鹿児島県警本部の前の生活安全部長だった元警視正が警察情報を漏えいした疑いで逮捕・送検された事件です。元警視正は5日、裁判所で開かれた勾留理由開示請求の手続きで意見陳述し、「野川明輝本部長が犯罪行為を隠蔽した」と述べ、守秘義務違反ではないと主張し、釈放を求めました。

この事件は、鹿児島県警の前の生活安全部長だった元警視正・本田尚志容疑者(60)が退職した直後の今年3月下旬、警察時代に入手した警察情報を第三者に郵送し、業務上知りえた秘密を漏らした国家公務員法違反の疑いで逮捕・送検されたものです。

本田容疑者は「逮捕・送検され、勾留されているのは不当」とし釈放するよう求めていて、鹿児島簡易裁判所で5日、勾留理由開示請求の手続きがありました。

意見陳述で本田容疑者は「警察情報をある記者に送ったことは間違いありません」と認めたうえで、「不祥事を明らかにし、警察によい組織になってもらいたかった」と述べました。

本田容疑者によると、当時、枕崎警察署の巡査部長が女子トイレで盗撮した事案について、生活安全部長として野川本部長に指揮伺いをしたところ、本部長は隠蔽しようとしたということです。そして、退職後も不祥事が公表されることがなかったことから、北海道の記者にほかの不祥事をまとめた文書を送ったということです。

本田容疑者の弁護側は、5日の勾留理由開示請求で裁判所に対し、「本田容疑者の行為は、警察官による犯罪行為の隠蔽を明らかにしようとした内部告発であって、守秘義務違反にはあたらない」と主張し、釈放するよう求めました。

【前生活安全部長法廷での意見陳述内容(抜粋)】

今回、職務上知り得た情報が書かれた書面を、とある記者の方にお送りしたことは間違いありません。

私がこのような行動をしたのは、鹿児島県警職員が行った犯罪行為を野川明輝本部長が隠蔽しようとしたことがあり、そのことが、いち警察官としてどうしても許せなかったからです。

野川本部長は独断ですべてを決められる方で、我々の考えを本部長に提案しても本部長の一存で否定されることが多く、多くの職員が疲弊し、考えても無駄だという雰囲気が広がっていきました。

そんな中、令和5年12月中旬、枕崎のトイレでの盗撮事件が発生しました。この事件の容疑者は枕崎署の捜査車両を使っており、枕崎署の署員が容疑者であると聞きました。

我々としては、当然、早期に捜査に着手し、事案の解明をしようと思いました。しかし、野川本部長は「最後のチャンスをやろう」「泳がせよう」と言って、本部長指揮の印鑑を押しませんでした。

この時期は警察の不祥事が相次いでいた時期だったため、本部長としては新たな不祥事が出ることを恐れたのだと思います。

私は、本部長が警察による不祥事を隠蔽しようとする姿にがく然とし、また失望しました。私は、いち警察官として、目の前に犯罪があり、容疑者も分かっているのに、その事実を黙殺しようとする姿勢が理解できず、心底腹が立ちました。

県民の皆様の安全より、自己保身を図る組織に絶望しました。

そんな中、現職警察官による別の不祥事が起こりました。しかし、この事件も明らかにされることはありませんでした。

私は、不都合な真実を隠蔽しようとする県警の姿勢に、更に失望しました。

私は退職後、この不祥事をまとめた文書を、とある記者に送ることにしました。マスコミが記事にしてくれることで、明るみに出なかった不祥事を明らかにしてもらえると思っていました。

私が退職した後もこの組織に残る後輩がいます。今回、私が行った行為により多くの方々にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ないと思っています。

ですが、私としては警察官として信じる道を突き通したかったのです。決して自分の利益のために行ったことではありません。

鹿児島県警においては、間違っていることは間違っていると認め、県民の皆様に再び信頼してもらえる組織に生まれ変わってくれることを心より願っております。

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