脳に障がいがあった男性が死亡前日に自宅を売却しました。遺族は“契約は無効”と不動産会社を提訴、5月30日に判決の日を迎えました。

 判決を前に、弟の遺影の前で思いを語った柳南秀さん(57)。

 (柳南秀さん)「無念で亡くなった弟のためにしている裁判でもありますので、もしあの世から応援できるのであれば応援してほしいです」

 弟の発秀さん(当時51)が亡くなったのは2022年6月。病死でした。ただ、南秀さんが不審に思ったのが発秀さんが亡くなる前に倒れていた場所。自宅ではなく、見ず知らずの集合住宅だったのです。

 集合住宅を管理する不動産業者を調べると、新たに不可解な点が見つかります。その不動産会社と発秀さんが自宅を売却する契約を結んでいたのです。しかも契約日は死亡する前日でした。実印は押されていましたが、直筆の署名はなく入金もありませんでした。

 自宅を売却した経緯について不動産会社は…

 (不動産会社)「発秀さんに2200万円を貸していた。売却代金はその返済にあてた」

 たしかに実印が押された借用書はありましたが、ここでも不審を深めます。

 (柳南秀さん)「弟の実印とかが行方不明で。クレジットカードも。すっからかんになっている通帳が手元に残っているだけ」

 実印が押されている以上、契約書・借用書としての効力はあるといいますが、南秀さんが納得できないのはそこではありません。発秀さんは7年前の交通事故で脳に重い障がいを負い、認知機能が低下していたというのです。

 (柳南秀さん)「高次脳機能障害は重要な局面での判断能力は全くないんですよ。あの状態でまともに契約できないと思います」

 遺族は「弟は契約内容をそもそも認知できなかったはずで契約は無効」として不動産会社を提訴。一方、裁判で不動産業者の代表は、発秀さんの判断能力について問われると…

 (不動産会社の代表)「身だしなみも普段着で変わった様子はなかった。特に違和感などは何も感じなかった」

 そして、迎えた5月30日の判決。
 
 大阪地裁は「契約書などには署名はなく、実印などが見つからないことから契約書は死亡後に作成された疑いが強い」などと指摘しました。その上で、「理解力が低下していた発秀さんの状態を考えると、意思に基づかない契約だったと認められる」などとして、遺族らの訴えを認めて、業者側に2150万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。

 (柳南秀さん)「完全勝訴という形で非常に今回の判決に関しては納得しております。もしこれ負ければ本当に弟の無念を晴らすどころか報われない。余計あの世で見ていたら惨めな思いをしているんじゃないかなと。本当にありがたいです」

 南秀さんら遺族は、今後、刑事告発などを検討しています。

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