能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県内の自治体は、道路や水道などインフラの維持管理に欠かせない技術系の公務員の確保に苦労している。全国の自治体の応援職員がカバーしているが、数年先に応援が打ち切られる恐れもあり、復興や災害に強いインフラ整備に向けて課題を残す。(森本尚平)

地震発生から5カ月、被害の爪痕が残る石川県珠洲市宝立町=6月1日(ドローンから)

 「2倍以上の職員の応援を得て、やっと復旧が進められている状況だ」。珠洲(すず)市の担当者は声を落とす。土木や建築、上下水道を担う職員は19人。53人の応援職員の手を借りながら、道路や橋、上下水道の復旧作業などを急ぐ。  これまで技術系公務員を募集しても、集まらない状況が続いた。理系の大学を卒業した学生は、給料の高いメーカーや都市部で就職する傾向が強く、過疎化が進む能登半島でのなり手は少ない。珠洲市は一般職の職員を土木や建築系の部署に配置し、役所内で育成しているという。  地震の被害が大きかった輪島市や穴水町、能登町でも状況は変わらない。能登町は土木系技師はわずか2人で、コンサルティング会社などへの委託も進めている。「例年1、2人ほど技師を募集しているが、なかなか手を挙げる人がいない」と町の担当者は嘆く。  穴水町の吉村光輝町長は3月、石川県の災害対策本部員会議で、全国から派遣される技術系職員を束ねる、県の中堅クラスの技術系職員の派遣を要望した。町も技術系採用の職員は6人のみ。町地域整備課の橋本樹慶(きよし)課長補佐は「多くの応援職員に来てもらい大変助かっている。ただ応援が打ち切られた後の復興のことを考えると、人を増やしていくしかないが、それも難しい」と頭を悩ませる。

他の自治体から派遣され、業務にあたる技術系の職員(手前の2人)ら

 自治体は数年先の復興を見据え、技術系職員の採用を進めたい考えだが、待遇面での優遇を図る財政的な余裕がなく、人員増の特効薬はない。珠洲市総務課の石尾泰宏課長補佐は「国や県に職員の派遣を今後もお願いしていくが、何とか復興に熱意を持った人に手を挙げてほしい」と話した。  被災自治体に職員を派遣する県も、60歳以上も含めた3年間の任期付き職員を募集。土木や建築、農業などの技術系で70人の採用を目指し、人手不足に苦しむ能登の自治体を支援する。  ◇

◆応援職員の派遣期間は1~2年程度

  石川県内には本年度に入り、全国の自治体から251人(5月27日時点)の応援職員が派遣され、勤務している。うち7割が技術系職員。派遣期間は1〜2年程度と想定されている。  地震発生直後から3月末までに延べ8万人が短期で派遣された。4月以降は能登半島のインフラ復旧や復興を後押しするため、派遣期間の長期化を図った。  技術系職員のニーズは高く、石川県の担当者は「インフラ関係の復旧、復興にはそれなりの期間もかかる。道路や河川、水道の本格復旧を中長期で進めるためにも、より多くの人材が求められる」と話した。 

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