政治資金規正法の改正案をめぐり、昨日与党の党首会談が行われ、自民党が示した修正案は来週にも衆議院を通過するとみられています。そのような中、岸田総理自身のパーティーについて、新たな疑惑が明らかになりました。裏金問題は解決となるのか検証します。

“パーティー券購入”を隠す理由

パーティー券購入者の“公開基準額”の裏に、どんなからくりがあるのか。長年、パーティー券を購入してきたという会社の経営者が実態を語った。

パーティー券を購入した不動産会社の社長 
「1人の先生方(議員)と私どもは付き合うわけではないので、あの先生にはいくら、我々が応援させていただいて、この先生にはいくらだというのも、企業としてもあまり明かしたくないところ」

1枚2万円のパーティー券を、公開されない上限の20万円で購入し、それを超える場合は、収支報告書に載らないよう、会社の中で購入者を振り分けてきたという。

パーティー券を購入する最大のメリットとは──。

パーティー券を購入した不動産会社の社長 
「昔だと交通違反のチケットを“少し柔らかくして”いただくとか、地場の先生がお付き合いしている企業を、先生ルートでご紹介いただいたことはあった。助成金が、我々の会社でクレジットライン(融資の限度額)が足りないときに、バックアップしていただいたりして、スムーズに資金が出たこともあります」

――政府系の助成金?
「政府系の。コロナの時期には随分ありましたから。賄賂というのはちょっとストレートな話ですけど、同じ様なにおいがするところもあるんじゃないですか」

購入者の公開基準額を引き下げることについては、「意味がない」と断言する。

パーティー券を購入した不動産会社の社長 
「実際(公開基準額を)下げられても、名前を社内で変えて出したりすれば、結局同じことになるので、我々にはあまり変わらないですし、多分、政治家の先生たちもそういうことを考えられているのでは。私どもはこれを何年もやってますから」

一方、議員側にも、誰がパーティー券を購入したのか伏せたい事情があるという。

地方都市で事業を営む、外国籍の男性。30年にわたり、自民党の複数の国会議員からパーティー券を購入してきたと話す。

――パーティー券を購入するときに領収書は?
自民党からパーティー券を購入 外国籍の男性
「一切、残しません。向こうが領収書を発行してくれても(自分の)会社の名前を使ったり、個人名を使ったりしますけど、もちろん通称名(=日本の名前)ですし、本名を名乗ることは100%ありませんので。外国人ですから。“外国人がパーティー券を買った、外国人じゃないか、何だ”となるのは(議員らは)嫌ってるんじゃないか。だから出さないんでしょう」

政治資金規正法は、“外国勢力からの影響を防ぐため”として、外国人や外国法人からの寄付を禁じている。だが、パーティー券購入に関しては制約がない。

自民党からパーティー券を購入 外国籍の男性
「政治資金規正法でいう外国人はダメだけど、パーティーだったらいいじゃないかという。はっきり申し上げて矛盾してますよね。日本の内政によって、我々の立場は常に変わりますから。分かりやすく言えば、都合よく我々の社会的立場を理解されて、都合よく使っているということです」

――本当に困ったときは、頼ろうかという思いはあるわけですね?
「ありますよ。僕たちはやっぱり自営業が多いですし、サービス業が多いので、風営法改正で色々あった時でも正攻法に先生にお願いしたり、要請したりとか。どっかで繋がってるみたいな、変な安心感。セキュリティの費用みたいなもんですね」

任意団体「祝う会」が主催 岸田総理の新疑惑

政治資金パーティーについては、主催が政治団体でなければ収支の公開の必要がないことも問題になっている。

立憲民主党 野田佳彦 元総理
「主催が任意団体だから収支報告書には記載をしていないということでしたけれど、明らかに脱法パーティーじゃないですか」

国会で野党から追及されてきた、岸田総理自身のパーティーを巡る疑惑。私たちは、2022年に開催された「内閣総理大臣就任を祝う会」の問題を報じたが、さらに11年前に開催された別のパーティーについても、新たな疑惑が明らかになった。

2013年6月、広島市のホテルで開かれた「外務大臣就任を祝う会」。会費は1万円で、約1200人が出席。政治家や経済団体トップらが一堂に介したが、主催は「外務大臣就任を祝う会」という名の任意団体としていた。

「祝う会」の実態は岸田事務所ではないのか、元自民党市議に話を聞くと…

元自民党 広島市議会議員 伊藤昭善氏
「外務大臣就任パーティーをやっている。欠席って書いてある。全部政治資金パーティーでしょ、言い方を変えているだけじゃん。だからそういうことを平気でね、一般国民が理解できんことを平気でそういう理屈を言うから、そういう飾りつけなんですよ。岸田さんを祝う会を、岸田事務所が知らんいうことは絶対ありえない」

