年度末までに廃止するか、「第1種踏切」に改良する方針を明らかにしています。

ようやく動き出した対策に、娘の姫星愛さんを亡くした訓さんは…

渋沢訓さん
「娘が亡くなって、世の中的に第4種(踏切)は危険っていう周知はできたと思うんです。そのきっかけはできたんです。第4種踏切がなくなることをまず第一に、二度と悲しいことが起きないように全国に広めて進めていってほしいです」

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