解体する建物の廃材や、使わなくなった家財道具。
そんな、誰かにとっては「いらないもの」に光を当て、必要な人につなげようと取り組む会社が、諏訪市にあります。
持ち主の「思い」もつなぐ、独自の「資源の循環」の形とは。


リビルディングセンタージャパン 東野唯史(あづの・ただふみ)代表:
「必要な人がいるはずなのに、ゴミとして捨てられちゃうというのはすごくもったいないなと思ったので、循環するための拠点が必要だなと思って始めました」

誰かが手放すものを「レスキュー」し、新たな持ち主へ。

古いものから、新しい価値をデザインする。

そんな取り組みで全国的にも注目されるのが、諏訪市の「リビルディングセンタージャパン」、通称「リビセン」です。

リビセ ン百瀬貴成(ももせ・たかなり)さん:
「ここがメインの、(お客様に)最初に見ていただく古道具の売り場になります」

食器や道具が、所狭しと並ぶ店内。


諏訪市の中心部にある、リビセンの店舗です。

食器類をはじめ、古い時計や大工道具、タンスなどの大きな家具や、扉といった建具までその数、1万点以上。

リビセン 百瀬貴成さん:
「これとかワラ叩きだと思うんですけど、こうやって藁を叩く道具。でも僕らはこれトイレットペーパーのホルダーとかにして使ったりとか、なんかお客さんが見てわくわく楽しんでもらえるといいなと思って」

共通するのは、「誰かが一度手放したもの」。


それを、持ち主の思いも含めて引き取ることを、リビセンでは「レスキュー」と呼んでいます。

リビセン 百瀬貴成さん:
「ここに、古道具一つ一つにシールが貼ってありまして、これがレスキューナンバーっていうシールなんですけど、この価格の上に付いているのがレスキューナンバーで、この商品だと2644。2644番目のレスキュー先から引き取ってきた商品ですよと。このナンバーを調べると、どういうお家から引き取りしてきたか、どういうストーリーがあって、ご依頼いただいたかというのも全てわかるようになっているので」



2016年から諏訪市で活動を始めた、リビセン。

代表の東野唯史さんは、空間デザイナーとして全国各地を回る中で、まだ使えるものを救う仕組みの必要性を、感じてきたといいます。

リビセン 東野唯史代表:
「地域資源のリユースカンパニーというふうに言ってるんですけど、ただ古物商として古いものを引き取ってきて、リサイクルショップのように販売するっていうよりは、誰かの気持ちを繋ぐことで、そのものが次の人により大事にされるきっかけになるっていうふうなところが、やっぱ大事なんじゃないのかなと思ってるんで」

この日、リビセンのスタッフが訪れたのは、建て替えのため翌日から解体工事に入る予定の、市内の公民館です。

スタッフ:
「“床板レスキュー”する場所は、1か所は舞台の上のフローリング」

今日は何を?
リビセン 百瀬貴成さん:
「畳の下ってこういうふうに床板が張られているんですけど、この畳下の床板と、そっちにあるようなフローリングも無垢の木ですごくいい木なので、お引き取りしたいなということで」

リビセンでは、空き家など解体される建物に使われる古材(こざい)も、直接現場に赴きレスキューしています。

こうした廃材は、本来なら「廃棄物」として家主が業者に処分費用を支払うものですが、リビセンのレスキューは真逆。


レスキュー作業は無料で、商品にできるものがあれば、依頼主に買い取り金を渡します。

さらに、依頼主から聞き取ったエピソードや思いなどは、商品の情報としてデータベースに加えられます。

依頼者 小泉悦夫さん:
「小宮のお祭りやるときにはここに百何十人集まって、このステージで演劇をやって、ここで“なおらい”をやった思い出の場所。染みついた歴史が、また次の時代に引き継がれて呼吸をするってすごいことだと思います」

築100年弱という建物からは、床板のほか、壁に張られた腰板(こしいた)、縁側のガラス戸や鏡などが次々とレスキューされました。

こうした古材のレスキューは、月に1件ほど。


引き取ったものはリビセンの作業場に運ばれ、くぎを外して表面を磨くなどのメンテナンスを施したあと、店頭に並べられます。

リビセン 東野唯史代表:
「これも床板ですね。この穴が開いているところは全部くぎで留まっていたので、これを1個1個抜いて」
「リノベーションとかで使いたいという人が買っていってくれたりとか、僕らも設計とか家具の製作とかで使ったりもする」



レスキューしたものは、そのまま売るだけでなく、こんなアイデアも。

リビセン 百瀬貴成さん:
「これとかは手掛けの跡もついているんですけど、建具をばらして組み替えてフレームにしたもので」


ほかにも床板から作ったせっけん置きや、端材を使った一輪挿し。

こちらのスツールは、なんと神社からレスキューした「御柱」からできています!

古いものを生かして新たな価値を生む活動は、街にも広がっています。

市内にはいま、リビセンのサポートで、空き家や空き店舗をリノベーションした店が増えてきています。

こちらの書店も、その1つ。

洋服店だった建物を改装し、2023年1月にオープンしました。

言事堂(ことことどう)宮城未来(みやぎ・みき)さん:
「古いもの(古本)を扱っているお店なので、それにしっくり合うような本棚だとか店内の装いというのは、古材が一番合うのかなと思って、やってもらうならぜひリビセンにというのは決めてて」

壁の本棚は、リビセンがレスキューしてきたタンスの引き出しなどを再利用。

店主の宮城さん自身もリノベーション作業を行い、店を完成させました。


言事堂 宮城未来さん:
「今まで住んでいた方も、新しく来てお店を始めるという人たちにも、(リビセンが)両方にとってすごくいい環境を生み出しているなと」

地域の隠れた資源に光を当てる、リビセンの取り組み。

環境にも、街にもいい循環が、生まれています。

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