政治家は政治資金パーティーを開催した場合、政治団体などの収支は政治資金収支報告書に記載しなければならない。だが「祝う会」は任意団体としていて、収入が1000万円未満なら報告する義務はない。

当時の岸田氏の収支報告書には、「祝う会」から382万円の寄付と記載されているだけで、実際のパーティーの収支は明らかにされていない。

実は、2022年に開催された「内閣総理大臣就任を祝う会」でも同じ手法は使われていた。会費は同じ1万円。収支報告書には「祝う会」からの寄付額321万円が記載されていた。

さらに、任意団体である「祝う会」の代表と、岸田総理の後援会長が同一人物である。2024年3月、話を聞くと…

――「祝う会」の実態は何?
「祝う会」代表 岸田総理の後援会長
「実態はないよ。ない、言ってみれば。変な話、全部岸田事務所でやったと言えばやったよね」

――岸田総理の事務所にお金が全部行っていた、口座から
「そうですよね、それは祝い金としてね、祝儀として」

後援会長は、「総理大臣就任を祝う会」の取り仕切りは岸田事務所が行っていたことを認めた。後日、国会で野党からこの証言について問われた岸田総理は…

岸田総理(2024年3月)
「私の事務所として手伝いをさせていただきましたが、主催したのはあくまでもこの政財界の任意団体であると説明させていただいています」

11年前の「外務大臣就任を祝う会」でも、岸田事務所が取り仕切りを行ったのか?私たちは、元自民党の古参議員から重要な証言を得ることができた。

「全部事務所で仕切っている」元自民党市議の証言

元自民党 古参市議
「今まで岸田さんの(会は)欠席したことはない。(会費は)1万円」

――結構豪華なものだったんですか
「いやいや、それはもう粗末なことですよ。低い額ですよ。それは金を集めるのが目的だから」

――(岸田)事務所の方に振り込むのですか
「岸田事務所から振り込み用紙が来るからね」

しかし、送られてきた「祝う会」の案内状を見て、不審に思ったという。通常、政治資金パーティーの案内状には「政治資金規正法に基づく政治パーティー」と告知して会費を徴収しなければならないが…

元自民党 古参市議
「書いてないから、どうしてそういうことをするのか電話して聞いたことがあるんですよ。そうしたら政治資金でやらんのじゃと。一般の祝賀会にして、それで余ったら政治資金で後援会で(寄付を)やってもらうんじゃって」

――それは誰が言った?
「あそこの秘書、岸田さんの。岸田さんの事務所にかけたら秘書が出てきて、『そういうことでええんやの』と聞いたら、ええらしいですって」

――政治資金ではないということですか?
「政治資金でしょう。政治活動で銭もらうんじゃから」

元議員によると、秘書は、パーティー券で得た収入を寄付金として受け取ると話していたという。

元自民党 古参市議
「(祝う会の)実態なんていうのは、やるための方便であって、事務所が取り仕切っとるんですよ全部」

「祝う会」は、政治資金パーティーではないのか。岸田事務所に尋ねると…

岸田事務所
「外務大臣就任を祝う会の主催者が岸田文雄後援会であるとのご指摘は事実に反します。同会の詳細を弊事務所は把握しておりません」

11年前、寄付について話した岸田事務所の秘書については…

岸田事務所
「(当時の秘書は)すでに他界しており、同人に確認することもできません」

「総理大臣就任を祝う会」について、岸田総理や後援会長を刑事告発した、神戸学院大学の上脇教授は…

神戸学院大学 上脇博之 教授
「こういう高額な政治資金パーティーについては、もう実質的に政治団体と変わらないので、収支報告書を明らかにしてどれだけの収入があったのか、どれだけの経費をかけたのかということを国民に見てもらう必要がある。もしこれを作成していないのであれば、これも政治資金規正法違反ということになります。

過去にうまいこと成功して、これが報道機関にも取り上げられなかったので、うまいこといったなと、次またやりましょうと。ところがたまたま、この件が大きく取り上げられてしまったということで、たまたまばれただけの話で、どうもその以前からやっていたとなると、これはもう計画的にやってるとしか思えないですよね。

抜け道が簡単に見つけられるのに、これで何か改革をしたと言われても、この期に及んでこのような、棒にも箸にもかからないことは明らか。もう末期的症状だと思う」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。