梅雨入りが今年は平年より遅れています。平年は、九州南部が5月30日ごろ、九州北部が6月4日ごろ、四国が6月5日ごろ、中国・近畿・東海が6月6日ごろ、関東甲信は6月7日ごろと、九州から関東にかけてはもう梅雨入りしてもおかしくない時期です。来週の日曜日から月曜日にかけては広い範囲で雨が降り、雨脚の強まる所もあるでしょう。来週中頃はいったん晴れ間が戻るものの、今週と比べて雲が広がりやすくなりそうです。多くの地方で梅雨入りは来週以降になる見通しで、雨の季節は少しずつ近づいてきています。最近は毎年、日本のどこかで、これまであまり被害にあっていなかった地域でも大雨による災害が起きています。災害を自分事として、大雨シーズンに入る前に備えを進めましょう。(気象予報士・薬剤師 林保捺美)

災害への備えは天気が穏やかなうちに 家の周りや身の回りの確認を

 まずは家の周り。側溝や雨どいを確認しましょう。落ち葉やごみがたまっていませんか?側溝に落ち葉などがたまっていると雨水がうまく流れず、あふれ出してしまうおそれがあります。晴れているうちに掃除をして、水はけをよくしておきましょう。

 また、家から近い避難場所を家族や親しい人との間で確認しておきましょう。川が増水した場合でも避難場所まで安全に避難できるか、避難経路も確認しておいてください。非常時の連絡方法や連絡先も決めておくことが大切です。

 次に身の回りのこと。非常用の食料品や飲料水などの防災用品です。避難時に必要な最低限の量として備えておくことが推奨されているのは3日分です。非常用持ち出し袋にまとめて用意しておきましょう。家族に乳幼児がいる方は、粉ミルクや液体ミルク、紙おむつ、おしりふき、ウェットティッシュ、保険証と医療証のコピーなどを備えておくとよさそうです。災害時にはお湯が使えない場合も多いため、常温のまま使用できる液体ミルクが活躍しそうです。また、哺乳瓶の消毒ができないときには、紙コップで少しずつ飲ませる方法もあります。停電への備えも忘れずに。懐中電灯や予備の電池、モバイルバッテリー、携帯ラジオなども役に立ちます。

災害時に困らない薬の備え 「お薬手帳」の活用を

 そして、薬剤師として押さえておきたいのは、災害時に困らない薬の備えです。

 大きな災害が起こると救急救命が最優先され、慢性疾患などの通常の診療は受けられなくなる可能性があります。病院などの医療機関から処方された薬やドラックストアで購入した市販薬を普段から服用している方も多いと思いますが、災害時は病院や薬局の薬の備蓄がなくなり、しばらく薬を渡せない状況になるおそれもあります。平常時のように薬を手に入れるのが難しくなるため、非常用品に薬も備えておくことが大切です。

 病院から処方される薬「処方薬」は少なくとも3日分、できれば7日を目安に薬が手元に残るようにしましょう。緊急時に持ち出しやすくしておくことも重要です。薬には使用期限があるため、先にもらった薬から服用し、常に新しい薬を非常用に入れ替えるようにしてください。ただし、保存場所(常温、冷所など)に注意が必要な薬もあるので、非常用持ち出し袋に入れっぱなしにするのは避けてください。

 いつも服用している薬と合わせて、避難の際に持って出られるようにしておきたいのは「お薬手帳」です。

 お薬手帳はいつ、どこで、どのような薬が処方されたかを記録しておく手帳です。薬の重複や悪い飲み合わせを避けることができます。災害時に自身が服用している薬の名前や種類がわからなくなったり、避難生活が長引いて手持ちの薬がなくなったりした場合、お薬手帳を確認することでスムーズに薬を処方してもらうことができます。災害時に備えて、現在服用している薬、過去に服用していた薬、または副作用歴やアレルギー歴が書かれたお薬手帳を持っておくことは重要です。今までの継続的な記録があることで、服用している薬が把握でき、薬の用量の増減・薬の変更から治療の経過を推測することもできます。

 最近、お薬手帳アプリを利用する方も増えています。お薬手帳アプリは、薬局で出力されたお薬手帳情報のQRコードを読み込むことで、処方された薬の名前や用法・用量などをアプリ内に記録していくものです。紙の手帳がなくてもスマートフォンがあれば服用している薬の情報などがいつでも確認でき、災害時でも活用できそうです。ただ、災害時に電池や電波の確保ができず、アクセスができなくなってしまうおそれがある点、注意が必要です。

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